流通戦略の新発想 (PHP新書)伊藤 元重PHP研究所このアイテムの詳細を見る |
著書は、2001年に書かれたもので、現状の経済状況と幾分違う時代に書かれた
ものである。しかしバブル経済崩壊後の商社を中抜きにし、コストダウンへ
反映させてる小売業の創意と工夫について述べられている。
森ビル、イートーヨーカ堂、イオン、吉野家、丸井、伊勢丹、赤福、ヤオコー
菱食それぞれ方法で、付加価値の形成と効率の改善に努めており、その取り組みが
各企業のTOPへのインタビューで述べられていて、適度に面白く読めた。
内容として森ビルが商業施設をコンセプトとして、単に不動産ディベロッパー
として終わっていないところは、意外性があり面白い。商業施設化し、その周辺
の都市環境まで考慮してビル開発してることは予想していなかった。
ヨーカ堂、イオンは店舗の不動産を自社で保有することなく借地借上げで展開して
たことに今日のダイエー、マイカルとの差が生じたという。その後のシェアでは
顧客満足度を向上させるために店舗を仮説検証の場としてるヨーカ堂と、商業
施設の展開を中心に集客をしているイオンとで同じ業態ではあるが、特徴の違い
が興味深いところであった。
しまむらは、よく知られてるが、徹底した物流コストの削減と情報システムを中心
とした在庫、販売管理で成長し、ヤオコーについては、地域性を生かした商品
展開で、日々売上分析のデータをもとに仕入等留意してるようだ。店舗としても
歩いて、自転車で来店できる範囲を商圏としてコンペティターとの競合とならない
状況を作り出してるとのこと。
自分としても驚きだったのが、丸井で90年代初めくらいのDCブランド旋風が過去った
今、泣かず飛ばずかと思っていたが、意外に自社ブランドの商品を若者向けに
販促し伸ばしてるとのこと。もともと絶大なる会員数を誇った赤いカードが
キーになり、この顧客情報を商品企画へのベースとしているようだが、やはり
女性には絶大なのだろうか。赤いカードの一人当たりの平均分割料も20万弱
と回収においても一般のクレジット会社と比較しても良好とのことである。
以前は赤いカードに追いかけられる借金生活の人も多かったようであるが、
この辺もブランド旋風の失速とともに落ち着いてきてるのであろうか。
大手小売業の現状をしるという意味でも面白い本である。出版されてから
4,5年たってるので必ずしも現状がこの内容のとおりではないかと思うが・・・