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孤高のメス―外科医当麻鉄彦〈第4巻〉 (幻冬舎文庫) |
大鐘 稔彦 | |
幻冬舎 |
孤高のメス、第4巻は、人生の中で、必ずやってくる親との死別。
この悲しく、やりきれない大きな転換点で、当麻医師は、医師の仕事としても
日本で初めての生体巻肝移植に携わる。こ手術を牽引するのは、大学で志を同じ方角
に向ける実川医師。
実川医師の要請の元、主人公は、ドナーの肝切除を行いレシピアントを担当する
実川医師へ後を託し、亡くなる寸前の親元へ向かう。
医師としては、最後まで大手術に加わり、見届けた上で、親元へ
戻りたかったであろう。しかし、そうとはならず、最低限の責任を
果たし、亡くなる寸前の親元へ帰郷する。
最後の瞬間には、間に合わず、喪失感と無念さに、苛まれる場面。
馳せる気持ちに駆られるギリギリ感と葛藤し、冷静に大仕事を
を終えたにも関わらず、残念無念の状況に陥る。
自身に振り返ると、冷静さを保ち、命に関わる仕事が
できるとは、到底思えない。その時の慌てようは、想像
したくないと痛切する。
大手術後の様々な合併症に掛かってしまう幼い患者。
命を繋ぐため、背一杯の治療をする、実川医師。生体間移植を
行なった現場の医師は、この命が再び明るさを取り戻すよう
次々に発症する困難な症状に立ち向かう。
その現実と、並走して本邦初のこの手術に利権と自らの
地位を天秤に乗せ、騒ぎ立てる大学、肝移植委員会、マスコミ側
の揶揄するような人々の振る舞いは、社会の構図を浮き彫りにしている。
この巻は、出る杭は打たれる世の流れと本質的な対処を
断行する賢明な人間の攻防を描いた社会的な描写が
現実的にもありそうな距離感で、親近感が湧く作品です。