翌日の「朝祭」を見る為に、急遽「道の駅・立田ふれあいの里」で車泊をすることになった二人。 流石に真夏の車中泊はキツ過ぎて寝不足ですが、大好きな祭り見物の為なら文句も言えません。今回も朝一で指定の駐車場に車を留め、津島神社への参拝を済ませ、その足でまずは車河戸へ。
幻想の世界を見せてくれた津島五車は、夜のうちに提灯を外し、「市江車(いちえぐるま)」とともにきらびやかな幕などで飾られ朝を迎えます。すでに「車楽舟(だんじりぶね)」の準備は出来ているようで、川辺は昨夜とは打って変わった華やかさ。「車楽舟」の最上段には、一番から五番までそれぞれの演目の衣装をまとった「能人形」が飾られます。ただし一番は常に「高砂」と決められており、残り四つがくじ引きで決められます。
車楽舟は2艘の舟を横に並べて固定して一艘に仕立て、そこに屋形を乗せ、その中段に「児(ちご)」を乗せます。「児」は神様の憑代なので、地面に足をつけないよう、常に肩車をされて移動します。
足が地面につかないように・・・簡単に書いていますが実際はかなりの難行。付き添うのは正装のお母さまですが、晴れがましさの中にも我が子を気遣う姿に心を打たれます。
津島の車楽舟は先頭が市江車で「鉾持(ほこもち)」と呼ばれる下帯姿の男子10人が乗っています。
ゆらりゆらりと進む車楽舟。それはもう唯々美しく神秘に満ちて、水面に映る影にさえ神々の息吹が感じられるほど。
ゆらりゆらりと・・・二艘、三艘・・
およそ25分間かけて、市江の車楽船と津島の5艘の車楽船が、舳先を揃えて綺麗に並びました。 時間を聞くと短く思えますが、実際にはその優雅な動きに見とれて、もっと長く感じます。
朱塗りの赤舟に乗った津島神社の神官が、車楽船のお迎えに到着しました。いよいよ朝祭りの始まりです。
昨夜の巻藁船と同じように、車河戸から天王川にゆらりゆらりと漕ぎ出してゆく華麗な車楽船。 巻藁船が炎の中に浮かび上がる、文字通り夜の神迎えなら、この華美な車楽船は太陽の神迎え。全艘が揃ったところで、先頭の市江車に乗っていた10人の鉾持が、揃いの「布鉾」を持って登場。
そうして一人ずつ、「布鉾」を持ったまま天王川に飛び込み、古式泳法で御旅所まで泳ぎます。
見ている側の時間より、実際に片手を塞がれた状態で泳ぐ鉾持ちにはもっと長い距離・・・うまく言葉に出来ないし、こんな言い方は神事として相応しくないのでしょうが、若者たちの姿は本当に「かっこ良い!!」。時折おこる大きな拍手は、懸命に神事に挑む若者たちへの精一杯のねぎらいと感謝の験(しるし)。 ふと涙ぐみそうになるほど美しい光景なのです。
御旅所前まで泳ぎ渡った鉾持ちは、御神体に拝礼し鉾を持ったまま津島神社へと走ります。そうしてお神輿に還御頂くため、境内にある太鼓橋の注連縄を切るのです。もう何度でも言いますが、その姿はただただ美しい!
津島神社に奉納された布鉾は、拝殿前に立てかけられ、参拝者は自由に触れることができます。 布鉾から滴る水を体につけると悪い所が治るのだと、そこで出会った見知らぬ誰かが教えてくれました。
追記
【昭和55年に「尾張津島天王祭の車楽舟行事」が国の重要無形民俗文化財に、また昭和59年には「尾張津島天王祭の車楽」が県の有形民俗文化財にそれぞれ指定されており、2016年12月には33件の「山・鉾・屋台行事」のひとつとして、ユネスコ無形文化遺産に登録されています。】
訪問日:2014年7月27日