赤穂市御崎に鎮座される式内社、「伊和都比売(いわつひめ)神社」。御祭神は『伊和都比売大神』。元々は豊受比売であるとも、また播磨国一宮である「伊和坐大名持御魂神社(現在の伊和神社)」の神『大穴牟遅神』の比売神とも言われ、いにしえより「御崎明神」と称せられていました。
海に面した鳥居額の文字は『東郷平八朗』。日露戦争開戦を前に、勝利祈願のために東郷元帥が訪れた事から帝国海軍関係者の信仰を集め、戦前までは連合艦隊司令長官が艦隊を率いて、海上より参拝を行ったとも言われています。
「もとは大園と呼ぶ前方海上の八丁岩の上にお祀りしてあったのを天和三年浅野内匠顕長矩が現在の地に還座。「播磨なる御崎の石だたみ海の底まで行 くぞ見る」と歌われるように奇岩の上に老松が舞う岩礁の地である。 かつては日本海々戦の勇将東郷平八郎元帥を始め 歴代連合艦隊司令長官の崇敬厚く、しばゝ艦隊を 率いて帝国海軍の勇士が参拝し、現在でも船員漁師 など航海安全と大漁祈願はあとをたたず遠近からの信仰は盛んである。なお特に珍らしいのは古くから若き男女による姫神信仰が盛んで縁結び或は恋人を得るにご利益のある「姫守」をうける人が多く、御崎の景色と共に近時有名である。」案内板より
海を背にして石段を上がると境内が、更に石段を上がると拝殿が見えてきます。
拝殿前左右より神域を守護されるのは、思慮深そうな吽形さんと、賑やかな事が大好きといった感じの阿形さんの一対。どちらも短足ぽっちゃり体型で、私なんぞはとても親しみを覚えて😅 嬉しくなります。
拝殿の更に奥では、文化13年4月建立の狛犬さんが、若干険しいお顔で神域の守護を担っておられます。なにしろ市内では最も古い狛犬さん、守護される場所も本殿に近く、陽気に笑っていたりなぞ出来ないのでしょう😠
唐破風の拝殿屋根には、今まさに飛び立とうと羽を広げる「鳳凰」の姿。
向背の上段には、常緑の松を間に美しく羽を広げて互いを見守る夫婦鶴。下段には荒波を物ともせずに高く顔を持ち上げる龍が、繊細なタッチで彫刻されています。
絵馬は「伊和都比売神社」の拝殿が描かれたものです。最近は名のある大きな神社でも、既製品に朱印だけを押したものが多い中、こうした神社独自の絵馬を見ると好感度はアップ😊
境内に有る手水は、『浅野内匠頭』の刃傷事件があった年に氏子によって寄進されたものです。大きな事件に見舞われた領民たちは、その災禍を神への寄進によって拭い去ろうとしたのかも知れません。
参拝を終えて、小高い場所につくられた「一望の席」に腰をおろし、ゆったりとした気分で穏やかに凪ぐ海を見ていました。
神前に向って手を合わせ、勝利を祈願した連合艦隊が通過したのは、あの辺りだったのでしょうか? 真夏の日差しをあびてキラキラと輝く海は、遥か彼方で青い空と一つになりました。
参拝日:2010年8月9日