和倉、山中、片山津と並ぶ石川県下有数の温泉で、加賀温泉郷の一角を占める「山代(やましろ)温泉」。総湯を中心に広がる温泉街は、石川県では最も規模が大きく北陸三県でも最大級と言われます。
「江戸時代の温泉場は、共同浴場を中心として、まちがつくられていました。共同浴場の周りに温泉宿が立ち並び、湯治客は共同浴場に通ったり、ときには自然の中を散策しながら長逗留していました。この共同浴場が「総湯」です。そして、総湯を中心とした周囲の街並みを「湯の曲輪(ゆのがわ)」といい、北陸特有の呼び方となっています。」公式HPより
開湯は今から1300年前の神亀2年(725)。霊峰白山へ修行に向かう『行基』が、傷口を湧水で癒す三本足の鴉を見つけた事に始まります。古事記や日本書紀にも登場する伝説の「八咫鴉(やたがらす)」。鷺とか鹿は良く聞きますが、神武東征で道案内をした導きの神が教えた源泉・・何だろう?このいきなりの有難み(笑)
周囲の景観にも目一杯有難さが感じられて、温泉の効能もより効果的に思えるから、人間の心理って本当に面白い (^^)
総湯横の足湯には、開湯伝承ゆかりのヤタガラス像の下から源泉が流れており、飲泉も可。「万国衛生博覧会」で金賞を受賞した折紙つきのミネラルたっぷりの温泉水。物は試しで一口飲んでみましたが「良薬は・・」の例にもれず美味しくは無いです(笑)
傍らの源泉石柱には『与謝野鉄幹』が山代を訪れた際に詠んだ句。最後の「古九谷の青」がとても印象に残りました。
「 山代の 泉に遊ぶ たのしさを たとへて云えば 古九谷の青 」
総湯の近くに誕生した「古総湯」。明治時代の総湯を復元し温泉の歴史や文化が楽しめる「体験型温泉博物館」。外観はもちろん、内装の床や壁の九谷焼タイルも当時のまま・・これは心惹かれるけど時間を食いそうだし、今から温泉も早すぎるし・・(-"-)
古来より多くの文人墨客に愛された山代温泉。篆刻・ 陶芸・書道家で料理家・美食家としても知られた『北大路魯山人(きたおおじ ろさんじん)』の寓居跡もあります。当時『福田大観』と名乗っていた『魯山人』が大正4年の秋から約半年間生活した場所。現在は「いろは草案」として、彼が山代温泉に逗留した際の作品などが展示されています。
「湯の曲輪」の一画、私たちを出迎えてくれるのは山代温泉のゆるキャラ『すばクロくん』。もちろんモデルは三本足の「八咫鴉」さん。
すばクロ君の後方左手の弁柄格子の建物は「はづちを楽堂」。茶店のソフトクリームが有名だそうで、他にも観光客のお土産用として九谷焼などの名産品が販売されています。
綺麗に整備された一角は、特に当ての無いぶらぶら歩きには最適。充分に旅心を満足させてくれました。
休憩スペースに置かれていた観光地必須の顔出しは、山代温泉「菖蒲湯祭り」。一年の無病息災を祈願した菖蒲神輿が山代温泉を練り歩く時、温泉街は菖蒲の香りに包まれます。
訪問日:2011年10月11日
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一口メモ
『八咫烏』=八咫烏鴨武角身命(やたからすかもたけつのみのみこと)』、別名「賀茂建角身命(かもたけつのみのみこと)」。導きの神で「三本足の八咫鴉」の姿で知られる。神武東征の際、熊野国から大和国磯城(奈良県桜井市)まで道案内をした。
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