明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1172)没落しゆく原子力産業-稼動反対運動と原発災害対策の強化が問われている!下

2015年10月23日 00時30分00秒 | 明日に向けて(1101~1200)

守田です。(20151023 0:30)

前回の続きです。
既に述べたように今、行なわれている三菱重工製の原発の再稼働強行や、強引な輸出への動きは、ほとんど死滅しかかっている原子力産業を、なんとか生き延びさせようとさせるためのものです。
日本政府にとってこれ以上、原発の再稼働を引き延ばすわけにはいかない。なぜか。
実は日本の原発はこれまで平均でほぼ4年4カ月も停まっています。それなのに日本は電気が足りている。何ら困ってない。それどころかこの体制下で株価の大幅な上昇さえありました。
原発などまったくいらないのだということが内外にどんどん分かってきてしまいました!だからこそ強引にも「原発ゼロ状態」を「無くす」必要があったのでした。

二つ目に原発そのものがこれ以上、停めておくと動かなくなることです。平均で4年以上といいましたが、世界最大の出力を誇る柏崎刈羽原発等、すでに8年以上も停まっています。
おそよあらゆる機械の常識からいって、これほど動かしてなければもう機械としてダメなのです。だから今、動かし始めないと、すべての原発が技術的にも動かせなくなってしまう。
さらにこれではウランが売れないし、メーカーも点検料も入らないので、原子力産業全体が「もうどうしようもない」状態に陥りつつあります。
事実、ウラン濃縮会社の世界4大メーカーの一つ、アメリカのユーゼックが2014年3月に倒産してしまいました。ちなみに東芝はここにも投資していました。このままでは原子力村の斜陽がさらに続いていく。
これらから、再稼働と原発輸出を強行することでなんとか「どうしようもない」状態を打破し、延命の道を探ろうとしているのが原子力産業です。

ここに表れているのは私たち日本民衆の力の大幅な増大です。福島原発事故を契機に本当にたくさんの人が覚醒しました。覚醒してどんどんデモを始めた。スタンディングをはじめた。全国で毎週、毎週、集会が行われてきました。
それがもう4年も続いています。こんなことはこれまでのこの国の歴史になかったことです。
このため国会では野党を完全に蹴散らしてきた与党が、原発の再稼働をなかなかできなかったのです。昨年末の総選挙の時に与党が配ったパンフレットなど、原発の「げ」の字も書いてなかった。再稼働は避け続けられてきたのです。
しかし時間的余裕がないがゆえに、今日、再稼働が行われていますが、こうした政府の姿勢は攻勢とはまったく言えません。このままでは死滅するがゆえに再稼働に踏み切ったのでしかないのです。

だから私たちがこれまでの運動を継続し、政府と対決していけば、必ず矛盾が露呈し、この流れを止めることができます。何せ、二大メーカーである東芝と三菱重工がボロボロなのです。
むしろ私たちは東電だけでなく、東芝の粉飾決算問題=経済犯罪を追及し、三菱重工の原発の危険性を世界に広く訴える中で、さらに原子力村を追い詰めていきましょう。そのことはまったく可能です。

ただし楽観ばかりできない重大なことがあります。このままでは死滅するからとなりふりかまわぬ再稼働に政府と電力会社、メーカーが走り出したため、原発事故のリスクが大きく高まっていることです。
とくに川内原発は欠陥のある蒸気発生器を付けたまま再稼働しています。欠陥は1号機にも2号機にもあります。1号機は新型に交換しました。しかし新型はアメリカでは2年も持たなかった欠陥製品です。
これに対して2号機は交換予定を中止して古いままの蒸気発生器のままに動かしました。そもそも交換を予定していたのだから現行の蒸気発生器はポンコツなのです。しかし新型も危ないがゆえに交換できなかったのです。
だから新型の蒸気発生器を付けている1号機も、旧型のままの2号機もともに危ない。どちらがより危ないのかはおそらく三菱重工自身が分かっていないでしょう。

なりふりかまわぬ再稼働の強行だからこそ、事故リスクはいや増しています。
これに対しては、民衆の側から原子力災害対策を逞しく作り上げていく以外に対抗手段はありません。これにぜひとも各地で取り組んで欲しいのです。
そもそも原発は燃料プールに核燃料が入っている限り、動いてなくても危険ですから、それだけでも原子力災害対策は必要です。
同時に、原子力災害対策に真剣に取り組むと、原発の是非をいったん横において、原発がどれだけの危険性を抱えているのかをあらゆる場で討論することができます。討論の結果、放射線被曝から身を守る力を身に着けられます。

世界の原子力産業も同じことが言えます。完全な斜陽状態です。しかしそれでもまだ原子力村が生き延びようとしているので、世界中で悲惨な原子力災害が発生する可能性が高まっています。
その上にイラク・シリアをめぐる戦闘の激化で原発が戦火に巻き込まれる可能性すら拡大しています。だからこそ、世界のどこでも原子力災害対策を民衆の側から積み上げ、放射能からの身の守り方を身に着ける必要性があるのです。
このような状況にかんがみて、今回、新著『原発からの命の守り方』を書き上げたので、ぜひこれを各地で活用していただきたいです。それこそが戦争に反対することと並ぶ平和を守るための重要行動だと僕は思います。
幸いにして出版社である海象社さんが懸命に努力して下さり、出版が今回の講演会にぎりぎりで間に合うことになりましたので、24日尾道の会場で新著の初売りをします!広島会場でも売らせていただきます。

ちなみに尾道市では「福島原発の今」に即しつつ、現在広がっている健康被害について詳しくお話します。内部被曝のメカニズムについて、またこれに対してどう対抗すれば良いのかについてきちんとお話したいと思います。
同時にこれまで尾道であまりお話できてこなかった原子力災害対策についても触れ、時間の許す限りで、汚染水問題、帰還問題、そして戦争法などにも触れたいです。

広島市ではこうした中でのトルコの方たちの原発反対運動への取組についてもじっくりお話します。
僕は原発大国のトルコに原発を日本から輸出することが道義的に許せないので、日本人としての責任にかけてこの問題に関わってきました。
しかし最近思うことは、トルコの方の頑張りで輸出が停まったら、日本の原子力産業の息の根が止まり、その分早く、私たちが核の悪夢から解放されるということです。
まさに「情けは人のためならず」・・・。トルコの方たちに一生懸命に連帯することは、私たちの幸せにも直結することなのです。この点についてトルコの様子を交えて詳しくお話します。

尾道、広島方面の方、ぜひ会場にお越しください。
またぜひとも『原発からの命の守り方』をお買い求めください!

連載終わり

以下、集会案内を貼り付けておきます。

*****

10月24日尾道市

福島の今 守田敏也講演会

10月24日(土)午後2時~4時
図書館大会議室  室内に子どもスペース設けます。
 参加無料
 主催 フクシマから考える一歩の会

*****

10月25日広島市

■グローバリゼーション講座
 「日本が原発輸出するトルコ訪問報告」
 ~トルコ市民4万人の声を聞こう~

■講 師:守田敏也さん(フリー・ジャーナリスト)

■日時:2015年10月25日(日)14:00~16:30
■場所:ゆいぽーと(広島市男女共同参画推進センター)5階研修室4
 (広島市中区大手町5-6-9、電話:082‐248‐3320、鷹野橋電停から3分)
■参加費:500円(学生無料)
  
Globalization Watch Hiroshima
連絡先: 〒733-0815広島市西区己斐上4-17-15
TEL&Fax: 082-271-0854、090-6835-8391(渡田)
ホームページ:
http://globalwatch.o.oo7.jp/

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明日に向けて(1170)アメリカは病院爆撃への調査に同意すべきだ(署名への協力を)

2015年10月20日 17時00分00秒 | 明日に向けて(1101~1200)

守田です。(20151020 17:00)

アフガニスタンにおける国境なき医師団(MSF)の病院に対してのアメリカ軍の空襲問題の続報です。
今回、アメリカが行った攻撃はいわゆる「誤爆」ではなく意図的なものであった可能性が非常に強くあります。
医療施設や医療従事者への攻撃はジュネーブ諸条約で禁止されています。また国境なき医師団も、誤爆などを避けるために、米軍にもアフガン政府にも病院の位置情報を正確に通知してきました。
にもかかわらず今回の攻撃は極めて正確になされました。しかも攻撃開始直後に、国境なき医師団が米軍とアフガン政府に病院が襲撃されていることを伝えたにも関わらず、その後も数度にわたって正確な攻撃が続けられたのです。

すでに明らかなる戦争犯罪と言えますが、大事なのはそのことをアメリカに認めさせることです。
そのためには加害者であるアメリカやアフガン政府ではなく、独立した第三者機関による調査が必要ですが、今のところそれが可能なのはスイス・ベルンの国際事実調査委員会(IHFFC)です。
同組織はこれまで稼働実績がないのですが、しかし今回は米国とアフガニスタンが同意すれば調査を開始すると発表しています。
そのため国境なき医師団日本支部が以下のように、アメリカに調査への同意を求める署名運動を始めました。まずはぜひこれにご協力ください。同時に拡散をしてください。

「オバマ大統領が病院爆撃の調査へ同意するように、協力してください! 国境なき医師団」
https://www.change.org/p/%E3%82%AA%E3%83%90%E3%83%9E%E5%A4%A7%E7%B5%B1%E9%A0%98%E3%81%8C%E7%97%85%E9%99%A2%E7%88%86%E6%92%83%E3%81%AE%E8%AA%BF%E6%9F%BB%E3%81%B8%E5%90%8C%E6%84%8F%E3%81%99%E3%82%8B%E3%82%88%E3%81%86%E3%81%AB-%E5%8D%94%E5%8A%9B%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%8F%E3%81%A0%E3%81%95%E3%81%84-%E5%9B%BD%E5%A2%83%E3%81%AA%E3%81%8D%E5%8C%BB%E5%B8%AB%E5%9B%A3?recruiter=50897116&utm_source=share_petition&utm_medium=facebook&utm_campaign=autopublish&utm_term=des-md-share_petition-reason_msg&fb_ref=Default

現地のアメリカ軍はこの事態をもみ消そうともしています。
攻撃された病院に、15日に軍事車両で門を突破して侵入し、証拠隠滅を図ったのです。
この件に関する共同通信の記事をご紹介しておきます。ただし「誤爆病院に米軍侵入」というタイトルは誤りです。
どうして現時点で「誤爆」と報道してしまうのか。言葉には常にどの立場から語られているものなのかというバイアスが入り込んでいます。日本のマスコミはあまりにこの点に無自覚です。というより、政府やアメリカ軍サイドに立ちすぎです。

 アフガン、誤爆病院に米軍侵入 車両で門破る
 共同通信 2015年10月20日 11:01
 http://www.47news.jp/CN/201510/CN2015102001001291.html

さて今回は多くの方に、世界の戦場で起こっていることのリアリティ、またその中での国境なき医師団の姿を知っていただくために、知人である国の難民キャンプで働いていた方から届いたメールをご紹介します。
ぜひこのメールをお読み下さい。そして戦争のなんたるかをつかんで、多くの人に伝えて下さい。
なお特定を避けるため、国名などは伏字にさせていただきました。

*****

私が○○○の国境の難民キャンプで働いていた時、MSFの病院に、○○○側で地雷を踏み、明らかに軍服姿の軍人たちが怪我をした状態で5、6人運ばれてきました。
難民キャンプ内の病院なので、私は国連の統治する病院で兵士の治療をするのは国際条約違反で、ただちに民間施設に輸送すべきだと主張しました。
しかし私の上司とMSFは、人道的に負傷した人を何もしないで放置するわけにはいかないとして、その場で治療を受けさせました。

私は我々に危険が及ぶ行為だと思い、中立性を保つ立場から反対しましたが、人道的理由でMSFがそうした判断をすることは尊重します。それが本来の、人間としてあるべき姿だと思います。
結局難民キャンプの病院では応急手当しかできず、MSFの軍用機でもっと良い病院のある首都へと負傷のひどい人達を空輸したのですが、結局途中の乗り換え地点で兵士であるという理由で、そこから搬送を拒否されたと聞きました。

難民キャンプにはいつも兵士が平服で休息や家族に会いに来ているのは周知の事実。
難民キャンプには軍人を保護しないという条項があるにもかかわらず、我々には確証がないので、そうした人々がキャンプにいても怪しきは罰せずで取り締まれないのも確か。
武器狩りはしますし、実際に発砲が日常的にあるので、武器がキャンプに大量にあるのもわかっています。
ただその一部のごく例外の兵士が紛れ込んできたことを理由に、難民キャンプを空爆したり病院を空爆したりすることは完全な戦争犯罪です。

今回の空爆は明らかに、アメリカ政府や軍人のメンタリティーの本質をはっきりさせたということで、特筆すべき出来事だといえます。
軍人にとって、ほんの数人のタリバンが病院にいるというだけの情報で、大多数の市民や人道支援従事者の命は取るに足らないもので、そうした敵を殺すことの方が、市民の命より大切だと言う判断をするということです。
正にこれが戦争の本質だと思います。

戦っている人たちは、ひとたび”敵”に固執すると、その敵を殺すためであれば、自国の人道支援従事者(国民)であろうと、その命を守るよりも数人の潜伏している敵を殺す方が大切という、非常に本末転倒した決定すら下すのだということ。
これをはっきりと指摘してください!
これが戦争、そして今回の安保条約の本質です。
軍人や軍隊にとって、敵により大きな打撃を与えるためには、自国の国民複数人の命が犠牲になってもそれが作戦である、というような発想をする人たちことが軍人なのです。

今の日本人はあまりに平和を当たり前とし過ぎていて、戦争の現場をあまりにも理解していない。戦争の汚さに完全に目をつぶっている。
おぼちゃん育ちの苦労知らずの安倍首相に一体何が分かっているのか?
まず安保法に同意した人たちが、自衛隊の最前線に戦闘要員として参加するところまで責任を取ってもらいたい。

怒り心頭です。

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明日に向けて(1168)アメリカによる病院攻撃はジュネーブ条約違反の戦争犯罪だ!

2015年10月16日 16時00分00秒 | 明日に向けて(1101~1200)

守田です。(20151016 16:00)

アフガニスタンで10月3日におきた米軍による病院攻撃に関する続報です。

7日、国境なき医師団(MSF)インターナショナル会長のジョアンヌ・リュー医師が、スイス・ジュネーブの国連欧州本部で会見を行ない、MSF医療施設への爆撃に関して、国際事実調査委員会(IHFFC)による調査を呼びかけました。
ここで注目すべき点は、MSFがこの事件を「MSF医療施設への爆撃」と呼び、「誤爆」という言葉を使っていないことです。その点も含めて、第三者機関による調査を求めているのです。

MSFは次のように述べています。重要な点なので引用します。

 「今回の出来事はMSFの医療施設への攻撃というだけでなく、ジュネーブ諸条約への攻撃でもあります。これは看過できません。ジュネーブ諸条約は戦争のルールを定めるもので、紛争に際し、民間人を保護するために制定されました。
 傷病者と保健医療従事者、そして保健医療施設も保護の対象です。この諸条約によって、非人間的な状況に一定の人間性がもたらされるのです。」
 「本日、MSFはクンドゥーズの攻撃について、IHFFCによる調査を求めることをお知らせします。同委員会はジュネーブ諸条約の追加議定書で制定され、国際人道法侵害の専門調査を目的に結成された唯一の常設組織です。
 事実が突き止められ、紛争下の保健医療施設の保護が改めて明言されるよう、各調印国に、IHFFCの始動をお願い申し上げます。
 「IHFFCは1991年から存在しますが、実働実績はありません。76の調印国の1つが調査を提案しなければならないのですが、各国政府は今まで、遠慮や怖さからその実例をつくることはありませんでした。今こそ、この調査が活用されるべき時です。」
 「各国が「紳士協定」を隠れ蓑にし、それによって無法状態や責任逃れを生み出すことなどあってはなりません。
 医療施設が爆撃され、医療従事者および患者が命を奪われても付随的被害としか見なされず、単なる過失で片付けられることなどあってはならないのです。」

以下、国境なき医師団の声明の載ったウェブサイトのアドレスを紹介します。

 アフガニスタン:病院爆撃の原因調査に国際事実調査委の始動を呼びかけ
 国境なき医師団 日本語ウェブサイト 2015年10月07日掲載
 http://www.msf.or.jp/news/detail/pressrelease_2516.html

これに対して同じく7日にアメリカのオバマ大統領が病院攻撃を行ったことがアメリカ軍であることを認め、MSFへの謝罪を行いました。
朝日新聞が以下のように報じています。

 オバマ大統領、国境なき医師団に謝罪 アフガン病院誤爆
 朝日新聞 ワシントン=奥寺淳 2015年10月8日10時04分
 http://www.asahi.com/articles/ASHB82JPCHB8UHBI00D.html

朝日新聞のこの見出しのつけ方、報道の仕方には問題があります。今回の事件を「アフガン病院誤爆」と断定してしまっているからです。しかしさきほども述べたようにMSFは一度も「誤爆」という表現を使っていません。
オバマ大統領の謝罪に対してもMSFはこのように声明しています。再び引用します。

 「爆撃の当事国から謝罪と弔慰の表明がありましたが、それだけでは不十分です。外傷センターがそこにあったことは地域では広く知られていました。
 敷地内には患者と医療スタッフしかいなかったにもかかわらず、15分間隔の爆撃が1時間以上も続いた理由は、依然として明らかではありません。私たちは真相を知る必要があります」
 「戦争の"ルール"が変質してしまっているのではないでしょうか。クンドゥーズに限らず、世界各地の紛争地で活動しているスタッフの安全を守るためにも、この点を確認する必要があると考えています」

MSFは一貫して今回の攻撃が、対象が病院であることを知りつつ意図的に行ったものである可能性を捉えて、厳正なる調査を求めているのです。そして実際に「国際事実調査委員会(IHFFC)が始動したとの情報を得た」とも語っています。
IHFFCは現在、米国とアフガニスタンから調査への同意を待っているそうです。

 アフガニスタン:国際事実調査委員会が始動――MSF外傷センター爆撃の調査へ
 国境なき医師団 日本語ウェブサイト 2015年10月15日掲載
 http://www.msf.or.jp/news/detail/headline_2526.html

さらにMSFの駐アフガン代表、ギルヘム・モリニー氏が11日夜に首都カブールで朝日新聞のインタビューに応じ、スタッフ12名と患者10名が死亡。他にもがれきの下に遺体があるとした上で、以下のように語りました。記事から抜粋します。

 「空爆当時の状況をアフガン国防省は「タリバーンが患者らを『人間の盾』にして攻撃してきた」と発表。これに対し、モリニー氏は「負傷した戦闘員を治療することはあっても、武器は持ち込ませないというルールは厳格に守られていた。
  病院周辺は戦闘開始以来、初めての静かな夜で、医師らは戦闘が激しい間は見合わせていた3件の手術にとりかかった。そこがいきなり空爆され、動けない患者がベッドで犠牲になった」と反論した。
 さらに「2011年の病院開設以来、政府側と反政府側の双方から(病院に手を出さないという)同意を取り付け、反政府側の支配地域にも診療所を設けていた」と強調。
 「国際人道法が定める病院の不可侵性は空爆の時まで尊重されていた。守られないなら、世界中の紛争地での人道活動は不可能になる」と述べた。」

以上の引用を含む記事のアドレスは以下のとおりです。

 米軍誤爆の病院「手術中の患者が犠牲」 国境なき医師団
 朝日新聞 カブール=武石英史郎 2015年10月14日10時41分
 http://digital.asahi.com/articles/ASHBF02VWHBDUHBI01J.html?rm=403

ここでも注目すべき点があります。アフガン国防省が「タリバーンは患者らを『人間の盾』にして攻撃してきた」としている点です。
ようするにアフガン政府はこのタリバンに攻撃を行うために米軍に病院への爆撃を依頼したことを強く示唆しているのです。
そこには『人間の盾』にされた患者をタリバンと一緒に殺してもかまわないという恐ろしい発想が浮き出ています。
これに対してモーリ氏は「負傷した戦闘員を治療することはあっても、武器は持ち込ませないというルールは厳格に守られていた」と反論しているのです。

ここから見て取れるのは、アフガン政府はそこにタリバンがいる限り、医師や患者が巻き込まれようと攻撃するのは正当だと主張していることです。
米軍もこれと同じ価値観に立って、病院を攻撃したのです。
これに対してMSFは、戦闘で傷つき武器を手放したものは誰であろうと兵士ではなく患者として扱い、治療していたということであり、その際には武器は持ち込ませないというルールを厳格に守っていたということです。

私たちが見てとるべきことは、このアフガン政府と米軍の発想こそが軍人の正体なのだということです。
敵を倒すためならば、巻き込まれて犠牲が出ようがなんであろうが攻撃する。戦闘員と非戦闘員を分けず、戦闘員の周りにいる非戦闘員は巻き込んで殺してもいいと思っている。
だから病院であろうとも攻撃する。それが軍人と戦争の本質です。

ジュネーブ条約は、この戦争に「最低限これはしてはならない」というルールを持ち込んで、軍人と軍隊の暴力性を少しでも抑止しようとしたものです。
それが民間人を保護すべき義務であり、とくに傷病者と保健医療従事者、そして保健医療施設を保護すべき義務です。
ところが今回、アフガン政府と米軍はこれを破り、だからこそ病院に対する正確な攻撃を行った可能性が極めて高い。「誤爆」ではなく戦争犯罪なのです。
もちろん誤爆とて、あってはならない戦争犯罪です。誤爆の可能性がある限り、攻撃など止めるべきなのです。しかし今回は誤爆ではなく明確な病院攻撃です。この違いは重大です。

ではこれまでアメリカは、他に民間人と戦闘員を区別しなかったり、相手を倒すためならば平気で病院を蹂躙する攻撃を行ったことがあったでしょうか?
もちろんあります。その最たるものが広島・長崎への原爆投下です。東京・大阪・名古屋などをはじめとする全国の都市空襲です。そして沖縄上陸戦です。
このすべてでたくさんの民間人が殺されたばかりか病院が猛爆撃に合いました。患者も医療従事者も病院も、跡形もなく破壊されてしまった例もたくさんあります。そしてそれほどの非人道的無差別殺戮をしながらアメリカはまだ一度も謝罪していません。
アメリカに隷属し続けるこの国の政府も、一度もこの非人道的戦争犯罪を告発してきませんでした。

このことを踏まえて、私たちは国境なき医師団を支持し、紛争地での医療活動を守るためにも、今回の病院攻撃の戦争犯罪性を突き出し続けていこうではありませんか。
同時に、今こそ私たちは「戦争で紛争は解決できない。軍人は民間人を保護しない。非人道性に溢れた戦争は報復の連鎖しか作らない」ことを訴え、戦争による紛争の解決の国際的禁止を訴えていく必要があります。

今一度、「誰の子どもも殺させない」という原点にたちかえり、平和の道を力強く歩み続けましょう!

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明日に向けて(1167)川内原発再稼働反対現地行動に連帯を!危険性をきちんと捉えよう。

2015年10月13日 22時00分00秒 | 明日に向けて(1101~1200)

守田です。(20151013 22:00)

川内原発2号機の再稼働が15日にも強行されようとしています。
現地、鹿児島で懸命の反対行動が行われています。

一つは11日に開始されたハンガーストライキです。「再稼働不同意住民の会」の呼びかけで20人が参加。「ハンスト中、再稼働反対」と書いた白い法被姿で午後1時より座り込みを始めました。
以下に毎日新聞の記事を紹介しておきます。写真もあるのでぜひご覧下さい。「川内原発再稼働阻止キャラバン」のFacebookページもご紹介しておきます。

 川内原発2号機:再稼働反対の住民らハンガーストライキ
 毎日新聞 2015年10月11日 20時20分(最終更新 10月11日 21時06分)
 http://mainichi.jp/select/news/20151012k0000m040064000c.html
 
 川内原発再稼働阻止キャラバン
 https://www.facebook.com/sendaikyaraban

さらに12日には県内約90の団体が集う「ストップ再稼働!3・11鹿児島集会実行委員会」呼びかけの1800人の集会とデモが行われました。
以下にKTS鹿児島テレビの動画と朝日新聞の記事を紹介しておきます。これもぜひご覧下さい。

 【動画】川内原発2号機再稼働に反対する集会
 KTS鹿児島テレビ 2015年10月13日
 http://news.ktstv.net/e60289.html

 川内原発再稼働は「自殺行為」 鹿児島で1800人集会
 朝日新聞 中島健 2015年10月12日18時47分
 http://www.asahi.com/articles/ASHBD5416HBDTLTB001.html

現地の頑張りにぜひ応えましょう。
「ストップ再稼働! 3・11鹿児島集会実行委員会」の連絡先を記しておきます。激励のFAXなど送ってください!Facebookページではコメントもできます。
事務局 〒892-0873 鹿児島市下田町292-1 TEL099-248-5455 FAX 099-248-5457


朝日新聞の見出しにあるように、参加者は川内原発再稼働を「自殺行為」と呼んで反対しています。
まさにその通り。この再稼働は私たちを大変な危険性に晒しています。
とくに現地の人々が強調しているのは、2号機が2009年二交換を発表した「蒸気発生器」を交換しないままになされようとしていることです。
この点については「明日に向けて」の前号を参照して下さい。

 明日に向けて(1166)川内原発2号機の再稼働はあまりに危険!みんなで食い止めよう!
 http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/4b723d9972dd00d65f24baa1e200ebab

この点にとどまらず、「明日に向けて」では、繰り返し川内原発再稼働の危険性を指摘してきましたが、再度、ここで最も重要な「新規制基準」のあやまりをまとめておきたいと思います。
ぜひ学習会などに活用して深めて下さい。こうした内容を一つ一つ、市民の側が身につけていくことが大事です。これらは今後の再稼働が狙われている高浜原発や伊方原発にも通じる事柄です。
そのために「明日に向けて」(1132)の載せた(1060)~(1065)と(972)で連載した内容(2015年3月24日~4月6日と2014年11月15日)を再度掲載します。
2015年3月~4月の連載は、福島原発事故以降、事故の進展や規制庁による新規制基準の提出などに即して、純技術的側面からもっとも適格な解説を行ってきてくださった元格納容器設計者・後藤政志さんの発言に学んで行ったものです。

第一に指摘すべきは、そもそもの九州電力が行った再稼働対策に向けた許認可申請があまりに杜撰に行われたことです。
後藤さんは「プラントの配置関係を全部伏せて白抜きになっている。どこに何があるか分からない状態になっている。耐震強度を計算する時に耐震の解析モデルがあるが、それの高さ方向の値がすべて白抜きになっている」と怒りをもって指摘されました。
要するに川内原発再稼働に向けた許認可申請は、主要部分を公開せずに行われたのです。あまりに杜撰でした。

 明日に向けて(1060)あまりに杜撰な川内原発工事認可申請(後藤政志さん談)
 http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/0870cd08844d3d12e17ae6345ae8b79b

第二に再稼働の是非を審査する、規制庁の新規制基準に大問題があります。端的に新しい規制基準では「重大事故」が防げないことを前提にしているということです。
福島第一原発の教訓を踏まえて、「重大事故」を絶対に起こさないようにする・・・とは言ってないのです。
起こさないように努力するが、それでも「重大事故」は発生しうる前提に転換したのです。大事故がありうることが前提に再稼働を認めると開き直ったのです。こんなことは絶対に認めてはなりません。

 明日に向けて(1062)原発再稼働に向けた新規制基準は大事故を前提にしている!
 http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/3d3e4b0cb07ae7a68734a3b52c9c693f

第三に規制委は「福島第一原発事故の教訓」を参考に新基準を作ったと言っているのですが、そもそも福島原発事故はその全容がまだ解明されていません。
それどころか1号機から3号機は放射線値が高すぎて内部がほとんどみれず、溶け落ちた核燃料の状態やありかさえつかみ切れていないのです。
事故は継続中です。汚染水の発生から明らかなように格納容器のどこかが壊れているのは確実ですが、どこかが分かっていない。事故がどのように進展してどこが壊れたのかも分からないのです。それでなぜ対策ができるのでしょうか。

 明日に向けて(1063)福島の教訓に基づく重大事故対策などまだできるわけがない!
 http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/8718f402298f072498d32eb7f59478f8

第四に、規制委が新基準に盛り込んだ地震対策のあやまりです。ここにはそもそも地震の揺れの大きさは現代科学で十分に解析できるのかという問題が横たわっています。
この点で重要なのは8年近く止まっている柏崎・刈羽原発を襲った2007年中越沖地震の地震動です。この原発の設計基準地震動は450ガルでしたが、実際には1699ガルの地震動がここを襲ったのでした。4倍もの揺れでした。
ここで明らかになったのは現代科学ではまだ地震動の揺れを正確に捉えることができないことです。にもかかわらずこの重大問題に目を伏せたまま規制委は認可を与えています。

 明日に向けて(1064)原子力規制庁・新規制基準の断層と地震動想定のあやまり(後藤政志さん談)
 http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/a3f0e8c33a857d8a36a56280845eedc1

第五に、新規制基準における「重大事故」対策の内容が、事故を収めるどころかむしろ拡大しかねないより危険な内容をも含んでいることです。
とくに重要なのは、川内原発や高浜原発で採用されている加圧型原子炉の格納容器には、東電のような沸騰水型原発と違って窒素が充填されておらず、水素爆発が起きやすいので、イグナイタ―をつけて水素が溜まる前に燃やしてしまおうとしていることです。
しかし福島原発事故で明らかになったように「重大事故」ではそれまでの設計上の想定が突破されているのですから、こうした非常用の装置も期待通りに動くとは限りません。水素が一定たまってから着火がされてしまえばかえって自爆してしまいます。

 明日に向けて(1065)新規制基準の「重大事故」対策はあまりに非現実的でむしろ危険だ!
 http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/d4c8272d4c01e698efd2e68600b4b4af

 明日に向けて(1075)川内原発再稼働も禁止すべきだ!~加圧水型原発過酷事故対策の誤りを後藤政志さんに学ぶ~
 http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/9605e1dc395c1d33815861dad65ac36a

第六に、火山に関する噴火評価が火山学会の誠実な提言を踏みにじって行われたことです。川内原発は日本の中で破局的な噴火を起こしうる10の火山のうちの5つが集中する地帯にあり、どの火山の大噴火でも深刻な被害を受ける可能性があります。
これに対して九電は大噴火の兆候は数年前に分かるので、そのとき核燃料を炉心から降ろして安全な場に移すと述べており、原子力規制もこれを承認しています。運転中の核燃料を降ろせるようになるには数年がかかりますがその前に分かると言うのです。
しかし火山学会は繰り返し現代の技術では数日から数時間の範囲でしか予測ができないと語っています。いわんや数年の規模での予想などまったく不可能というのが学会の常識なのです。再稼働はこの火山学会の提言をまったく無視してなされています。

 明日に向けて(972)原子力規制委の噴火評価はデタラメ!火山学会の誠実な提言を受け入れるべきだ!
 http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/9f924552b380fc1efc744322658a6fad

以上、新規制基準はなんら原発の稼働の安全性を保障していません。
それどころか、申請が杜撰、「重大事故」に開き直り、解明されていない福島原発の教訓に学べるはずがない、地震の揺れが正確に予想できないことを無視、「重大事故」対策がかえって危険、火山の大噴火の予知ができないことを無視と矛盾だらけです。
私たちはこの間の復水器トラブルは、こうしたもともとの再稼働の本質的誤りの上にさらに危険性を示すものとして表れていることをきちんととらえておく必要があります。これらの点を広げ、稼働を許さない民主的パワーのアップを図っていきましょう。

 

 

 

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明日に向けて(1166)川内原発2号機の再稼働はあまりに危険!みんなで食い止めよう!

2015年10月08日 23時30分00秒 | 明日に向けて(1101~1200)

守田です。(20151008 23:30)

8月に川内原発1号機の再稼働が愚かにも強行されましたが、続いて2号機が10月14日以降に再稼働されようとしています。
2号機は2011年9月1日に定期検査に入って以降、稼働していなかったので4年1ヵ月ぶりの再稼働になります。1号機と同じく長く停まっていたのでそれだけでも大変危険です。
これに対して「ストップ再稼働!3.11鹿児島集会実行委員会」が10月12日に鹿児島での全国集会を呼びかけています。11日から原発正門前でのハンスト決行も予定されています。
集会とハンストの案内を末尾に貼り付けます。僕は残念ながら駆けつけることができませんが、お近くの方、ぜひご参加下さい!

この集会への呼びかけの中で2号機再稼働の危険性に関する重要な点が指摘されています。蒸気発生器に関することです。
これまでも述べてきたように、川内原発が採用している加圧水型の原子炉は、蒸気発生器やそれにつながる冷却系に致命的な欠陥を持っています。
とくに度々事故を起こした来たのが、加圧されて150気圧300度になっている一次冷却水の熱を二次冷却水に伝える「蒸気発生器」です。
細いU字型の配管を通して一次冷却水から二次冷却水に熱を伝えるのですが、ここにピンホールができることが繰り返され、さらには完全破断してしまう大事故が美浜原発などで起こってきました。

この事故が最悪化すると加圧された一次冷却水が一気に抜けて、原子炉がメルトダウンしてしまうことになります。
このため加圧水型原発は、設計当初の想定にはない蒸気発生器の交換を繰り返してきています。
川内原発でも1号機の蒸気発生器の交換がすでに行われており、2号機でも交換を行うことが2009年に発表され、敷地内に交換用の蒸気発生器が運び込まれていました。
ところが2号機の蒸気発生器はなぜか交換されませんでした。そのままに今回の再稼働を迎えようとしているのです。

なぜか。考えられるのはアメリカの原発で起こった三菱重工製の蒸気発生器の事故の影響です。
これはロサンゼルス南東120キロにあるサンオノフレ原発で2012年1月に判明した放射能漏れ事故のことで、運転中の2号機と3号機の両方で三菱重工が納入した蒸気発生器の配管の一部が破損し、放射能が漏れているのが発見されたのです。
構造的欠陥が明らかになったこの原発はその後に廃炉になり、建設に関わった電力事業者の米サザン・カリフォルニア・エジソン社(SCE)など4社が三菱重工に75億7000万ドル(約9300億円)の損害賠償を求めて提訴に踏み切っています。
三菱側は167億円の損害賠償の支払いを主張しており、両者の見解は真っ向から対立して法廷闘争必至の状況ですが、敗訴した場合、三菱が背負う賠償額はあまりに巨大で、同社の経営を一気に悪化させる可能性すらあります。

この蒸気発生器の交換が行われたのは2010年、2011年でした。これに対して川内原発2号機の蒸気発生器の交換は2014年までに行うと予定されていました。
ところがサンオノフレ原発ではなんと1年ないし2年で蒸気発生器に深刻なトラブルが起きてしまい、その後に川内原発2号機で、蒸気発生器の交換が理由が明らかにされないままに見送られたのでした。
三菱重工は川内原発での交換に予定されていたものとサンオノフレ原発で交換された蒸気発生器は別の製品だと語っていますが、しかし時期からいっても三菱重工にとって同じ最新の技術が採用されていたことは間違いありません。
ようするに三菱重工は最新の技術をもってしても、蒸気発生器が構造的に抱える欠陥を克服できていないのです。だからこそ川内原発での交換がなされたなかった可能性が濃厚です。

そのため川内原発2号機は2009年に発表された蒸気発生器の交換を理由を明らかにしないままに再稼働を迎えようとしています。
これは川内原発2号機が巨大な危険性を宿していることを告げるものです。なにせ九州電力自身が蒸気発生器の交換の必要を考えて、2009年に交換予定を発表していたのです。
このまま旧来の蒸気発生器を使い続けることに不安を感じていたのです。ところがサンオノフレ原発での事故によって新たな蒸気発生器にも信頼が持てなくなった。だから交換ができないまま今回の再稼働に至ったに違いありません。

しかも再稼働は4年1ヵ月ぶりに行われるものです。これだけでも危険性が高いのに、さらに本来は交換が予定されていた古い蒸気発生器の予定されていた交換を経ないままに再稼働に向かっています。危険性が二重になっています。
この危機を克服できるのは私たち市民の草の根の行動だけです。このことを見据えつつ、現地での再稼働反対行動と連帯しながら全国各地から「無謀な再稼働を止めよ!2号機の再稼働を止め、1号機も停止せよ」という声をあげていきましょう!

*****

10.12全国集会 川内原発2号機再稼働を許さない!
ストップ再稼働!3.11鹿児島集会実行委員会 2015年9月25日
http://kagoshimashukai.chesuto.jp/

みなさま

昨日のストップ再稼働! 3.11鹿児島集会実行委員会で、集会の開催が正式に決定しました。
各所に、伝達拡散お願いいたします。

10.12全国集会
川内原発2号機再稼働を許さない!
 鹿児島中央駅東口広場

PM1:00~2:00大集会(鹿児島中央駅東口広場)
PM2:00~4:00パレード(東口広場から天文館、朝日通り)

■1号機、即時停止を求める
火山、地震、過酷事故対策、さらには避難計画、様々な角度から出される問いに対して何一つまともに答えられない規制当局、九州電力。これではいつ大事故が発生してもおかしくありません。
8月7日には1次冷却水ポンプの軸振動計が故障。21日には復水器のパイプが破れ、海水が漏れ出す事故が発生しています。即時停止し、稼働を見直すべきなのです。

■蒸気発生器、未交換の2号機
1号機の諸問題に加えて、2号機はさらに重大な問題を抱えています。それはアキレスけんといわれ、大事故に直結する蒸気発生器が未交換だというのです。
九電は2009年に交換を国に申請し、国は2010年に認めました。県も2011年に認めています。九電は、2014年中の取り換え計画を示していましたが、未交換のまま放置されていたのです。2号機再稼働は、まるで自殺行為です。

*****

10月15日起動に抗議し11日より正門前でハンスト決行

九州電力は川内原発1号機に続き、またもや2号機の再稼働を強行しようとしている。
私たちは、福島事故の教訓を活かすことなく再稼働に走る国や県、電力会社に対し再三にわたって申し入れ、抗議行動などを行ってきた。
しかし、そうした国民の声を返りみるどころか、肝心の九電に至っては、 再稼働に伴う安全確認、万一の際の避難計画など、周辺30キロ圏を主体とする住民の当然の説明要求さえ無視するという、およそあり得ない傲岸不遜な姿勢を崩そうとしない。

こうした問答無用の強硬姿勢は何処からくるのか。沖縄県民の民意を蹂躙する辺野古新基地建設強行、引いては国会に於ける戦争法の強行採決等と軌を一にするものだ。元凶は安倍政権である。
いまや、再稼働阻止が安倍政権打倒に直結していることが誰の眼にも明らかだ。原発も沖縄も憲法蹂躙の戦争法も反安倍で一つになろうとしている。安倍政権を倒すもっとも確実な手段は、選挙で安倍政権に連なる議員たちを議席から追い出すことである。

私たちは、九電が2号機起動を予定する10月15日に向け、10月11日より原発正門前でハンスト行う。今こそ立ち上がろう。原発反対の思いを行動に転化しよう。自分ができることは何かを考え実行しよう。 非暴力抵抗の手段としてのハンストはその一環に過

ぎない。ー選挙はその先にある。 さいごに。川内原発当局の安全運転を心より祈念しつつ。

2016年10月6日 九電川内原発正門前ハンスト行動 参加者一同

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明日に向けて(1164)「国境なき医師団」が米軍空襲を「戦争犯罪」と批判!第三者による調査を要請

2015年10月06日 22時00分00秒 | 明日に向けて(1101~1200)

守田です。(20151006 22:00)

米軍による「国境なき医師団(MSF)」空襲問題の続報です。
表題にも記したように、MSFが米軍空襲を戦争犯罪として批判し、第三者による調査を要請しています。
この件に関するMSFの声明を転載します。

*****

「MSFは、一部のアフガニスタン政府当局者が声明を発表してクンドゥーズ州内のMSF病院に対する爆撃を正当化したことに嫌悪感を覚えます。
これらの声明はアフガニスタン軍と米軍が共同で、完全に機能している病院を壊滅させる決定を下したことを示唆しています。
タリバンの構成員が現場にいたからというのが彼らの主張ですが、当時病院にいたのは180人以上のMSFスタッフと患者、付き添いの人びとであり、10月3日早朝の米国の爆撃以前に外傷センター敷地内で戦闘があったと証言しているMSFスタッフは1人もおりません。彼らの主張は戦争犯罪を認めたことに等しいものです。また、爆撃の正当化は当初米国政府がこの攻撃を『巻き添え被害』として矮小(わいしょう)化しようと試みたこととも全く矛盾しています。
MSF病院を標的にしたこの忌まわしい攻撃について正当な理由などあり得ません。MSFスタッフ12人と、子ども3人を含む患者10人が今回の爆撃で命を奪われているのですから。これは国際人道法の重大な侵害です。MSFは改めて、国際的な第三者機関による完全で透明性のある調査を求めます。紛争の当事者による内部調査だけでは、まったく不十分です」

クリストファー・ストークス
MSFベルギー事務局長

引用は「国境なき医師団」日本語ホームページより
http://www.msf.or.jp/news/detail/headline_2510.html

*****

これは非常に重要な点です。「誤爆」とは攻撃目標をそれたミサイルや爆弾が攻撃する意図のなかった建物などに着弾したとき、あるいは攻撃目標と誤って断定した違う建物に着弾したときなどに使われる言葉です。
それとても重大な犯罪であり人道上の罪であって、もっと「誤爆」という言い方そのものにも気を付ける必要があると思いますが、今回はその「誤爆」ですらない可能性が高くあります。アフガン政府と米軍が明確に病院を攻撃目標にしたということです。

MSFはこれまで繰り返し病院の位置を米軍・政府軍・タリバンに通知してきていました。しかも空襲開始後にただちに米・アフガン両政府に病院が襲われていることを通知しました。
にも関わらずその後も「15分間隔の爆撃が1時間、首相施設に極めて正確に着弾」したのです。MSFはこのことを重視し、当初より「誤爆」という言葉を使わずに「戦争犯罪」の可能性を強調し続けてきました。
これにさらに重要な情報が加わりました。アフガン内務省が「病院内にイスラム原理主義勢力タリバンが潜伏していた」と発言をし、攻撃が意図的であったことをほのめかしたのです。

この点について5日、アメリカ軍も驚くべき声明を発しました。
アフガン駐留米軍のキャンベル司令官による米国防総省での会見で「アフガン治安部隊が敵から攻撃を受け、米軍に対し空からの支援要請があった」「タリバンの脅威を取り除くために空爆しその際に誤って市民の犠牲者が出た」と述べたのです。
情報元は朝日新聞です。以下に記事を示しておきます。

 国境なき医師団病院誤爆 米「空爆、アフガンが要請」 医師団「責任転嫁」
 朝日新聞 2015年10月6日掲載
 http://apital.asahi.com/article/news/2015100600026.html

米軍の声明は、病院攻撃が「誤爆」ではなく意図的な攻撃だったことが明らかになりつつあることに対し、責任をアフガン政府に転嫁しようとしたものですが、そのことでさらに攻撃が意図的だったことが濃厚になりつつあります。
これに対してMSFはただちに「責任転嫁」を許さないと批判していますが、今、重要なのはMSFが主張するように、米軍とアフガニスタン政府をのぞいた第三者機関による調査を行うことです。そして責任者の処罰をきちんと行うことです。
もちろん加害者による被害調査など絶対に認めてはいけない。認められるはずもない。これがきちんとなされなければ、犠牲者があまりに浮かばれません。
またこうしたことを放置してうやむやにすれば、再び武力による報復が叫ばれ、実行される可能性があります。そのことで戦闘は拡大するばかりでしょう。さらなる争いを少しでも減らすためには、「公正な裁き」こそが必要なのです。

国境なき医師団はスタッフを大量に失い、かつ病院機能も完全に失ってしまったことで、アフガニスタン北部から撤退せざるをえなくなったそうです。
紛争地から医療が撤退してしまう。そのことで、確実に、今までなら助けることができたたくさんの命が失われてしまうのです。
MSFによれば、襲撃された「外傷センター」は、アフガニスタン北東部で唯一、さまざまな外傷治療に対応できる施設だったそうです。2011年開設後、高い水準の外傷治療(四肢の温存療法を含む)を無償で提供してきたのでした。
2014年だけでも、なんと2万2000人以上を治療し、5900件以上の手術を行ったそうです。米軍はそれを担った医師やスタッフを入院患者とともに殺害し、施設を蹂躙し、病院を廃止に追い込んだのです。本当に罪深いです。

日本政府も第三者機関による調査をせよときちんと声明すべきです。前回も述べたように、アメリカ軍を相手とした集団的自衛権の行使を世界に宣言したのだからです。もはや第三者の顔をしていることは許されません。
いや私たちも同じです。もはや第三者ではないのです。「こんなひどい戦争犯罪を行う米軍との自衛隊の共同行動を止めよ」という声を高める必要があります。
世界の平和を、人々の命を、みんなで守るために、アメリカの戦争犯罪と徹底して対決しましょう。それこそが真の「積極的平和主義」だと僕は思うのです!

 


 

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明日に向けて(1163)米軍が「国境なき医師団」を空襲。22名を殺害、重軽傷者多数

2015年10月05日 11時00分00秒 | 明日に向けて(1101~1200)

守田です。(20151005 11:00)

アメリカ軍と連合国軍がアフガニスタンで「国境なき医師団(MSF)」の外傷センターを空襲し、スタッフと入院患者ら多数を殺傷しました。10月3日のことです。
現時点でMSFスタッフ12名と患者10名の死亡が発表されています。今後さらに死傷者数が増える可能性があります。

MSFはこの爆撃に対して「重大な国際人道法違反である」と厳しく弾劾する声明を発しています。
にもかかわらず責任を負っているアメリカ政府と軍はいまだ謝罪すら行わず「弔意」を示しているのみです。(一部で謝罪が行われたという報道がありましたが、後に「弔意」に訂正されています)
アメリカ軍は今のところ自らの犯罪を認めずに「悲劇的事態」と言い換えています。

問題の地域では9月28日よりタリバンとアフガニスタン政府軍の激しい戦闘が起こっており、これにアメリカ軍が介入する形での空襲が行われました。
これに対してMSFはこの紛争の最中でわけ隔てのない医療行為を行い、わずか数日間の間に394人の負傷者を治療してきました。わずか2日間で90件の手術を行ったそうです。文字通り不眠不休で命を救っていたのです。
もちろんMSFはこれまで外傷センターの位置のGPSデータを米軍にもアフガン軍にも繰り返し伝え、自らの安全を守る最大限の努力も行ってきました。空襲された時もただちにアメリカに襲われているのが病院であることを告げましたが、米側は無視。さらに攻撃が断続的に行なわれたそうです。

これは大変な犯罪です。
すでにザイド・フセイン国連人権高等弁務官が「犯罪の可能性すらある」と同日に声明を出し、これに続いて国連事務総長からも強い非難声明が出されました。
国営ラジオ・フランス・アンフォも10月3日の午後の報道で「空爆は誤爆ではなく襲撃であり、戦争犯罪の可能性が指摘されだしている」と述べています。フランスの国営ラジオでの報道のニュースソースは以下の通りです。

 アフガニスタンの「国境のない医師団」空爆は 米軍の「誤爆」ではなく「襲撃」の「戦争犯罪」
 フランス報道の中で考える宗教と社会の解明 飛田正夫のブログ 2015年10月4日日曜日
 http://franettese.blogspot.fr/2015/10/blog-post_4.html

日本政府もまたこのアメリカ軍の非人道的な殺りく行為に対してただちに非難声明を出すべきです。
とくに政府がアメリカ軍を支援するための戦争法を強行可決したことで、この国が世界からこれまでより強くアメリカの同盟者と見られている最中ですからこの点は大変に重要です。
アフガンの人々、さらにイスラム圏の多くの人々が、今回の襲撃に対してさらにアメリカへの怒りを強めるでしょう。
あまりに非人道的な攻撃に対して、報復を決意する人々も出てくるでしょう。

これに対して日本はすでに第三者的な位置を失っています。安倍首相が最後的に投げ棄ててしまったからです。
だからここできちんと声明を発しないと、日本もまたこのアフガニスタンでの殺りくを擁護する同盟者とみなされ、当然にも報復の対象となります。
私たちから離れた遠いところで行われていることではまったくないのです。この国は今回の病院空襲という事態においても当事者の中に入ってしまっているのです。他人ごとだと考えていてはいけない。責任があるのです。

私たち民衆の側からも、日本政府に対して、こんなにひどい殺りくを行ったアメリカ軍と同盟する戦争法を撤回せよと大きな声で迫っていく必要があります。
まさに今、イスラムの多くの人々の痛み、嘆き、怒りをシェアして、すべての戦闘行為を止めさせるための行動を行う必要があります。
もう「誤爆」などという言葉に騙されていてはいけない。人道的罪なのです。こうした過ちを起こす可能性がある戦闘をすべて止めることこそアメリカが選択すべきことです。

以下、私たちにとってとても大事なことなので、「国境なき医師団」が4日発している声明を全文転載します。なお死亡者が19人の時点で発せられたものであることにご留意ください。

*****

 アフガニスタン:MSF外傷センターへの爆撃、「連合国軍は完全なる情報公開を!」
 国境なき医師団 2015年10月04日掲載
 http://www.msf.or.jp/news/detail/headline_2507.html

国境なき医師団(MSF)は、アフガニスタン新しいウィンドウで開きます のクンドゥーズ州で運営している外傷センターが爆撃されたことを厳しく非難する。
子ども3人を含む患者7人とスタッフ12人の命が奪われた。また、スタッフ19人を含む計37人が負傷した。この爆撃は極めて重大な国際人道法違反である。
現時点では、この爆撃は連合国軍によるものだということをすべての指標が示している。MSFは連合国軍に対し、10月3日未明の爆撃についてすべての情報を開示することを要求する。
また、情報公開の透明性と説明責任を最大限に担保するために、連合国軍から独立した立場からの調査も求める。

15分間隔の爆撃が1時間、主要施設に極めて正確に着弾

外傷センターでの活動に中心的な役割を果たしていたMSFベルギーのマイネ・ニコライ会長は「この爆撃は許し難く、国際人道法への極めて重大な違反です。MSFは連合国軍に対し、完全なる情報公開を求めます。12人の命が奪われたこの事実を『紛争地では巻き添えが出ることもやむをえない』などと簡単に片づけることは受け入れられません」と話す。
MSFの外傷センターには、10月3日の午前2時8分から3時15分まで、15分間隔で爆撃が繰り返された。外傷センターの主要病棟、集中治療室、救急救命室、理学療法室の各施設が極めて正確に爆撃され、その周囲の施設はほぼ被弾しなかった。

「爆撃機が施設上空を旋回し……」――MSF活動責任者の証言

MSFのアフガニスタン北部での活動責任者を務めるヘマン・ナガラスナムは「爆撃と同時に爆撃機が旋回する音が聞こえました」と証言している。旋回音が一時停止すると爆弾が降り注ぐ。それが何度も繰り返された。
「私は事務室にいたのですが、外に出ると主要病棟が炎に包まれていました。病棟の2つの地下室に避難できた人もいましたが、自力で動けない患者たちはベッドに横たわったまま炎に包まれてしまいました」
爆撃直後から、外傷センターのMSFチームは、被害がなかった部屋を仮設の手術室とし、患者や同僚たちの救急救命に全力を尽くした。重傷で対応しきれない患者は、車で2時間走ったところにあるポレ・ホムリの病院に移送した。

MSFはGPSで位置情報を知らせていた

MSFは、GPSを用いた外傷センターの位置情報を連合国軍、アフガニスタン政府軍、地域の行政当局に機会があるたびに知らせていた。これは、アフガニスタンに限らず、紛争地で活動する場合には必ず行っていることだ。
しかも、外傷センターについては、直近では9月29日に情報を伝達したばかりだった。それにもかかわらず、爆撃されたのだ。
MSF日本のジェレミィ・ボダン事務局長は「爆撃は患者とスタッフの命を奪い、アフガニスタンで最も必要とされている外傷治療に緊急対応できる医療施設を破壊したのです。私たちはすべての紛争当事者に、国際人道法に則り、一般市民、医療施設、医療スタッフの安全を尊重することを、もう一度、強く要求します」と強調する。

MSF外傷センターでの活動の背景

2015年9月28日に戦闘が始まり、MSFはこれまでに負傷者394人を治療してきた。空爆が始まった10月3日未明の時点で、外傷センターの敷地内には、患者105人とその付き添い、およびMSFスタッフ80人以上がいた。
MSFの外傷センターは、アフガニスタン北東部で唯一、さまざまな外傷治療に対応できる施設だ。2011年に開設し、高い水準の外傷治療(四肢の温存療法を含む)を無償で提供してきた。
2014年だけでも、2万2000人以上を治療し、5900件以上の手術を行った。
MSFの医療・人道援助は、中立・独立・公平の立場から、思想・信条・宗教・政治的立場などにかかわらず、患者の医療ニーズのみに基づいて行われる。
MSFのアフガニスタンでの活動資金はすべて民間からの寄付でまかなわれており、各国政府などからの公的資金は使われていない。

 

 

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明日に向けて(1162)バングラディッシュで邦人殺害・・・

2015年10月04日 23時00分00秒 | 明日に向けて(1101~1200)

守田です。(20151004 23:00)

バングラディッシュで日本人が殺害されたという痛ましい報が飛び込んできました。ISを名乗る「犯行声明」が出され、さらなる攻撃予告もされているとのことです。
亡くなられたのは星邦男さん(66)。農業関連のプロジェクトに関わられていたそうです。星さんのご冥福をお祈りするとともに、殺人を行ったものに対して心からの怒りを表明します。
同時にこのように在外邦人の危機をどんどん拡大している安倍政権の戦争政策への心からの怒りも表明したいと思います。

重要なニュースなので朝日新聞の記事と日経新聞の記事を転載します。

*****

 日本人射殺、「IS」名乗る犯行声明 バングラデシュ
 朝日新聞 ニューデリー=貫洞欣寛 2015年10月4日03時00分
 http://www.asahi.com/articles/ASHB40HQNHB3UHBI01F.html

  バングラデシュ北西部で日本人星邦男さん(66)が3日午前、何者かに撃たれて殺害された事件で、インターネット上に、過激派組織「イスラム国」(IS)を名乗り、犯行を認める声明が出た。真偽は確認されていない。
 現地警察当局は「まだ内容は確認できておらず、作業を進めている」としている。
 バングラデシュでは9月28日に首都ダッカで援助団体員のイタリア人男性が撃たれて殺害され、ISを名乗る犯行声明が出ており、いずれも事実とすれば、IS名義の犯行声明が出るのは、この1週間で2件目となる。(ニューデリー=貫洞欣寛)

 邦人男性、銃撃受け死亡 バングラデシュ北部 
 日経新聞 2015/10/4 2:03
 http://www.nikkei.com/article/DGXLZO92443130U5A001C1000000/

 【ニューデリー=共同】バングラデシュの警察によると、同国北部ランプル近郊で3日午前、日本人男性が何者かに襲われ、銃撃を受けて死亡した。在バングラデシュの日本大使館が現地に職員を派遣、確認を急いでいる。
 現地メディアや地元警察は、旅券などに基づき、男性は岩手県が本籍の星邦男さん(66)だと明らかにした。
 警察によると、男性は農業関連のプロジェクトに携わっており、8月下旬に入国、首都ダッカから北西に約200キロ離れたランプルの近郊にある友人宅に滞在していた。
 3日、ランプル近郊を歩いていた際、バイクに乗った複数の男が発砲、胸などを撃たれたという。
 バングラデシュでは9月28日、ダッカで援助関係者のイタリア人男性が銃で殺害された。過激派組織「イスラム国」(IS)を名乗るグループが犯行声明を出したとされるが、当局は確認していない。

*****

戦争法の強行可決を受けて、僕は「在外邦人の危機が高まっている」という記事を連投しました。9月25日、26日のことです。
海外におられる方に注意喚起をするとともに、こうした危機を前に、戦争法反対の声をみなさんと強めていきたいと思ってのことです。
今回の事件についてはISが行ったかどうかの真偽がはっきりしていないとのこと。バングラディッシュ政府は国内にISの存在は確認されておらず、ISに同調するイスラム勢力の「犯行」ではないかとみていると発表しています。
詳細は不明ですが、この攻撃が多くの人々が心配していたものである可能性は極めて高いです。こんなにも早く危機感を抱いていたことと思われることが起こってしまい、胸が痛むばかりです。

以下、9月末に危機の高まりを懸念して書いた記事をご紹介しておきます。

 明日に向けて(1157)在外邦人の危機が高まっている!上
 http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/59d72310ff08d1aa51f8ebe52e02cc55
 http://toshikyoto.com/press/2042

 明日に向けて(1158)在外邦人の危機が高まっている!下
 http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/fe8c341e3989f366a26d85dceba1e129
 http://toshikyoto.com/press/2046

こうしたときに私たちは、バングラディッシュの様子を少しでも知ること、バングラディッシュの人々の感じ方などを知る必要があります。
その中で私たち自身の命を守る同時に、どうすれば世界が平和な方向に歩めるのかを考察し、行動する必要があります。

ご紹介した朝日新聞の記事にも書かれているように星さん殺害の前、9月28日にもバングラディッシュでイタリア人が殺害され、ISが実行声明を出していました。
この時、僕の友人で、お連れ合いがバングラディッシュで働いている女性が、あるところに以下のような文章を投稿しました。ご本人の承諾を得たのでここに転載させていただきます。
今回の星さんの殺害ではなく、その前に、イタリア人の殺害を受けて書かれた文章であることにご留意ください。

*****

ついに、父さんが一年の8ヶ月を過ごすバングラデシュでも、ISが関わる殺人が起きてしまった。
それもダッカで一番セキュリティが厳しいといわれるグルシャンで。
一番恐れていたこと。

安保法案が成立して、(←本当はあんな国会運営で議事録も残っていないのに成立したとはいえないけど。)、

戦争より、徴兵より、大学で兵器の研究が始まるより、兵器を輸出できることよりなにより、父さんのように、イスラムの国で働く人や政府関係者、NGOの人、ボランティアの人たちに真っ先に矛先が向けられるだろうと思っている。
すでにISでは、日本人の殺害指令が出ているみたいだし。

バングラデシュはとても親日で、日本が開発援助で作った橋や学校をとても喜んでくれている。NGOもたくさん入って活動している。
そして、原爆を落とされてもここまで成長した日本をとても尊敬していたりする。
アメリカに対しては、中東などでのイスラムの国々に対する横暴に怒っている。アメリカが何故それを行っているのか、アメリカの都合のよい報道しかされていない日本よりも、バングラデシュの方がちゃんと本質をわかっていると思った。
最近は中国と韓国の援助でできた橋や学校、ビルなどがびっくりするくらい増えてるけど。

でも、2年前に行った時も、なぜ日本は原爆を落としたアメリカと手を組むのか、と聞かれた。
たとえ後方支援であっても、そのアメリカと一緒に戦うことができるようになったんだから、ISだけでなく、バングラデシュの人たちの日本への信頼も薄れていく。
安保法案の成立がどんな影響をもたらすのか、imagineできますか?

*****

僕がとくにぐっと来たのはバングラディッシュの方たちがとても親日的だとこの方が指摘していることです。原爆を落とされてもここまで成長してきた日本を尊敬してくれている。これはイスラム世界に共通することです。
これに対してイスラム圏に理不尽な戦争を繰り返してきたアメリカはとても嫌われている。「なぜそんなアメリカと組むのか」というのがイスラム圏で大変強い懸念です。この懸念が今、尊敬を薄め、疑いを強め、怒りに変わりつつある。

この流れは戦争法成立で始まったのではありません。
2001年からのアフガン戦争に自衛隊が協力し、イラク戦争ではサマワに自衛隊が進駐しました。その頃からだんだんに疑義が起こり、尊敬が薄まりだし、怒りが膨らみ始めました。
それをさらに大きくしたのが本年年頭の安倍首相の中東訪問でした。どうみてもIS攻撃参加国への後方支援としか見えないような援助を行ったため、ISが日本を十字軍指定し、後藤さんと湯川さんが殺されてしまいました。
今回の戦争法の成立はこの一連の流れに拍車をかけるものです。さらにスーダンにPKOで派遣されている自衛隊が「駆けつけ援護」でイスラムの人々を殺傷することがあればさらにこの危機は深まります。

私たちは今、このマイナスの流れに対してもう一度逆の方向にイスラムの人々の思いが向いていくための努力をしなければなりません。
その第一は、何よりもイスラムの人々を手酷く傷つけ続けているアメリカの戦争政策の非道性を批判することです。私たちがアメリカの暴力を肯定などしていないことをはっきり示すことが大切です。
この間、世界で一番ひどい暴力を繰り返しているのはアメリカです。イラク戦争では「大量破壊兵器をイラクが隠し持っているから」といういいがかりで、それこそ大量破壊兵器を大量使用した攻撃を行ったのです。
世界を混乱させているのがアメリカの暴力です。このことをこそ私たちははっきりさせること、同時に日本人がそのことに気付いて行動していることを世界に示すことが必要です。

第二に、この点を踏まえつつ、アメリカの暴力に全面的に加担しようとしている安倍政権を倒すための運動を強化することです。
そのためには選挙も大事ですが、街頭行動、デモの継続もとても大事です。We are not Abe!という私たちの主張が世界に響き渡るようにしなければなりません。
戦争法反対、戦争に向かう安倍政権を許さないという声を、ありとあらゆる手段を通じて高めていきましょう!
そのことを重ねる中でこそ、安倍政権とは対立して存在している私たち日本民衆への世界の信頼を取り戻していきましょう。

僕はこの行動の中でこそ、在外邦人だけでなく、私たち日本に住まうもの全体の安全性が守られていくと僕は思うのです。
同時に日本に住まう私たちだけでなく、イスラム圏の人々、同時に戦争に駆り出されているアメリカの若者たちの命を守ることも考えた行動に起ちましょう。
この混乱の中でこそ、世界に憲法9条の心を広げるために頑張りましょう!

 

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明日に向けて(1161)ヨウ素剤を配る!下(配布・備蓄について)

2015年09月29日 10時30分00秒 | 明日に向けて(1101~1200)

守田です。(20150929 10:30)

篠山市原子力災害対策検討委員会が市長と市民に提出した「提言書」の安定ヨウ素剤に関する説明の後半をお届けします。
今回は備蓄方法についてで、最も理想的なものとして事前各戸配布を勧めており、その理由が書かれています。

なお最後に避難との関係にも触れています。放射性ヨウ素の被曝に限っても、安定ヨウ素剤の服用で防護するよりも避難によって一切被曝しない方が良いです。
そのため「とっとと逃げる」ことがいつでもキーポイントですが、避難中に放射性ヨウ素に追いつかれてしまうこともありえるため、安定ヨウ素剤を服用して避難することが必要です。

以下、配布や備蓄についての内容をお読み下さい。

*****

 原子力災害対策計画にむけての提言
 http://www.city.sasayama.hyogo.jp/pc/group/bousai/assets/2015/06/teigensyo.pdf

第4章 被曝防護のための安定ヨウ素剤の服用
第3節 安定ヨウ素剤の備蓄方法
第1 理想的なのは事前各戸配布
備蓄の問題で重要なのは、安定ヨウ素剤は、服用することによる副作用はほとんど起こらないという点です。チェルノブイリの場合でもほとんど起きていません。
にもかかわらず服用が進まなかった福島の場合、量はあったのに、避難所とか特定の場所にしかおかれていませんでした。しかも誰が服用の判断をするのか、判断する人の免責事項がどうなっているのかもあいまいでした。
服用の現場に立つものに安定ヨウ素剤の安全性ついての理解がなかったのです。そのために判断が遅れ、ほとんど服用されませんでした。これらからも備蓄においては、事前教育を徹底することを前提としつつ、事前に各戸配布するのが理想です。

風邪薬や解熱剤などを家庭の常備薬として持たれている方が多いと思いますが、いざというときにこうした選択手段があることは、突発した事態に対して対応の幅を広げることで精神的な安定にも寄与します。
その点でも安定ヨウ素剤を各戸配布し、選択できる手段を増やしておくことには効果があります。

しかしそれだけでは足りません。事前に配布すると必ず紛失する人が出てきますし、間違えて飲んでしまい、無くしてしまう人もいます。避難の時にあわてて紛失してしまう人もいるかもしれません。
そのため避難の集合場所などにも配布しておき、かつ避難時にも配布することが必要です。

このための分は各戸配布以外に市が備蓄しておいてそこから出します。つまり三段構えの備蓄を行うのが理想です。個人、特定の場所、市役所の三段構えです。こうすれば市民は必要なときにどこかで安定ヨウ素剤を得ることができます。
なお誤飲した場合でも問題は生じません。倍量飲んでも大丈夫です。かりに乳児が倍量飲んでも、医学的には「嘔吐支援など医師援助をするな」という指示が出ているぐらいです。誤嚥性肺炎の方が危険性が高いのです。
安定ヨウ素剤は普通の大人が飲む量でも100ミリです。だし昆布に入っている量が、味噌汁1杯5ミリぐらいですので、それが20杯で100ミリです。子どもだったら10杯分です。これを飲んで死ぬ人はいません。心配はありません。 

実際には、安定ヨウ素剤よりももっと危険な薬が各家庭にあります。倍量飲んだら深刻な事態を招くものも多数あります。
それらと比べたら安定ヨウ素剤はずっと安全であって、各戸配布が実現された場合は、それぞれが病院から得た薬を保管するのと同じような気持ちで保管してもらえば良いです。
これらを踏まえて市は安定ヨウ素剤の各戸配布を可能とするための検討を進めています。

第2 連続服用が可能な備蓄量の確保を
篠山市としてはヨウ素の飛来を長期にわたって考えるならば、複数日ぐらいの服用が可能な量の備蓄がなされていれば充分であると思われます。
各自への配布、避難場所、避難時と三段階の方法を篠山市独自の方式として打ち立てたいと思います。
また篠山市在住者ではないけれども篠山市に勤務している方も関与人口として考え、それらの方の分も安定ヨウ素剤備蓄の対象と考えたいと思います。
それらの方たちへの配布方法、教育については別途、検討の対象とすることとします。安定ヨウ素剤は安価であるため購入の負担も小さいです。

なお重要なのは避難するときには、安定ヨウ素剤の服用は絶対に必要だということです。ただし放射性ヨウ素の被曝に対しても、安定ヨウ素剤を飲むより避難した方がメリットが高いのです。
その避難の途中に放射性ヨウ素が飛んでくることは充分考えられるので避難と安定ヨウ素剤服用はセットで考えるべきなのです。

第3 事前配布ができない場合の次善の策の検討
今の法制度の中では、安定ヨウ素剤の事前各戸配布にはさまざまな法的障壁があります。原子力災害対策検討委員会としては、この点を解消する道を全力をあげて作り出したいと考えています。
同時にそれまでの間は、各戸配布にできるだけ近づける形での、配布方法を編み出したいと思います。急務の課題と位置付けて取り組むべきです。

*****

以上で安定ヨウ素剤の配布に関する連載を終わります。
ぜひ全国各地でこの動きを広めて下さい!

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明日に向けて(1160)ヨウ素剤を配る!中(服用の意義と諸注意)

2015年09月28日 09時30分00秒 | 明日に向けて(1101~1200)

守田です。(20150928 09:30)

篠山市で来年1~3月に安定ヨウ素剤の事前配布を行うことをご紹介しましたが、篠山市原子力災害対策検討委員会が篠山市長と市民に提出した「提言書」の中から、安定ヨウ素剤に関する項目(4章)を抜粋しご紹介します。
なおあらかじめ生じやすい誤解にお答えしておきます。

一つに提言で掲げている「原子力災害対策」の基本は「とっとと逃げる」ことです。
放射性ヨウ素が飛来する条件下ではもちろん他の核種も飛来します。この中で防げるのは放射性ヨウ素による被曝のみです。そのためこの薬を飲めば大丈夫だというわけではありません。
基本は安定ヨウ素剤を服用して「とっとと逃げる」ことです。逃げる途中に放射性ヨウ素に追いつかれた場合を考えて服用するのです。もちろん逃げられない方もおられます。その場合も考えて複数日数分の備蓄を提案しています。

二つに「放射性ヨウ素は半減期が短くてすぐに消える」ので大した意味はないのではというもの。
まったく反対です。半減期が短いのは単位時間あたりに出てくる放射線量が多いからです。半減期が30年のセシウム137と半減期が8日のヨウ素131を比較すると、セシウム137が1本の放射線を出す間にヨウ素131は約1369本もの放射線を出します。
このため半減期の短いものは短期に身体にものすごいダメージを与えるのです。そのためにも安定ヨウ素剤の服用は重要ですが、他にも半減期の短い核種はたくさんあるので、事故の初期ほど放射線値が高く、「とっとと逃げる」ことが大事なのです。

あらかじめこの点を補足した上で、以下の提言の4章をご紹介します。

*****

 原子力災害対策計画にむけての提言
 http://www.city.sasayama.hyogo.jp/pc/group/bousai/assets/2015/06/teigensyo.pdf

第4章 被曝防護のための安定ヨウ素剤の服用
第1節 安定ヨウ素剤服用の必要性
第1  放射性ヨウ素の甲状腺への取り込みを防圧
次に放射線被曝防護の観点から、安定ヨウ素剤の服用に必要性についての提言をまとめたいと思います。
安定ヨウ素剤の服用はなぜ必要なのでしょうか。もともと自然界にヨウ素という物質があります。身体はミネラルとしてこれを日々、取り込んでいます。
原発事故が発生した場合、原子炉内で生成された自然界にはない放射性ヨウ素が飛んできて、空気中のヨウ素と結びつき、放射能を持った人体に悪いヨウ素が生まれます。
ところが人体は自然界にある普通のヨウ素なのか身体にとって悪いヨウ素なのか見分けがつかないので、体の中に取り込んでしまうのです。

普通の食物の場合、例えばアルコールであれば、ある程度、肝臓で分解されて、その日のうちに腎臓から排出されるという経路を取ります。
ヨウ素は体の中のミネラルとしてある特定の臓器にある一定の期間、貯蔵されてしまう特徴があり、その間に放射線が出ることで臓器に損傷を与えてしまうのです。
とくに取り込まれる特徴があるのは甲状腺です。自然界にあるヨウ素によって甲状腺ホルモンを作っているため、ヨウ素を必要としているからです。

日本に長く住んでいる方の場合は、海外の内陸部で生活している人々に比べて、ヨウ素をたくさん含む海藻などの海産物を日常的に食べているため、ヨウ素を摂取する機会は多いと言えます。
しかし甲状腺をヨウ素のタンクに例えるならば、ヨウ素を燃料として甲状腺が働いているために、仮に一度タンクが満タンになっても、日々、燃料であるヨウ素は消費されていきます。
そのためタンクにはいつでもある程度の空きがあると考えるべきです。

そのため放射性のヨウ素が入ってきた場合に、空いている部分に放射性ヨウ素が入ってしまい、体外に出ていくまでの間、放射線が出て甲状腺を被曝してしまいます。この被曝の仕方を内部被曝と言います。
これに対し、放射性の悪いヨウ素が来る前に、自然界にあるものと同じ良いヨウ素で甲状腺のタンクを満たしておけば、悪いヨウ素が素通りしてくれる(タンクは満杯で入る余地がない)というのが、安定ヨウ素剤服用の意義です。

第2 安定ヨウ素剤服用の時期
そのことから逆に考えてみて、原発で事故が起きて放射性のヨウ素が飛んできて、身体が取り込んでしまったあとからいくら良いヨウ素を摂ってみても、悪いヨウ素がすでに甲状腺のタンクの中に入ってしまったら意味がないことになります。
具体的には、放射性ヨウ素の取り込みから6時間以上経ってから安定ヨウ素剤を服用しても、ほとんど効果がないのです。

逆に原発事故が起こったけれども、まだ放射性ヨウ素が飛んでこないのに、8日間ぐらい前に安定ヨウ素剤を飲んでも、ヨウ素が体外に排出されるので、悪いヨウ素が飛んできたときに再びタンクに隙間が出来てしまう。
適切な時期に適切な量をとらなければ効果が得られないのです。

ではどれぐらいが目安になるのかというと概ね24時間前に安定ヨウ素剤を飲めば、9割以上は防護できる、最低1日は十分持つとされています。研究報告によると4時間ぐらい遅れても6~8割ぐらい効果はあると言われています。
脳梗塞や心筋梗塞の発症への対処と比較すれば時間の余裕があります。


第2節 安定ヨウ素剤服用における諸注意
第1 服用にあたっての条件
誰が安定ヨウ素剤をどれぐらい飲むことが必要なのかですが、高齢者には若い人に比べて放射線被曝の影響が少ないと言われています。しかしそれはあくまで通常の被曝に対してのもので、高濃度の被曝を想定したものではありません。
そのため、救援活動従事者や医療従事者などは年齢に関係なく予防的服用が必要ですし、一般の高齢者も念のために服用した方が良いです。

結核病患者についてはかえって悪くする場合があるとも言われています。確かに一時的に悪くなることはありえますが、被曝による発がんの方が、将来的に重篤な結果を生むので、たとえ結核があっても服用すべきだと考えられます。
妊産婦に関しては、胎盤を通して放射性物質が透過するため飲むべきです。長期服用すると胎児の下垂体に働いて一過性の成長障害が起きうるとも言われますが、薬を飲む期間を一定に限ればその限りではないとデータに出ています。

第2 非常に低い副作用の発症率
アレルギーのある方の服用に関してですが、病院などではヨウ素は脳動脈瘤やくも膜下出血などを診断するために血管を造影するため、あるいは循環器系の血管を造影するために使われています。
ヨウ素系造影剤を注射して検査を行いますが、その際、100人の検査で1~2人ぐらいジンマシンが出ます。

こうしたヨウ素系造影剤で遅発性の24時間以内のアナフィラキシーショックで死亡した例もあります。
そのためヨード剤使用における副作用の心配が語られることとなったのですが、実際には医師によって静脈内にイオン状態で投与するのと飲むのとでは条件が大きく違います。
血液の中に医師が投与する場合はイオン状態にある造影剤が血液中の酸素と結びついて合併症になる場合がありますが、経口投与の安定ヨウ素剤は非常に安定しているのでほとんど起きません。

どれぐらい重篤な副作用があるのかというと、8,000~9,000万人が受けているインフルエンザ予防注射の場合、重篤な副作用の発生率は0.002%ぐらい。対してヨウ素剤の場合、重篤な副作用は0.0001%。20分の1です。
副作用の発生率がそれぐらいである以上、その後の利益を考えて、現場の責任者の責任において判断することは人道的に許されると考えられます。

この点については法的なサポートが必要です。現場の緊急判断の結果に関しては免責されることをはっきりとさせておくことが早急に望まれます。

第3 事前の調査の必要性
ただし可能な限りリスクを減らすために、事前調査を行うことが重要です。
ヨウ素に関する基礎疾患やアレルギーについてはすぐにもできます。春の健康診断が一斉に行われる時期にヨウ素に関するカードをつけて、それにチェックをしてもらうだけでよいので、すぐに始めるべきです。
そこで食物アレルギー、とくにヨウ素アレルギーがあるかないかを尋ねるのです。本人が分からないのならそれでもかまいません。食物アレルギーが何かないか尋ねるだけでも良くてそれはどういうものですかとその点をチェックしてもらえば良いのです。

第4 事前の教育の必要性
実際に薬を飲んでもらうことについて、福島の時はどうだったのかというと、多くの人々が福島原発事故まで安定ヨウ素剤の存在を知りませんでした。しかし原発周辺には配られていました。そのため安定ヨウ素剤は十分にありました。
しかしほとんど服用されませんでした。判断ができなかったためです。

このことから明らかなことは、安定ヨウ素剤があっても、副作用に関する知識が不十分であって過度に怖がったり、どの時期に飲んだらいいのかという知識がなかったら、実際のときにはなかなか的確に飲めないということです。
このため求められるのは訓練です。調査、教育、訓練が必要です。安定ヨウ素剤の必要性と副作用の実際、なぜその処置をしなくてはいけないのかという必要性を十分に分かっていたら、副作用を怖がって飲まないことは起きません。

そのため安定ヨウ素剤の場合でも副作用や発生率に関して詳しく説明し、かつ発現したときの対処を説明し、その上で必要性を説いて訓練をすれば、市民が安心して飲んだり子どもにも飲ませることができるので様々な場での教育が大切です。
とくに子どもの服用に関しては家庭の役割が重要となりますので、子どもが保護者とともに放射線防護や安定ヨウ素剤について学ぶことも大切です。
ある程度医学的な知識を持った保健師さんなどを、私たち検討委員会の医師が教育し、服用にあたっての注意事項について、一般の市民を含めて、講習を行っておけば、合併症の発現に対してもある程度は対応できます。

続く

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