明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(403)これはひどい・・・被災農地での耕作を強制(伊達市)

2012年02月09日 22時30分00秒 | 明日に向けて(401)~(500)
守田です。(20120209 22:30)

福島県伊達市の市農業委員会が、福島原発事故によって放射能汚染されたた
め、耕作を見合わせている農家に対して、「農地として適切に利用されてい
ない」として、「耕すように指導」しているというニュースを東京新聞が報
じています。これはひどい。

「指導」を受けているのは、市内の小野寛さん(51)。事故によって田畑
は3マイクロシーベルト毎時の放射線値を示すようになったそうです。その
ため、ここで耕作をしても収穫物を食べることはできないと考えて、耕作を
断念。さらに被曝を避けるために、それまで植えられていた小麦なども収穫
しませんでした。

これは極めて妥当な措置だったと思います。小野さんが懸念したように、放
射能汚染された作物を収穫すると、放射性物質が舞い、吸い込んで内部被曝
してしまう可能性が強くあります。また土いじりの仕事である農作業は他の
様々な面からも、被曝の可能性が高く、汚染地帯での作業は危険性が高いた
めに避けることがのぞましいからです。

また汚染された土地から収穫したものは、当然ながら汚染されてしまうため
食べられないとの判断も妥当です。それどころか、耕作をせず、とりあえず
はそれまで生えていたものもそのままにしておいたほうが、事故が収束した
後に、生えているものを刈り取り、土の表面数センチをはぐことで、農地を
再生させる可能性が残されるのであって、耕して放射性物質を鋤込むことを
しなかったこの判断は、きわめて賢明であったといえます。

むしろ国や県、各自治体の農業対策室は、こうした判断を昨年3月の時点で
示し、耕作中止を呼びかけるべきだったのであり、今回の措置は、そうした
失策を振り返らないばかりか、自らの被曝を避け、田畑への放射性物質の
鋤込を回避して農家に、被災農地での被曝を伴う耕作を強制するものであっ
て、まったく間違っています。

伊達市農業委員会が、小野さんへの不当な「指導」を撤回し、小野さんに
謝罪することを求めます。

**************

耕作放棄じゃない 除染待つ間に農地利用促す通知
東京新聞 2012年2月8日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2012020802100006.html

米から国の基準を上回る放射性物質が検出された福島県伊達市で、土壌汚染
や被ばくへの懸念から耕作できなかった農家に対し、市農業委員会が田畑を
耕作放棄地と扱う通知を出した。「農地として適切に利用されていない」と
して耕すよう指導。一月中旬に通知を受けた同市の小野寛さん(51)は
「耕すと放射性物質が土に混ざる」と困惑している。 (中崎裕)

各自治体の農業委員会は農地法に基づき、年に一度、耕作放棄地を調査。最
初の指導通知が届いた時点で耕作放棄地扱いとなり、所有者は原則的に新た
な農地取得ができなくなる。同市農業委は今回、二百件ほどの指導通知を出
した。

小野さんは二千平方メートルの田畑で米と小麦を栽培。主に自家用だが、一
部を販売している。米は、秋から育てたライ麦を刈り倒して雑草などを抑え
る独自の有機栽培をしてきた。

昨年三月の原発事故で、田畑は毎時三マイクロシーベルトと高い線量が検出
された。単純計算で年間二〇ミリシーベルトを超え、政府が避難を促す基準
を超える値だ。「作っても食べられない」と判断し田植えをやめた。土ぼこ
りなどを吸って被ばくする懸念があったため、ライ麦と小麦の収穫もせず、
田畑はそのままにしていた。「除染さえできれば耕作するつもりだった。放
棄したわけじゃない」。小野さんは農業委員会に通知を取り消すよう求めた
が、受け入れられなかった。

農地法には、災害時などは耕作放棄地扱いしないとの規定がある。農林水産
省の担当者は「農業委に判断は委ねられるが、一般論として原発事故があっ
た福島なら放射線への懸念は災害にあたるだろう」と説明する。

しかし、市農業委は「高線量のホットスポット以外の地域は、放射能への懸
念があっても特別扱いはしていない」との見解。一方で、伊達市では農地の
除染方法を検討中としてまだ決めていない。

小野さんは「耕作すれば放射性物質が混ざり、自然になくなるのを待つしか
ない。セシウムは半減期が三十年もあるのに、どうすればいいのか」と力な
く語る。

<原発事故による耕作規制> 農林水産省は昨年、避難区域と土壌調査で1
キログラム当たり5000ベクレルを超える地域の米の作付けを制限。伊達
市は対象外だが、避難区域に近い地域では米から国の暫定規制値(1キログ
ラム当たり500ベクレル)を超えるセシウムが検出された。規制値は1キ
ログラム当たり100ベクレルに引き下げられる見込みで、農水省は今年も
作付け制限を検討。除染方法は、表土を地中深くに埋めるなど農水省がいく
つか案を示しているが、最終的には自治体が方法を決めることになっている。

コメント (2)
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