守田です(20250118 23:30)
● Atoms for peace
「米国は、軍事目的のための核物質の単なる削減または廃絶以上のものを求めるだろう。この武器を兵士の手から奪うだけでは不十分です。それは、その軍事薬莢を剥ぎ取り、それを平和の芸術に適応させる方法を知っている人々の手に委ねられなければなりません。」
このスピーチをご存じでしょうか?これは米国のアイゼンハワー大統領が1953年12月に国連総会で行った演説です。“Atoms for peace”「平和のための原子力」というタイトルで語り継がれています。原文はIAEAの以下のページからご覧になれます。
https://www.iaea.org/about/history/atoms-for-peace-speech
スピーチではこんな言葉も続いています。
「米国は、もし核軍備増強の恐ろしい傾向を逆転させることができれば、この最大の破壊力を全人類の利益のために大きな恩恵に発展させることができることを知っている。米国は、原子力エネルギーによる平和的な電力が将来の夢ではないことを知っています。
すでに証明されている能力は、今日ここにあります。もし世界中の科学者や技術者が、自分たちのアイデアをテストし発展させるのに十分な量の核分裂性物質を持っていれば、この能力が急速に普遍的で効率的かつ経済的な利用に変わることを、誰が疑うことができるでしょうか。」
つまり「核軍備増強の恐ろしい傾向」を逆転させて、原子力発電を増進させるというのです。しかし実際の狙いは、世界の人々の核戦争への恐怖、とくにヨーロッパが核戦争の舞台になるのではという欧州の人々の大きな不安を慰撫しつつ、核戦略の増進を図ることにありました。
これは旧ソ連が1949年8月に同国初の核実験を成功させ、米国による核兵器の独占体制が崩れたこと。さらにこれに触発された米国が1952年11月に初の水爆実験を成功させたものの、1953年8月に旧ソ連が水爆実験成功を発表する中でのことでした。(実際にはソ連の水爆は1955年11月に初めて実験に成功)
国連総会で演説するアイゼンハワー米国大統領 守田講演スライドより
● 「平和のための原子力」といいつつアメリカは核兵器を増産した
この演説は「プロジェクト・カンドール」と題された広報キャンペーンの一環でした。米国が「情報に通じた慎重な一般市民」の育成を目指して仕組んだ心理作戦でした。
それまで秘密のベールに包まれていた核兵器体系の情報の一部を積極的に公開しつつ、軍拡競争に費やす巨額の予算に対する米国民の「理解」を得ることを目指したものでした。
アトムズ・フォー・ピース・キャンペーンは、この作戦の一環で、米国だけでなく世界の人々に「米国が戦争よりも平和に関心を持っている」と思わせることを目的とし、このもとにIAEAなどが生み出され、原発推進の流れが作られました。
そしてそれと当時に、核武装はより激しく進められたのでした。アメリカは1954年3月~5月にマーシャル諸島ビキニ環礁で、水爆ブラボーなどによる6回の核実験を強行。太平洋の島々の人々や第五福竜丸など1000隻近くの日本の漁船の乗組員などを被爆(被曝)させました。
アイゼンハワーはソ連を圧倒する報復体制を作り出すことこそ「アメリカの平和の道」だと考え、核兵器保有量も1005発からなんと20000発にまで拡大させました。
「原子力の平和利用」を語りつつ、核弾頭の数も飛躍的に増進させていったのが実際に行われたことだったのです。
米国はその後も核実験を繰り返し強行 世界中の人々を被爆させた 守田講演スライドより
● 核兵器製造のためのウランの濃縮を続けるため原発が必要だった!
ここにはもう一つの重大なカラクリがあります。そもそもアメリカは広島・長崎への原爆攻撃を通じ、核兵器をより経済的に作るためには、原子炉の中でウランを核分裂させながらプルトニウムを作り出し、それで原爆を作ることが良いことをつかんでいました。
しかし核分裂連鎖反応は掘り出したウランの中の核分裂する部分(ウラン235)の濃度を高めなくてはならない。ウラン濃縮ですが、これがなされないと核爆弾製造には至らない。
ところが濃縮には大変なコストがかかります。しかしそうしてコストをかけて作った濃縮ウラン、そこから作ったプルトニウムは核実験以外では使用できず、それほど「消費」できない。それではウラン濃縮工場が経済的に運営できなくなってしまうのでした。
実はそれではじめられたのが原子力発電所だったのです。拡大もそのためです。つまり濃縮ウランの使用先の確保、需要の創出として必要不可欠とされたのです。
だからこそ「原子力の平和利用」のもとでこそ、核武装の強化、核弾頭の拡大は可能だったのでした。原子力発電は核兵器開発の隠れ蓑であるとともに、ウラン濃縮を可能とするための必須のものとしても編み出された。だから核兵器をなくすためにはウラン濃縮をやめさせ、原発をなくすことが必須なのです。
そうすれば絶対に核兵器は作れなくなります。この重大な点から人々の視線をそらし、核兵器を維持するたねにAtoms for peaceキャンペーンが生み出されたことをしっかりみすえましょう。大嘘付きの原子力マフィアの騙しを打ち破りましょう。
「平和のための原子力」発言(1953年12月)以降、米国は核兵器保有数を大幅に拡大
ブログ「核情報」http://kakujoho.net/ndata/nukehds2015.html より
● 核なき未来をたぐり寄せるためにともに学ぼう
核と放射能と被爆(被曝)をめぐるこうした嘘を見破るためには、学びを深めることが必須。そのための学習会を連続開催中です。
その一つが京都「被爆二世・三世の会」で行って来た『被爆二世・三世健康調査アンケート結果報告書』を、福島原発事故で「新ヒバクシャ」に「能力減退症」が起きていることを解明し、治療してきた三田茂医師が読み解いて解説した講演の記録を読み解く会です。
1月20日(月)18時半から20時半まで 京都市西院のラボール京都とZOOMのハイブリッド開催。主催は京都「被爆二世・三世の会」です。
もう一つは守田が原発の抱える危険性を端的に説いた『原発からの命の守り方2024』を読む会の第4回目。今回は「5 原発推進策は愚かで展望がなく危険なだけ」「6 チェルノブイリ原発事故は終わっていない」を読んで討論してみんなで内容を深めます。
こちらは2月1日(土)午前10時半から午後1時まで。ZOOMによる開催。主催はにょきにょきプロジェクトです。
それぞれの申し込みフォームとイベントぺージを記しておきます。ぜひご参加下さい。
三田茂医師講演を読み解く会 第1回 1月20日(月)18時30分から
https://fb.me/e/czkaApTZu
https://forms.gle/oq4dv8tVkdUvN4e28
『原発からの命の守り方2024』読む会第4回 2月1日(土)午前10時半から
https://fb.me/e/4XMJg8WvQ
https://forms.gle/m8sgasA8GmPVtJiJ7
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