明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(645)福島第一原発冷却システムダウンが意味するもの

2013年03月19日 23時00分00秒 | 明日に向けて(601)~(700)

守田です。(20130319 23:00)

昨夜(18日)、福島第一原発で停電があり、1号機と3号機、4号機の燃料プールと、共用燃料プール(燃料棒6300本)の冷却システムがダウンしました。その後の復旧作業により、19日に1号機と4号機の一部の電源が回復し、本日20時までに3号機と4号機の残りの部分が。明日(20日)午前8時までに共用プールの電源が回復の見込みとされています。
全体の復旧の見込みが立ったことはとても良いことですが、これを書いている午後10時現在、まだ3号機と4号機の復旧は伝えられておらず、共用プールのシステムは依然ダウンしたままです。
冷却ができなくなると、やがてプールの水が高温化し、蒸発しはじめ、燃料棒が顔を出すため、再び膨大な放射能漏れが発生してしまいます。最も恐ろしいのは、そのことにより現場の労働が極めて困難になり、福島原発サイトのすべての原子炉、および共用プールへの手当ができなくなり、現場を放棄しなければならなくなる事態です。そうなったときの被害は「壊滅的」と言わざるを得ません。
現状ではまだ危機に向けた事態が進行中ですから、私たちはさしあたってのこの危機が完全に去るまで、原発への注視を継続する必要があります。そして事態が収まらずに悪化に向かう時は、広域からの避難が必要ですので、準備を進める必要があります。

また明日の朝までに運良く復旧ができたとしても、今回の事態は私たちが今、どのような危機に直面しているのかを突きつけるものとなったことをしっかりと受け止める必要があります。というのは多くの意識ある人々がこれまで、再度の大地震などによる福島原発の再度の危機化を懸念してきたと思うのですが、今回、危機はもっと容易に起こりうることが示されました。
これはそもそも福島第一原発が、人間で言えばまだまだ「瀕死」の状態で、人工心肺などをつないで、ようやく命脈を保っているようなものであることに規定されている問題です。今回報道されたテレビ映像でも、それぞれの炉の冷却システムの配電盤が、トラックに乗せられた応急のもののままで、プラントとしての安定的な体系のうちにあるものなどではまったくないことなどが映し出されています。
要するにもともとの設計の上に成り立ち、検査などを経てきたものではないわけですから、システムは極めて脆弱で、それだけに些細なことで深刻な危機に陥ってしまう構造の中にあることが、今回、突き出されたのです。

ここから学ぶべきことはなんでしょうか。第一には、今の福島原発の危機的状況への認識を再度作り出し、ここに私たちの国の持てる力を総結集することが最も問われていることを再度確認すること、それを周知徹底されることが必要だということです。
とくに現場で日夜、日本と世界の破滅を回避すべく必死で働いている人々を支える社会的ムーブメントを強める必要があります。そのためには危機を隠すことなど言語道断なのです。現場の方たちが少しでもよりよく働けるようにするためにも、危機を明らかにし、現場にもっとたくさんの光を当てなければいけない。
同時に現場の労働環境に対する市民的監視を強める必要があります。私たちには、現場を襲う地震の可能性を減らすことはできません。しかし少しでも現場を良くして、結果として一つでも補強が可能になり、災害への強さを増すことをサポートすることはできるはずです。そのためにはこれまでたくさんの労働者に、被曝労働を強制してきた「嘘つき」東電に労働管理を任せていてはいけません。

第二に、今後起こりうる原子力災害の中で、最も可能性の高いものが、福島原発事故の悪化=破局化であることを見据え、これをリアルに想定した原子力災害対策や避難計画を、作り出していくことが問われているということです。
今回の事態を考えても、たった数日のうちに、広域の、しかも膨大な数の人々がからむ避難の準備などできるものではありません。だからこそ事前に起こりうる災害を想定し、避難計画を立てておくことが大切です。
ですから、明日の朝8時に、幸運にも共用プールの冷却システムの復旧がなされたでも、私たちはそれで安堵してしまうのではなく、まずは個人のレベルで、家族のレベルで、職場や地域のレベルで、福島原発の悪化を想定した災害対策・避難計画を作っておく必要があります。
ちなみに僕はこれまで、こうしたときのために「原発災害に対する心得」をまとめてきました。昨夜から多くの方がツイッターを通じた拡散に協力してくださいました。他によるべきものがない方はこの記事を参考にされ、自らの原発災害対策を作り出してください。アドレスは以下の通りです。

明日に向けて(556)(569)(571)原発災害に対する心得 (上、中、下)
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/a276d3555af84468c1db19966b59cf16
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/0fd8fbc4681c2a073c73e4a0f95896bf
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/ed69f6466c0d72c16f70a371e599df31

さらに重ねて考えるべきこと、担うべきことは、それぞれの行政単位で福島原発サイトの悪化を想定した災害対策を検討し避難訓練を行うように、市民の側から行政への働きかけを強めることです。とくにこの点で重要なのは、原子力規制委員会から打ち出されている「原子力災害対策指針」が、福島原発サイトの悪化という最もリアルな危機を、意図的に除外したものになっている点です。
福島原発事故のときにあらわになったのは、私たちの国が、実際の原発事故に即した避難計画を持っていないことでした。なぜそうなったのか。リアルな想定をすると、原発の危険性が浮き彫りになるため、政府がリアルな避難計画の策定や訓練の実施をサボタージュしてきたからです。
同じ過ちが今も繰り返されようとしている。それが福島原発サイトの状態の悪化の意図的除外なのです。しかしこの厳然たる事実から目をそらし、リアルな事故の想定をしないことこそ、私たちの危険性=危機を何倍にもしてしまうのです。この点は以下の記事を参照して下さい。

明日に向けて(629)原子力災害をリアルに想定した備えを!備えることが危機の可能性をも減らす!
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/abc19bcca35e8327c84cde569b4839a8

ともあれみなさん。まずは福島第一原発のすべての燃料プール冷却システムが完全回復するまでは緊張感を保持し、原発のウォッチを続けましょう。そして危機の拡大の停止を見届けたら、続いてあらゆるレベルでの原子力災害対策の強化に踏み込みましょう。
事故の破局化の回避のためにも、また私たちの社会の人権総体を守るためにも、福島原発サイトで働く労働者の労働条件を守りましょう。東電に現場の公開をもっと迫り、現場の見える化を図って、現場とつながっていきましょう。それを要求しましょう。
同時に、現場の苦労と連携しながら、不幸にして福島原発サイトの危機が拡大した場合の対策を幾重にも積み重ねていきましょう。それらによってこそ、私たちは危機に能動的に立ち向かい、少なくとも最も危機を低減させる人為的努力を重ねることができるのです。

以上のことを、6300本もの燃料が沈んでいるプールが、冷やすことのできない状態にあるこの夜に、共に考えていきましょう!

以下、FNNニュースを紹介しておきます。

******

停電で冷却システムダウン 福島第一原発・・・完全復旧まだ FNNニュース
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20130319-00000481-fnn-soci

福島原発冷却システム停止 1・4号機の一部電源復旧
フジテレビ系(FNN) 3月19日(火)18時52分配信

福島第1原発の停電について、1号機と4号機の冷却システムは復旧した。残りについては、20日朝までの復旧を目指すとしている。
東京電力は午後4時半すぎの会見で、「今般、こういう状況で、心配をおかけしていることは、大変申し訳なく思っております。状況を確認するために、(電源盤の)内部を見て、内部の目視点検のかぎりでは、目立った損傷は、現状見当たらない。電気的な確認など、並行して進めるべきことがあるので、ケーブルの敷設による復旧の方が早いと判断して、そちらで進めている」と語った。
福島第1原発の突然の停電から一夜。
東電は、トラックの荷台に載せた3・4号機の仮設の電源盤に、何らかの不具合がある可能性が高いことを明らかにした。
当時、事故対応にあたっている免震重要棟も一時停電したが、すぐに復旧した。
しかし、1・3・4号機の使用済み燃料プールと、6,300本余りの使用済み燃料が保管されている、共用プールの代替冷却システムが停止した。
菅官房長官は「冷却のための代替手段も対応する予定であります。全く心配のないような対策を、今講じている」と語った。
使用済み燃料プールの中で最も水温が高くなっているのは、4号機の燃料プール。
18日、午後5時の水温は25度。
しかし、19日午前10時の東電の推測値では30.5度に上昇した。
およそ90時間後、4日ほどで保安規定の上限温度である65度に達する見込みとなった。
燃料プールの冷却システムについて、東京工業大学の澤田哲生助教は「プールの水があふれた分がタンクに入ります。ここに冷却ループがありまして、ぐるぐる回している。その過程で冷やしている」と語った。
今回の停電により、燃料プールの内部では、冷却水の循環が止まり、1時間ごとに水温が0.3度ほど上昇する状態になっているという。
澤田助教は「冷やすループのポンプが止まっていて、水が動いていない。水が冷えない状況です。少しずつ温度が上がっていって、やがて蒸発し始める」と語った。
東電では、復旧に時間がかかる場合、プールの冷却システムを、問題となっているものとは別の電源盤に直接つないで、復旧させることも検討していた。
そして、午後4時半すぎ、東電は会見で「取り急ぎ、つけているというところです。そういう意味では、応急処置ですが、原因については、原因を詳細に見ていくというより、まずは復旧の方を優先して、機能復旧を優先して進めておりますので、原因調査については、これからより詳細に進めていく」と語った。
19日午後になり、1号機と4号機の一部の電源が復旧し、冷却システムが運転を再開した。
残る3号機と4号機の一部も、午後8時をめどに復旧を目指していて、共用プールの電源も、20日午前8時の復旧を予定しているという。

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