守田です(20180513 23:00)
大飯原発4号機が9日に再稼働し、10日にさっそく水位計の不具合で間違って警報が鳴りましたが、関電は「問題なし」として送電を開始。出力をあげています。
こうした事態を前に、2015年夏、川内1号機が再稼働されたときに後藤政志さんと守田で行った対談動画を観ていただきたいと思って再度掲載し、文字起こしも紹介してきました。
4回にわたる文字起こしの前半をすでにご紹介しましたが、今宵は後半をご紹介します。再稼働問題のエッセンスとは何かをつかんでください!
福島原発事故からつかむべきこと
2015年8月14日 後藤政志&守田敏也 対談 東京品川にて
https://www.youtube.com/watch?v=TKJNkgNOgaI&feature=youtu.be
明日に向けて(1125)ベント後付けの条件設定を無理強いされて(後藤&守田対談から-3)‐20180820
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/b6723e704fd2df6cea3f4b429f55ec80
http://toshikyoto.com/press/1962
3回目では後藤さんが初めて「ガス抜き装置」のない格納容器をみて思ったこと。また格納容器の設計師となるや「ガス抜き装置=ベント」をつけることを求められた時のことをお聞きしました。
守田
「先ほどお話をうかがったときのことで、ちょっと突っ込んでしまいますけれども、ちょうど後藤さんが東芝に入られた後にベントをつけることになったということをお聞きしました。あの話をもう少し聞かせて下さい」。
後藤
「私が会社に入ったのは1989年です。ちょうどチェルノブイリ事故もありましたし、格納容器の持つ意味が大事だとされていました。
それで格納容器を担当する時に、一番最初にビックリしたのは、普通、ボイラーなどは圧力が高まると爆発してしまうから、設計上耐えられるとされる圧力より1割ぐらい越えると確実にバルブが開いて圧力が逃げるようにしています。
バルブは何個もついています。危ないから。そうなっていることを知っていましたから、格納容器を見たときに逃し弁がないので「えっ、大丈夫?」と思いました。
でも「ちょっと待って。格納容器は違うよな」と考え直しました。原子炉圧力容器はいいのですよ。圧力容器はそこから圧力を逃がして格納容器の中に吹けばいいのですけれども、格納容器は放射能を閉じ込めるので外に出してはいかんわけです。
そうするとガス抜きできないという立場なのですよ。そうすると設計気圧が4コンマ幾つとか、3コンマ幾つとか言うのですけれども、それって絶対的なのです。絶対に越えてはいけない。それって結構、厳しくて、真剣に設計を見ていたわけです。
その時に何年もしないうちに、1992年にはもう言われていたと思いますが、社内で安全担当というのがいます。それが技術の上流側にいるわけです。その安全担当が来て、今ある格納容器は何気圧まで、何度まで持つのか。「言え」と言うのです。
「言え」たって、そんなのは「設計は3コンマ幾つ、温度は171℃」とか説明するわけです。当たり前じゃないですか。それを越えるなどありえないのです。
ところがそれを何とかという意味は、システムがうまく作動しなくて、本当は緊急炉心冷却系、ECCSで、配管破断が起こった時にそれで水をぶち込む、それが何個もついているのだけれど多重故障を起こしてみんな停まってしまう。
そうなると冷却できなくなって温度が上がっていく。そうすると格納容器がぶっ壊れたら大変なことになるので、どこかでガス抜きしなくてはならない。それを決めるのに「どこまで持つか、頑張って欲しい」とこう言われたのです」。
明日に向けて(1126)安全についての考え方を身につけることが問われている(後藤&守田対談から-4)‐20180821
https://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/0643e26193fcc0fd7471b3f25e51ee0f
https://toshikyoto.com/press/1965
4回目では安全工学の考え方を市民が身に着けることが社会の安全性を高めることになることを話し合いました。
後藤
「もともと格納容器というのはパッシブセーフ、受動的安全、つまり何も機械を動かさなくても、格納容器を隔離弁を閉じて鎮めると何もしなくてもそれで持つというのが格納容器の概念なのです。
それを「ある時には持たなくなる」と言ったとたんに破綻しているわけです。ですから「自殺」と言う表現もとりましたが破綻しているわけなのです、設計思想が。
そうすると破綻したものを取り繕うこと自身が、私も教えている設計工学で言っても設計のあり方として間違っているのです。
根本のところを変えずに付けたし付けたしでやれば必ず破綻するというのが設計学の常識で、いつも「やめろ」と教えているのです。それなのに自分がやったことがそうなっているでしょう。どうみても納得できないですよ。それが正直なところです」。
守田
「私は、直接的には後藤さんとは原発の問題でお話しているわけですけれども、これはやはり技術論全体に関わることだと思うのですよね。
その点で単に原発のことだけではなくて、多くの市民の方が安全工学の観点と言いますが、そういうものを見につけることが私たちの社会全体の安全性を高めることになると思うのです」。
以上で動画と文字起こしの紹介を終わります!
ぜひ多くの方にお伝えください。