明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1531)玄海原発4号機一次冷却水ポンプ故障は構造的な欠陥がもたらしたもの。十分な対策ができないのだから全ての原発の運転を止めるべきだ!下

2018年05月26日 13時00分00秒 | 明日に向けて(1501~1700)

守田です(20180526 13:00)

玄海原発4号機一次冷却材ポンプの故障に関する解説の2回目です。
九電は問題のこのポンプのNo.2シール部分に再稼働にあたって満水処理を施したが結果的に間違っていたと言っています。しかし原発が作られてからこんなにも経って「そんなことを言い出すのか」という気がします。
問題の箇所は以下です。

「この空気抜きでは・・・新規制基準適合後の初めての再稼働にあたって万全を期すため、4月27日にスタンドパイプベント弁による満水操作を通常よりも長時間実施し、その後、パージ水ライン及びNo.2シールリークオフラインを5月1日まで満水状態で保管した」(九電の以下の報告書の4ページ)

玄海原子力発電所4号機 一次冷却材ポンプのNo.2シールリークオフ流量増加について
平成30年5月 九州電力株式会社
http://www.kyuden.co.jp/var/rev0/0133/0598/gy493slw1n.pdf

つまり再稼働で何か起こってはいけないからと、慎重を期すためにしっかりこの部分を満水にしたと書いてあるのです。
ところが最終的にはこれが間違っていたとされているのです。九電による「原因と対策」の説明で以下のように語られています。

「点検の結果を踏まえ、以下の対策を行います。
1次冷却材ポンプについては、一体型の組立品となっているNo.2シールとNo.3シールを取り替える。
1次冷却材ポンプのパージ水ライン及びNo.2シール水戻りラインを保管する際には、気相部を確保し満水保管としない運用に見直す」。

玄海原子力発電所4号機1次冷却材ポンプシール部の流量増加原因と対策についてお知らせします
平成30年5月15日 九州電力株式会社
http://www.kyuden.co.jp/press_180515-1.html

気相部とはタンクなどに水を入れた際に満水にならない部分、水面から天井までの部分のことを指しますが、これを確保する運用に見直すという。でも再稼働前の準備ではこの部分は「慎重に」満水にしたのです。
ということは、原発完成から今日まで行っていたこの部分の手順が全部間違っていたことになります。加圧水型原発ができてから今日まで、冷却水ポンプの軸受シール部の扱いがずっと間違っていたことになる。
そうなると反対に疑問がわきます。これまでの手順でこの部分で故障が起きなかった例もたくさんあるのですが、どうしてそれらはうまくいったのだろうかという疑問です。

科学や技術にとって大事なのは「再現性」です。ある条件下で起こったことの原因を特定するためには、それが再現できなくてはいけない。同じことが同じように起こりうることが確かめられて、初めて原因が特定できるのです。
しかし同じ条件下で行ったのに、うまくいったりうまくいかなかったりしているというのは、実はまだ原因が付き止められていないことを意味するのです。

そもそもこの部品は何度も壊れている部品です。2016年7月に伊方原発3号機が再稼働に向かっている時はNo.3シール部が今回とは反対方向に圧力を受けて歪み、やはりOリングがかみこんで稼働しなくなってしまって水漏れが起きたのでした。
このときの四国電力の発表を示しておきます。

伊方発電所3号機 一次冷却材ポンプ3B第3シールの点検結果等について
平成28年7月25日 四国電力
http://www.yonden.co.jp/press/re1607/data/pr005.pdf

このときは「原子炉格納容器の耐圧試験が行われ、容器内の圧力があがったため、第3シールが外側から圧力を受けて歪んでしまった」ことが原因とされました。
なんと耐圧試験で壊れてしまったわけです。「テストしたら壊れたのだからアウトじゃないか」と僕は当時も指摘しましたが、それでも伊方3号機は再稼働されてしまいました。もっともその後広島高裁から運転停止を命ずる仮処分決定が出て止まっていますが。

今回、九電は当然にもこの伊方3号機で起こった事態も十二分に検討していたに違いないのです。その結論として徹底的な満水を選んだのでしょう。
ところが今回はそれが原因で壊れてしまったと言う。このことが示しているのは、九電が本当はどうしたら確実に壊れないで運転できるか分かっていないという事実です!

九州電力は故障原因を解明できていない。当然にも完全な対策を施せていない。しかもこの問題は沸騰水型原子炉の再循環ポンプでも起こっていることですから、今後、全国の原発で同じような故障が起こりえます。
いや同じような故障ですめばまだ「幸い」でしょう。高濃度の放射能を含んだ一次冷却水の封じ込めがうまくいかず、原因のつきとめと対策が十分にはなされていないのですから、より深刻な事故に発展する可能性があります。
そんなことにならないためにすべての原発の運転を今すぐ止めるべきなのです。

連載終わり

*****

1次冷却水ポンプのことも含めて、原発の危険性と原発からの命の守り方について高島市でお話します。ご参加下さい。

危ない!福井の原発 命の守り方をつかもう!」
https://www.facebook.com/events/164667064127488/

5月27日(日)
13時30分開場 14時開始 16時終了
場所 高島市観光物産プラザ(JR新旭駅前)視聴覚室
参加協力費 500円

主催
新日本婦人の会高島支部原発ゼロ部
ばいばい原発高島連絡会
連絡先 中平清三(09062421634)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

明日に向けて(1530)玄海原発4号機一次冷却水ポンプ故障は構造的な欠陥がもたらしたもの。同じ故障がすべての原発で起こりうる 上

2018年05月26日 12時30分00秒 | 明日に向けて(1501~1700)

守田です(20180526 12:30)

再稼働を目指している玄海原発4号機で、5月3日に一次冷却水ポンプが故障を起こし、再稼働スケジュールが延期されました。
このポンプは2016年7月に伊方原発3号機再稼働前の点検時にも故障を起こしており、その時に僕はこのポンプでこれまで同様の故障が繰り返されてきていること、にも関わらず故障を繰り返しているのだから「欠陥装置」であることを指摘しました。
この点をまとめたのが以下の記事です。

明日に向けて(1518)玄海原発4号機で故障を起こした一次冷却水ポンプは欠陥装置だ!
https://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/57ced7302c61f901a5ec9750cb3e4fd6
https://toshikyoto.com/press/2677

その後、5月15日に九州電力から今回の玄海4号機での故障に関して以下のような「原因と対策」の説明がなされました。

玄海原子力発電所4号機1次冷却材ポンプシール部の流量増加原因と対策についてお知らせします
平成30年5月15日 九州電力株式会社
http://www.kyuden.co.jp/press_180515-1.html

これを読んでみてますます一次冷却水ポンプが欠陥装置であること、場当たり的で再発防止策がまったく不十分にしか説明されていない(それしかできない)という印象を持ちました。
以下、説明を試みたいと思います。九電が示した図を参照しながらお読み下さい。

玄海4号機 一次冷却材ポンプ
http://www.kyuden.co.jp/var/rev0/0133/0597/t6bxfbhh.pdf

そもそもこのポンプと言われる装置、150気圧300度で流れている一次冷却水の中にプロペラを仕込んで回し、水流を促す役割を果たしているものです。
プロペラを回すためにモーターが必要で、その軸が循環している一次冷却水の配管にいわば直角に差し込まれ、その先でプロペラが回されて冷却水が攪拌されているのですが、このモーターの軸の部分がシールドを施す上での弱点になっているのです。
なぜかというとモーターの軸が回転可能なためには当たり前のことですが軸受け部に隙間がなくてはなりません。しかし一次冷却水は150気圧ですので、このわずかな隙間に高圧の熱湯が押し寄せて冷却水漏れが起こりやすいのです。

この「隙間がなくてはならないけれども隙間があると高濃度の放射能を含んだ一次冷却水があがってきてしまう」という矛盾の解決のために編み出されたのが、一次冷却水よりもっと高圧の水をこの隙間部分に流してシールすることです。
それもシールを3重にすることで抑え込もうとしているのですが、そのためにシールになる水が通る場を囲む「シール部」と呼ばれる部品が作られていて、流れに合わせて上下に動くようにしています。しかし端的にここが技術的に未確立なのです。

今回、玄海4号機で壊れたのはNo.2シールでした。しかも4つある冷却水ポンプのうちの2つで同時に壊れてしまいました。いや分解してみたところ、もう1つも水漏れには至らなかったけれど不具合が生じていました。4つのうち3つが壊れていたのです。
原因はなんだったのかというと「稼働を前にこの部分に空気が残らないように水を充てんしていたところ、水の温度が25度から28度に上がったため体積が膨張してしまい、可動部分の「シール部」が押し上げられ、Oリングが上部にかみこんでしまった。
このため本来可動すべき部分が動かずにシール部の下部が開いたままになっていて、No.1シールに流している「注水」がNo.2シールの方に入ってきて流量が増えてしまった」と言うのです。
「たかだか水温が3度あがっただけでもう壊れてしまうシール部とはそれ自体でもう欠陥部品じゃないか」とも思いますが、しかしさらに九電の報告を読み込んでいくともっと不可解なことが出てきます。

続く

*****

1次冷却水ポンプのことも含めて、原発の危険性と原発からの命の守り方について高島市でお話します。ご参加下さい。

危ない!福井の原発 命の守り方をつかもう!」
https://www.facebook.com/events/164667064127488/

5月27日(日)
13時30分開場 14時開始 16時終了
場所 高島市観光物産プラザ(JR新旭駅前)視聴覚室
参加協力費 500円

主催
新日本婦人の会高島支部原発ゼロ部
ばいばい原発高島連絡会
連絡先 中平清三(09062421634)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする