明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1836)2つの7.16=トリニティ核実験・チャーチロックウラン鉱滓(スラグ)汚染水漏れ事故の日にむけて

2020年06月27日 11時00分00秒 | 明日に向けて(1701~1900)

守田です(20200627 11:00)

【お知らせ】本日27日午後1時半より、京都市の聖護院門跡で原発と新型コロナについての企画が行われます。
元福井地裁裁判長・樋口英明さんとご一緒します。ぜひご参加下さい。Zoomでの視聴も可能です。
詳しくはイベントページをご覧ください。当日ですので、Zoomアドレス・パスワードも公開しています。
https://www.facebook.com/events/1735196226633686/


トリニティ核実験から75年・・・

7月16日は核にまつわる大きな日です。二つの大きな事件が起こった日だからです。しかも同じ、アメリカ・ニューメキシコ州で起こりました。
一つは1945年7月16日、ニューメキシコ州のソコロとアラモゴードに挟まれた米軍の射爆場で起こりました。人類史上、初めての核実験でした。
使われたのはガジェットと命名されたプルトニウム型の核爆弾でした。のちに長崎に投下したものと同型で、長崎空襲のための実験でした。

爆発が起こったのは16日の未明。目撃した住民は「大音響とともに地上から太陽が現れた。この世の終わりがきたと思った」と語っています。
しかし極秘に計画を進めていた米軍は、すぐに火薬倉庫の爆発事故と発表。周辺の多くの住民が、何も知らされないままに、大量に降下してきた放射性物質によって被曝しました。
その点で、トリニティ核実験は、人類史上初めて核爆発による被害を人々にもたらしたものでした。核兵器の被害は広島が最初ではないのです。最初はトリニティなのです。

しかもこの爆弾、地上30メートルの鉄塔の上で爆発させたため、地表の泥を大量に巻き上げ、それに放射性物質がついて、近郊に大量に落ちたために住民への被害をより大きくしました。
米軍はこの経験から、後の核実験を空中投下で行い、放射性物質を大気中に拡散させるようにしましたが、もちろんそのことで、被害を世界大に広めただけでした。
その後、周辺住民から次々と重篤なガンが発生しました。被害は次世代にも及びました。しかしアメリカは長きにわたって加害責任を認めていません。2014年9月より、ようやく米国立がん研究所(NCI)の調査が始まりましたが・・・。


トリニティサイト近くの看板 守田撮影

チャーチロック・ウラン鉱滓汚染水漏れ事故から41年・・・

もう一つの7月16日の事故は1979年に起こりました。ナバホ・ネーションのチャーチロックにあったウラン精錬工場から発するウラン鉱滓(スラグ)を含んだ汚染水を大量に貯めていたダムが決壊したのでした。
ウランやさまざまな岩石のカス、また精錬に使用された強酸などの薬剤が混じったとても危険な汚染水は、周辺に住んでいるナバホ・ディネの方たちが生活水を採っているプエルコ川に流れ込み、被害を拡大しました。
この事故の背景をなすのは、1944年、原爆製造計画=マンハッタン計画が動いている時に、ナバホ・ディネ、そしてホピの「居留地」から次々とウラン鉱が発見され、発掘されだしたことです。

広島・長崎に投下された原爆に使われたウランは、ベルギー領だったコンゴやカナダから持ち込まれたものでしたが、ニューメキシコでのウラン発掘は、第二次世界大戦が終わり、ソ連との核兵器を向き合わせての「冷戦」が始まるや、どんどん拡大、1000以上もの採掘場が作られ、精錬工場も建てられました。(今はほとんどが廃坑)
そこで劣悪な労働に従事したのも、多くはナバホ・ディネの方たちでした。そんな中で起こったのが、1979年の大量のウラン精錬工場から出た汚染水の川への流出でした。
1979年というと何かに気づかれる方もおられるのではないでしょうか?そうです。この年はスリーマイル島原発事故の年です。このためチャーチロックの事件もさぞや注目が集まったかと思いきや、そんなことはなかった。先住民族の地だからでした。

この点で、チャーチロックの事故は、先住民族の地からウランをかってに掘り出し、採掘労働や精錬などさまざまな過程で、周辺環境を汚染し、人々を被曝させてきたことの連なりの中で起こったものでした。
ここから私たちがおさえなければならないのは、核爆発による最初の被害が起こったのはトリニティ実験であるけれども、それより先に、ウラン鉱の採掘で人類初の核被害が起こされていたということです。
しかもナバホだけでなく、他国のウラン鉱も含めて、被害の多くは各地の先住民族の方たちが受けました。このウラン鉱とトリニティの被害のあとに、広島・長崎での凄惨な大虐殺と、放射線による世代を越えた加害が行われたのでした。


チャーチロックウラン汚染水漏れを批判する40周年集会・デモ 守田撮影


ふたつの716に参加して

昨年、僕は7月と11月にアメリカに訪問しました。「核の終わりを探る旅」でしたが、7月に二つの716関連の企画に参加することができました。まずはチャーチロックでの40年目の抗議・批判の集会に参加しました。
集会場そのものが二つのウラン鉱山跡に挟まれていましたが、そこからデモがなされました。約200人が歩き、精錬所があった方角を向きながら運動の代表の方の話を聞きました。
その後、集会場に戻り次々と発言が続きました。それぞれの発言が印象的でしたが、ナバホ・ディネの方達が様々な健康被害の元に今も苦しんでいることが、とても深く胸に響いてきました。

その後、トリニティサイトの企画にも参加することができました。チャーチロックの集会で出会ったロンさんの車に、ニューヨーク在住のアーティスト、田中康予さんとともに同乗させてもらい向かいました。
サイトの南にあるアラモゴードの町で住民集会に参加。参加者が次々とガンなどの被害、家族の死を語る圧巻の集会でした。僕はそこで京都「被爆2世3世の会」のメンバーとして発言しましたが、ものすごく熱い拍手で迎えられました。
その後、犠牲者を追悼するビジルに参加しました。小さな野球場の内野守備位置あたりに、犠牲者の名を書いたペーパーバックが並べられ、中にあるろうそくに火が灯されました。夜になると鐘の音と共に、一人一人の名が読み上げられました。

二つの716企画に参加して、「ああ、ここにもこんなに核の被害者がいる。ヒバクシャがいる。この人々と共に歩んで、この悲惨な時代を越えていきたい」と強く思いました。
同時に「この中からこそ、新たな時代をみんなで豊かに作りだしていく新たな「愛」もまた生まれるのだ」とも思いました。そうなのです。核の被害、悲しい痛みをシェアし、その中で私たちの心を温めて愛を育む中でこそ未来が見えるのです。
ぜひこの流れを強めていきたい。これを読んでいるみなさんにも参加していただきたいです。


アラゴモードでのビジル 犠牲者の名前が書いたペーパーバックに灯をともして 守田撮影


今年のふたつの716に向けた企画を立案中です!

今年もまたふたつの716の日がやってきますが、そのときにぜひ企画を行いたいと考えい、思案中です。
一つに京都「被爆2世3世の会」で7月16日午後6時より街頭での宣伝を行いたいと思います。アメリカでは朝の5時ごろ。ちょうど75年前にトリニティでの爆発が起こされた時間帯です。
「トリニティの日に企画を」とミーティングで決めたのですが、僕はそこにナバホ・ディネの方たちへの連帯の意味も込めることを再度、提案しようと思っています。これをビデオ収録し、アラゴモードとナバホ・ディネの方たちに送りたいです。

もう一つ、昨年の二つのアメリカ訪問の旅に僕を誘って下さった、玉山ともよさんと、ニューヨークにいる田中康予さんとで、ネット上での何らかの企画をと考えています。
3人それぞれが簡単なプレゼンを行い、現地の方たちからもコメントをいただくかたちで進めようと思っています。こちらも2つの716にしっかりと焦点を当てます。
これらも録画も行い、リアルタイムだけでなく、多くの方たちに見てもらいたいと思っています。

そして何らかの形で、これらの企画を今年の広島の日、長崎の日に反映させていきたいと思っています。
広島・長崎の惨劇に心を痛めている多くの方たちに、先にウラン鉱の発掘があり、トリニティの核実験があったことを知っていただきたい。わがこととして、そこの犠牲者の痛みをシェアしていただきたいと思うからです。
悲しみを集めるのは辛い作業でもあるのですが、しかしその中でこそ、新たな何かが生まれると僕は確信しています。どうかご協力ください!


家族の犠牲者の写真と名前を貼りだした方と共に 田中康予さん撮影

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