明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(2053)あらためて美浜原発3号機再稼働に反対します。あまりに危険だからです。

2021年06月23日 10時00分00秒 | 明日に向けて(2001~2200)

守田です(20210623 10:00)

危険極まりない美浜原発3号機が午前10時に再起動されました。余りに危険なので再度、反対の声をあげたいと思います。
これまで3回、美浜3号機の危険性を指摘する論を掲載してきましたが、強行された再稼働に抗議しつつ、あらためて危険性をまとめておきます。

美浜3号機は老朽原発 脆性破壊の危険性がある

美浜原発3号機が危険なのは、この原発が1976年3月(関電HPには12月と記載)から運転開始された老朽原発であることです。
老朽化した原発で懸念されるのは中性子による照射脆化という現象が進んでいること。圧力容器の鋼材がねばり気がなくなり、ガラスのように割れてしまう可能性が高まっていることです。

実はこのことは関西電力も認めています。その上で再稼働にあたり舞鶴市で配った関電広報で、ねばり強さの低下は「中性子線を浴びる量が多くなるほど影響が穏やかになっていく」「今後、急激に低下することはない」と述べています。
しかしそこに掲載された図にも、運転開始後、急激にねばり強さが減ってきたこと、穏やかになったといっても今も一貫して減っていることが示されています。すでに大きくねばり気が減っている。これが脆性破壊の危険性をもたらしているのです。

 

美浜3号機は過去に5人死亡6人重傷事故を起こしながら、責任追究がなされていない

この原発が危険なのは、2004年に二次系配管の破断事故を起こし、直下にいた関連会社社員が140度の蒸気を浴びて4人が即死、1人が後に死亡、6人が重傷という事故を起こしながら、原因をきちんと追究してないことにもあります。
事故は原子炉格納容器の外を走っている高熱の蒸気をタービンに運ぶ配管の直下で起こりました。運転開始から30年近く、まったく点検されておらず、配管の減肉が進んで破断してしまったのでした。

しかし事前に減肉が進んでいることは把握されていたのでした。点検を担当した子会社が事故の前年の2003年に、この配管の点検が漏れており、減肉が進んでいることを報告していたのです。しかし関電がこの報告を握りつぶした。
運転を止めたくなかったからです。さらに定期点検でも停止期間短縮のためにタービンを止めずに危険を指摘されていた配管の下に作業場を作り、死傷事故を起こしたのですが、これが明らかになったのは15年後。責任追及がなされてません。

 

10年間止めていた原発を動かすこと自体が無謀

さらにたったいま始まろうとしている再稼働は、2011年5月14日の停止以来、10年以上経ってのこと。こんな長期間止めていた原発を動かすのは、世界で初めてのことです。
原発に限らず機械は長く停めていたら動きが悪くなります。10年停めていたら、動かなくなってしまうものが多い。原発も同じです。

実際、2018年3月23日に7年3カ月ぶりに再稼働し、30日に蒸気漏れ故障事故を起こした玄海原発3号機に対し、当時の九電瓜生社長がこう述べました。
「再稼働については6~7年間止めているので何があるか分からないと言っていたのが、現実になってしまって非常に残念です」。今回も同じ。何があるか分からないのです。だから人員を通常に2倍にしたそうですが、動かすことが間違っています。

 

特定重大事故等対処施設なして再稼働

美浜原発3号機が、新規制基準を満たしてないのに動かされようとしていることもひどい。新規制基準で設置が義務付けられた「特定重大事故等対処施設」が完成していないのです。
この中には過酷事故対策としてのベントの設置や、緊急時対策所などが入っています。これがあれば安全ともとても言えないものですが、しかし規制当局が決めたことも守っていない。

これはこの規制の酷いカラクリのせいでもあります。新規制基準は2013年7月に施行されたのに、加圧水型原発を早く再稼働させたかった国と規制委員会がこの設備の設置に5年の猶予を設けてしまったのです。
その期限も2018年7月に出来れたのに、さらに期限が「本体施設工事認可後5年」に伸ばされてしまった。美浜3号機の今年の10月25日です。動かしてもこの日には停めざるを得ないのにこの設備なして無理に動かしだしたのです。

 

美浜原発は蒸気発生器という致命的欠陥を抱えている

これは美浜3号機に限らないことですが、関電の美浜、大飯、高浜原発、さらに九電の川内、玄海原発、四電の伊方原発、北電の泊原発はいずれも「加圧水型原発」です。
この原発は炉内の一次冷却材をそのままタービンには送らず、「蒸気発生器」で熱を二次冷却材に移して蒸気を発生させてタービンを回していますが、この蒸気発生器が故障事故を何度も繰り返しています。

一次冷却材は157気圧325度の圧力の高い熱湯であるため、熱交換している部分の配管が厚くなければならないのですが、熱を移すためには薄い方がいいという矛盾をかかえていてここが技術的にかわせない。
このため細管にピンホールができるなどの故障が何度も起こっており、その度にダメになった配管に栓をして対処していたものの、あまりに頻度が高いので、もともと予定になかった交換をするようになりました。そのため格納容器が弱くなっています。

 

美浜2号機で破局寸前の事故も起こってます。

美浜原発ではすでに廃炉が決まった2号機で、蒸気発生器の細管が破断し、一次冷却材が二次系に55トンも漏れ出す深刻な事故も起きています。
冷却剤が一気に抜け出したので、炉心がメルトダウンしてしまう可能性があったのです。このため非常炉心冷却装置が働き、注水も行いましたが、蒸気を排出したり、加圧を下げる弁がなかなか開かずに危機一髪でした。

この事故が示したのは、加圧水型原発では、一次冷却材が加圧されているので、事故あればすぐに冷却材がなくなる可能性があるということ。設定されていた安全対策の弁もうまく作動しなかった。
しかも蒸気発生器の故障が、新品になってもまったく収まらないので、いつまた同じことが繰り返されるかも知れません。蒸気発生器という致命的欠陥をかかえた加圧水型原発は動かすべきではないのです。

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