明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(2058)美浜3号機不具合発生、しかもポンプフィルター目詰まりは非常時を想定した試験への不合格を意味している

2021年07月05日 12時30分00秒 | 明日に向けて(2001~2200)

守田です(20210705 12:30)

再稼働後すぐに不具合が発生、関電は問題は解決したとしているが・・・

6月23日に関西電力によって再稼働が強行された美浜原発3号機、29日に送電を開始し、3日にフル稼働の試験を行う予定でしたが、2日に不具合が発生し、フル稼働が1日延期されました。
問題が起こったのは、非常時に蒸気発生器に注水するためのポンプ。正確には「タービン動補助給水ポンプ」といいます。この配管の圧力が低下したのでした。

点検を行ったところ、ポンプのフィルター(ストレーナー)に鉄くずが詰まっていたそうです。関西電力はこれを配管内で発生したサビとしつつ除去し、問題は解決したとして、予定より1日遅れの4日午後に3号機をフル稼働させました。
今後、7月27日に営業運転を開始する予定と発表していますが、いろいろな疑問が沸きました。

とくに大事なのは、そもそもなんで非常用の注水ポンプが動いたのか。かつまたそのポンプのフィルターにつまっていた鉄くずを除去したら、問題解決となるかです。
この点を精査していて、重要な点が見えてきました。


美浜3号機での不具合の発生を報じる毎日新聞


問題は非常用ポンプの試験過程で起きた

調べてみて分かったのは、この不具合が非常用設備の試験過程で起きたことです。
以下のNHKの報道(5月13日)から分かりました。

40年超の美浜原発 事故想定し非常用ポンプ動かす試験行う方針
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210513/k10013028321000.html

NHKはこう説明しています。「福島第一原発の事故では、1号機に原子炉を冷却する「非常用復水器」と呼ばれる設備がありましたが、事故が起きた条件で試験をすると、万一の故障で放射性物質が漏れるリスクがあるため長期間、本格的な動作試験がされず、これが現場の理解不足につながり事故が拡大したとの指摘があります。このため、原子力規制委員会は事故を想定して、安全系の設備が実際に動くかどうかの試験を電力各社に求めていました。」


非常用ポンプの試験予定を報じるNHK

関電などの発表の鵜呑みの報道ですが、これでは正しくないし、事態の本質に迫れていない。なぜならこの設備は過去に稼働し、途中で止まった経歴があるものだからです。


美浜3号機配管破断事故(2004年)の時にこのポンプに不具合

美浜3号機は2004年に二次系配管断裂という深刻な事故を起こしています。定期点検を急ぐため、まだタービンが回っているのに建屋内に入った下請け会社の方たちに、140度の蒸気が降り注ぎ、5名が亡くなり、6名が重傷を負いました。
同時に二次系冷却水が大量に漏れ出したために一次冷却水が冷やせず炉心が高温化、メルトダウンに向かってしまいました。

これへの対応は蒸気発生器に注水して一次冷却水の熱をとることにつきるのですが、配管破断で水がこなくなり給水ポンプはうまく動かず。
このとき「復水タンク」につながった電動の補助給水ポンプと、このタービン動補助給水ポンプが稼働しました。後者は電源が喪失してもタービンの動きで回り続けるように設定されたものです。


2004年の配管破断事故の説明図 ただしここには補助給水ポンプは図示されていない

この電動とタービン動の補助給水ポンプが動いたことで、美浜3号機は炉心の冷却が可能となり過酷事故を免れたのでした。
しかしその後、電動補助ポンプの注水量が十分だとしてタービン動補助給水ポンプはバルブが閉じられたのですが、続けて待機状態に移行しようとしたものの、3台のうちの2台のバルブが開かず給水可能にできませんでした。重大な不具合でした。


同ポンプは2004年1月に伊方原発1号機でも白煙をあげる故障事故を起こた。図は四電が釈明に使ったもの


今回もいざとなった時にきちんと動かない可能性こそが示された!

これに対して関電はバルブのバネを強いものに替えることで対処しました。しかしその後、この設備は稼働したことがありません。恐らくはテストもされず、約17年ぐらいが経っているのだと思われます。
今回の試験は、この2004年の悲惨な経験や、タービン動補助給水ポンプの重大な不具合を踏まえ、いざとなった時に、きちんと動くのかどうかを確認するためのものでした。

結果はどうだったか。今度は違う要因で不具合を起こし、想定通りに動かなかったのです。その原因がフィルターの目詰まりとされていますが、大事なのは美浜3号機が非常事態を想定しての試験に合格できていないことです。
この場合、目詰まりしたものを除いたら解決でしょうか?断じて否。そもそも関電はこれを配管内でできたサビだとしていますが、もしそうなら、今回の試験ですべてのサビがはがれたとはとても考えられない。

サビがまだ残っていれば、本当の非常時にも再び目詰まりしてポンプ圧力が低下し、必要な給水ができなくなってしまう可能性が高い。そうしたら今度こそ、メルトダウンに至ってしまう。
美浜3号機は、これを見ただけでも深刻な問題だらけ。運転を継続してはなりません。営業運転への移行などもっての他です。直ちに停めよ!の声を上げ続けましょう。


二度と深刻な事故を起こさせないために(2004年の事故を報じるテレビニュース)

#美浜原発3号機 #老朽原発 #蒸気発生器 #タービン動補助給水ポンプ #配管破断事故 #一次冷却水 #二次冷却水

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