明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(430)直視すべき、4号機燃料プール崩壊の可能性

2012年03月19日 23時30分00秒 | 明日に向けて(401)~(500)
守田です。(20120319 23:30)

この間、僕はこの「明日に向けて」の紙面上で、4号機プールの崩壊の可能性
とその破局的な危険性について触れてきましたが、こうした内容をきちんと
報道したテレビ番組を見つけました。以下から見れますので、ぜひご覧になっ
て下さい。また周りの方にも勧めてください。7分37秒の映像です。なおタイ
トルはユーチューブにつけられていたものです。

小出裕章:4号機燃料プールが崩壊すれば日本は"おしまい"です
http://www.youtube.com/watch?v=CezLuBZqd8U&feature=youtu.be

この4号機の危険性について、小出さんは一環して主張してこられました。
とても大切な警鐘を鳴らし続けてくださっていることに感謝の念を感じます。
同時にこのことを単なる「杞憂」に終わらせず、現実的な対応・・・避難訓
練などに結びつけていきたいと切に思います。そのためにもまずはこの現に
ある危険性を、繰り返し周知徹底していく必要があります。


これに関する別の情報もご紹介したいと思います。『週刊文春』3月15日号に
掲載された「東京に『戒厳令』発動 極秘作戦書を独占入手!」という記事
です。昨年3月14日から16日にかけて菅政権が、福島原発の格納容器の崩壊
など「最悪の事態」を覚悟したことが「事故調査委員会」の報告でも明らか
になっているわけですが、このとき、実は自衛隊が極秘作戦をたてて実行に
向かっていたというものです。

しかもこの作戦は「菅首相のリーダーシップによって『最悪のシナリオ』へ
の備えが行われたのではない。折木統幕長の『オレの責任で作る』という言
葉によって、”決死の作戦”がきまったのである」とされています。週刊
文春によれば自衛隊の単独行動だったことになります。

ではその作戦とはどのようなものだったのでしょうか。まずフェーズワンで、
原発サイトから東電社員や作業員を救出することが書かれています。仙台に
スタンバイしているヘリコプーターチヌークが「決死隊」として現場に急行。
これと連動して戦車や装甲車を動かし、ショベル式のステップで作業員を
拾い上げ、ヘリのキャビンに放り込むという作戦です。

フェーズツーでは、陸海空の自衛隊が福島全域での避難作戦を実施。優先的に
原発から半径50キロ圏内で、自力避難できない住民を輸送支援。任務部隊は
中央即応連隊と第一空挺団を選定。避難民の除染は行わず、避難を優先する
とされています。

さらに「あらゆる輸送支援車を活用し、まず、郡山と福島駐屯地へ緊急輸送
支援を行い、さらにそこから宮城県、栃木県、千葉県の駐屯地への後方避難
輸送支援を図る。海上自衛隊と航空自衛隊は輸送機、ヘリポートをフル動員。
海上自衛隊は、護衛艦「ひゅうが」を含む全艦出艦命令を下す」のがこの
段階での作戦内容です。

フェーズスリーでは、「原発1号機から4号機までの原子炉で連鎖的な不測
事態が起き、対処不能となり、さらに膨大な核放射性物質の拡散の蓋然性
が高くなったとき、原発から半径250キロ圏内の治安維持活動を行う。その
範囲は、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉各県の全域と、神奈川県横浜市の
一部、さらに東京23区全域と多摩地区の一部を含む」とされています。
「週刊文春」は史上最大の避難作戦とこれを評していますが、しかし同誌
が入手した資料には、「治安維持活動」と書かれていることが気になります。

さらにフェーズフォーでは、「決死の石棺作戦」も明記されています。決死
隊を組織し、コンクリートで崩壊した原子炉の封じ込めを行うというのです。


これらを読んで思うことは、いずれもまったくの「絵に書いた餅」に過ぎな
いということです。これだけの大規模な作戦が、事前通告も、演習もなしに
円滑に行われるはずがないからです。しかもこれらの計画は放射線防護の専
門家抜きに急ごしらえで作られています。その意味で実現性の非常に薄い
作戦です。

当時はそれでもいざとなればやらねばならないと計画されたわけですが、幸
いにしてもその発動をまぬがれた今日、なさねばならないのは、こうした広
域の計画をもっと公開してきちんとたて、準備を重ねることです。

特におさえておくべきことは、実際の事故対処では、明らかに自衛隊よりも
東京消防署のハイパーレスキュー隊などの冷却作業の方が、目に見える成果
を上げていたことです。あれがあったからこそ、とりあえずはここまでの
広域避難はしなくても良かった。しかしそれと引き換えに、レスキュー隊の
隊員たちも自衛隊員もかなりの被曝をしてしまいました。被曝の備えなど
まったくなかったからです。

だとするならば、自衛隊の密室的な計画ではなく、消防隊や警察隊を広範に
動員し、作戦計画を作るべきだし、その際、放射線の高い地域に投入される
自衛隊・消防隊・警察隊の放射線防護をいかに行うのかを検討すべきです。
放射線防護を施した消防車や救急車を作る必要があります。今回もそれが
あったらどれほど隊員たちが守れたことか。またその分だけ作業が円滑に
進んだはずです。

そうしたことからはじまり、民間のさまざまな力も活用する相当の作戦計画
を立て、そのための装備を拡充し、訓練を積む必要があります。そもそも自
衛隊だけで運搬できる人員など圧倒的に少数です。民間のさまざまな力が
結集しないと、これだけ大規模な避難などできるわけがない。だからこそ、
一般市民にこうした内容を公開し、準備を進める必要があるのです。

これはどんなにお金をつぎ込んでもやる必要があることです。東日本崩壊、
いや日本崩壊への備えだからです。国民・住民の生命が大規模に危機にさら
されるもっとも蓋然性の高い事態だからです。それすらせずに、さしあたっ
ては可能性のない戦争への備えを続けるのはあまりに愚かなことです。

これに対して、「そんな最悪の事態など起こらない」と決め込んでしまうのは、
3月11日以前に私たちが戻ってしまうことを意味します。あの大震災の前から、
それこそ小出さんや広瀬隆さんなど、少数の方たちが、原発地震災害、津波
災害の危険性を訴えていたわけです。それを取り入れて対処をなしていたら、
今日の私たちのこの苦しみもなかったわけです。

それと同じことが今も言えるのです。4号機のプール崩壊の可能性を直視し、
それへの備えを作り出すこと、この困難な作業から逃げ出さないことこそが
最も大事です。

にもかかわらず、政府は「冷温停止宣言」で、この壮大な責任から逃れよう
としています。対処するのがあまりに困難なので、「ないことにしてしまう」
対処をとっているのです。これではいざとなったとき、再びただ右往左往す
るばかりで、避けられるべき多くの被害が避けられなくなってしまいます。

最低でも市民レベルで、4号機崩壊の可能性をしっかりと見つめ、同時に、
それぞれの原発サイトで、今回のような被害が出る可能性も見つめていきま
しょう。そうして原発災害への対処の学習会を持ち、見識を増やし、準備を
行なっていきましょう。そしてその連なりの中から少しでも行政を下から
動かしていきましょう。そのために紹介した映像等を活用していただけたら
と思います。

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