守田です。(20151004 23:00)
バングラディッシュで日本人が殺害されたという痛ましい報が飛び込んできました。ISを名乗る「犯行声明」が出され、さらなる攻撃予告もされているとのことです。
亡くなられたのは星邦男さん(66)。農業関連のプロジェクトに関わられていたそうです。星さんのご冥福をお祈りするとともに、殺人を行ったものに対して心からの怒りを表明します。
同時にこのように在外邦人の危機をどんどん拡大している安倍政権の戦争政策への心からの怒りも表明したいと思います。
重要なニュースなので朝日新聞の記事と日経新聞の記事を転載します。
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日本人射殺、「IS」名乗る犯行声明 バングラデシュ
朝日新聞 ニューデリー=貫洞欣寛 2015年10月4日03時00分
http://www.asahi.com/articles/ASHB40HQNHB3UHBI01F.html
バングラデシュ北西部で日本人星邦男さん(66)が3日午前、何者かに撃たれて殺害された事件で、インターネット上に、過激派組織「イスラム国」(IS)を名乗り、犯行を認める声明が出た。真偽は確認されていない。
現地警察当局は「まだ内容は確認できておらず、作業を進めている」としている。
バングラデシュでは9月28日に首都ダッカで援助団体員のイタリア人男性が撃たれて殺害され、ISを名乗る犯行声明が出ており、いずれも事実とすれば、IS名義の犯行声明が出るのは、この1週間で2件目となる。(ニューデリー=貫洞欣寛)
邦人男性、銃撃受け死亡 バングラデシュ北部
日経新聞 2015/10/4 2:03
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO92443130U5A001C1000000/
【ニューデリー=共同】バングラデシュの警察によると、同国北部ランプル近郊で3日午前、日本人男性が何者かに襲われ、銃撃を受けて死亡した。在バングラデシュの日本大使館が現地に職員を派遣、確認を急いでいる。
現地メディアや地元警察は、旅券などに基づき、男性は岩手県が本籍の星邦男さん(66)だと明らかにした。
警察によると、男性は農業関連のプロジェクトに携わっており、8月下旬に入国、首都ダッカから北西に約200キロ離れたランプルの近郊にある友人宅に滞在していた。
3日、ランプル近郊を歩いていた際、バイクに乗った複数の男が発砲、胸などを撃たれたという。
バングラデシュでは9月28日、ダッカで援助関係者のイタリア人男性が銃で殺害された。過激派組織「イスラム国」(IS)を名乗るグループが犯行声明を出したとされるが、当局は確認していない。
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戦争法の強行可決を受けて、僕は「在外邦人の危機が高まっている」という記事を連投しました。9月25日、26日のことです。
海外におられる方に注意喚起をするとともに、こうした危機を前に、戦争法反対の声をみなさんと強めていきたいと思ってのことです。
今回の事件についてはISが行ったかどうかの真偽がはっきりしていないとのこと。バングラディッシュ政府は国内にISの存在は確認されておらず、ISに同調するイスラム勢力の「犯行」ではないかとみていると発表しています。
詳細は不明ですが、この攻撃が多くの人々が心配していたものである可能性は極めて高いです。こんなにも早く危機感を抱いていたことと思われることが起こってしまい、胸が痛むばかりです。
以下、9月末に危機の高まりを懸念して書いた記事をご紹介しておきます。
明日に向けて(1157)在外邦人の危機が高まっている!上
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/59d72310ff08d1aa51f8ebe52e02cc55
http://toshikyoto.com/press/2042
明日に向けて(1158)在外邦人の危機が高まっている!下
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/fe8c341e3989f366a26d85dceba1e129
http://toshikyoto.com/press/2046
こうしたときに私たちは、バングラディッシュの様子を少しでも知ること、バングラディッシュの人々の感じ方などを知る必要があります。
その中で私たち自身の命を守る同時に、どうすれば世界が平和な方向に歩めるのかを考察し、行動する必要があります。
ご紹介した朝日新聞の記事にも書かれているように星さん殺害の前、9月28日にもバングラディッシュでイタリア人が殺害され、ISが実行声明を出していました。
この時、僕の友人で、お連れ合いがバングラディッシュで働いている女性が、あるところに以下のような文章を投稿しました。ご本人の承諾を得たのでここに転載させていただきます。
今回の星さんの殺害ではなく、その前に、イタリア人の殺害を受けて書かれた文章であることにご留意ください。
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ついに、父さんが一年の8ヶ月を過ごすバングラデシュでも、ISが関わる殺人が起きてしまった。
それもダッカで一番セキュリティが厳しいといわれるグルシャンで。
一番恐れていたこと。
安保法案が成立して、(←本当はあんな国会運営で議事録も残っていないのに成立したとはいえないけど。)、
戦争より、徴兵より、大学で兵器の研究が始まるより、兵器を輸出できることよりなにより、父さんのように、イスラムの国で働く人や政府関係者、NGOの人、ボランティアの人たちに真っ先に矛先が向けられるだろうと思っている。
すでにISでは、日本人の殺害指令が出ているみたいだし。
バングラデシュはとても親日で、日本が開発援助で作った橋や学校をとても喜んでくれている。NGOもたくさん入って活動している。
そして、原爆を落とされてもここまで成長した日本をとても尊敬していたりする。
アメリカに対しては、中東などでのイスラムの国々に対する横暴に怒っている。アメリカが何故それを行っているのか、アメリカの都合のよい報道しかされていない日本よりも、バングラデシュの方がちゃんと本質をわかっていると思った。
最近は中国と韓国の援助でできた橋や学校、ビルなどがびっくりするくらい増えてるけど。
でも、2年前に行った時も、なぜ日本は原爆を落としたアメリカと手を組むのか、と聞かれた。
たとえ後方支援であっても、そのアメリカと一緒に戦うことができるようになったんだから、ISだけでなく、バングラデシュの人たちの日本への信頼も薄れていく。
安保法案の成立がどんな影響をもたらすのか、imagineできますか?
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僕がとくにぐっと来たのはバングラディッシュの方たちがとても親日的だとこの方が指摘していることです。原爆を落とされてもここまで成長してきた日本を尊敬してくれている。これはイスラム世界に共通することです。
これに対してイスラム圏に理不尽な戦争を繰り返してきたアメリカはとても嫌われている。「なぜそんなアメリカと組むのか」というのがイスラム圏で大変強い懸念です。この懸念が今、尊敬を薄め、疑いを強め、怒りに変わりつつある。
この流れは戦争法成立で始まったのではありません。
2001年からのアフガン戦争に自衛隊が協力し、イラク戦争ではサマワに自衛隊が進駐しました。その頃からだんだんに疑義が起こり、尊敬が薄まりだし、怒りが膨らみ始めました。
それをさらに大きくしたのが本年年頭の安倍首相の中東訪問でした。どうみてもIS攻撃参加国への後方支援としか見えないような援助を行ったため、ISが日本を十字軍指定し、後藤さんと湯川さんが殺されてしまいました。
今回の戦争法の成立はこの一連の流れに拍車をかけるものです。さらにスーダンにPKOで派遣されている自衛隊が「駆けつけ援護」でイスラムの人々を殺傷することがあればさらにこの危機は深まります。
私たちは今、このマイナスの流れに対してもう一度逆の方向にイスラムの人々の思いが向いていくための努力をしなければなりません。
その第一は、何よりもイスラムの人々を手酷く傷つけ続けているアメリカの戦争政策の非道性を批判することです。私たちがアメリカの暴力を肯定などしていないことをはっきり示すことが大切です。
この間、世界で一番ひどい暴力を繰り返しているのはアメリカです。イラク戦争では「大量破壊兵器をイラクが隠し持っているから」といういいがかりで、それこそ大量破壊兵器を大量使用した攻撃を行ったのです。
世界を混乱させているのがアメリカの暴力です。このことをこそ私たちははっきりさせること、同時に日本人がそのことに気付いて行動していることを世界に示すことが必要です。
第二に、この点を踏まえつつ、アメリカの暴力に全面的に加担しようとしている安倍政権を倒すための運動を強化することです。
そのためには選挙も大事ですが、街頭行動、デモの継続もとても大事です。We are not Abe!という私たちの主張が世界に響き渡るようにしなければなりません。
戦争法反対、戦争に向かう安倍政権を許さないという声を、ありとあらゆる手段を通じて高めていきましょう!
そのことを重ねる中でこそ、安倍政権とは対立して存在している私たち日本民衆への世界の信頼を取り戻していきましょう。
僕はこの行動の中でこそ、在外邦人だけでなく、私たち日本に住まうもの全体の安全性が守られていくと僕は思うのです。
同時に日本に住まう私たちだけでなく、イスラム圏の人々、同時に戦争に駆り出されているアメリカの若者たちの命を守ることも考えた行動に起ちましょう。
この混乱の中でこそ、世界に憲法9条の心を広げるために頑張りましょう!
戦慄しましたね。
60年安保の時代と今は、全く瓜二つなんです。
その当時も、9月17日に私たちがテレビで見たのと同じ光景が、国会で行われていた。
この「強行採決」に対して、丸山眞男は、怒りを込めて文章を発表しました。
今、9月17日のあの「暴力」に対し、怒りを込めて、強い主張を込めて、自分の考えを発表し、市民たちの共感を得ているジャーナリズムがあるでしょうか?
今は、ネットという「公表の場」があるので、それで皆が満足してしまっているのでしょうか?
私はこれについて、あるジャーナリスティックな場所に、実名で意見を述べました。
公表されるかどうかはまだわかりません。
以前も同じ場で「戦争法案」廃案を唱え、その時は採用されましたが。
一介の市民が、そういうことをするのに、どれだけの労力と勇気が要るか、想像できますか?
SEALDsの奥田くん宛に、先月、「殺害予告」の手紙が届きました。
彼は実名を公表し、自分の顔を世間に晒し、それは、それがどれだけリスクのあることが承知しながらも、それをやらずにいられなかったからです。
今までも、彼がどれほどの「嫌がらせ」を受けてきたか、知っていますか?
奥田くんは、今回の「殺害予告」について、東京新聞のインタビューに答え、「こういう卑怯な行為があっても、言いたいことはこれからも言っていく。黙らない」としながらも「今は一人で電車に乗るのも正直怖い」と心情を吐露しています。
どうして、「一介の大学生」がそんな思いをしなくてはならないのでしょう?
どうして、「政治学者」と言われる人たちや、ジャーナリズムを名乗る人たちは、今回の「強行採決」について、強く反発の意を表明しないのでしょう?
それが、あなたたちの使命なのではないのですか?
奥田くんが遭ったような「リスク」をよく承知しているからですか?
丸山眞男が「分析」した太平洋戦争の「構図」は、今の政治状況に恐ろしいほど酷似しています。
「無責任の体系」。
「圧力の移譲」。
「戦後史証言プロジェクト 日本人は何をめざしてきたか 第3回 民主主義を求めて ~政治学者 丸山眞男~」は、幸いにもネット上に動画が残っています。
90分の長きにわたる動画ですが、一見の価値はあります。
ちなみにこの投稿のタイトルは、丸山眞男が、生涯にわたって唱え続けた主張です。
今こそ深く感じ入る言葉です。
ある意味残念ながら。