明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1073)高浜原発再稼働禁止処分決定!しかも新規制基準を痛烈に批判!

2015年04月14日 17時00分00秒 | 明日に向けて(1001~1100)

守田です。(20150414 17:00トルコ時間) 

イスタンブールのホテルからです。
注目が集まっていた高浜原発再稼働差止をもとめた仮処分裁判、ついに決定が出ましたね!すでにたくさんの報道がなされていると思いますが極めて決定的なことです。僕はこの決定は、原発の危険性をさまざまな形でうまずたゆまず訴え、行動してきた日本の民衆の力こそが生み出したものだと思います。
「司法が勝った!」という表現もありますが、まあ、それはそれで良いのですが、僕自身は勝ったのは民衆だと思います。司法はあくまでまっとうで良識ある判断をくだしたということです。
 
たくさんの記事があり、まだ一つ一つを吟味できていませんが、とりあえず毎日新聞の記事をご紹介しておきます。

 高浜原発:3、4号機再稼働差し止め 福井地裁、仮処分
 毎日新聞 2015年04月14日 15時33分
 http://sp.mainichi.jp/select/news/20150414k0000e040208000c.html
 
ともあれ素晴しい勝利ですね!
今は日本時間では午後10時、こちらでは午後4時ですが、2時間後の6時から今回の訪問で最後の講演会が始まるので、その場でこの朗報をトルコ、イスタンブールのみなさんにお伝えします。
ちなみに講演原稿をアップしましたが、シノップでの発言後、アンゲリカ・クラウセンさん、アルパー・オクテムさんと討論をし、もっと日本の情報をたくさん入れて欲しい、ウクライナのことは今回は語らなくても良いのではなどのアドバイスをいただき、サムソンでの講演より内容を大きく差し替えました。そして講演の中にこの高浜原発をめぐる裁判のことも入れていました。そのため講師陣とコーディネーター一同、裁判のことを知っていました。
 
今朝は早朝早くサムソンをみんなでたち、飛行機でイスタンブールへ。その後、市内のホテルに向かいチェックインしました。さっそくホテルのWi-Fiを使ってニュースをチェック。ちょうどフロントでみんながパスポートを出している時に僕が「再稼働差止決定」のニュースをゲットして「やったあ!」と叫ぶとフロントの前でみんなから歓声が!アルパー・オクテムさんが僕に「おめでとう」と抱きついてきてくれました。
この感動そのままに今日の会場での報告を行うつもりです。
 
今回の決定、再稼働差止が出されたことそのものが素晴しいですが、内容的にもとても意義が深いです。
というのは決定内容が、高浜原発を動かそうとしている関西電力に対する批判にとどまらず、再稼働を認めた原子力規制庁の新規制基準そのものへの明確な批判になっていることです。
これは昨年5月に同じ福井地裁の樋口裁判長が出した大飯原発の運転差し止め決定と同じなのですが、今回は一歩踏み込んで、新規制基準への批判を前面に押し出しています。僕はこの点が素晴しいと思いました。
決定は以下の弁護団のページから読めるのでぜひご覧下さい。
 
脱原発弁護団全国連絡会
http://www.datsugenpatsu.org/bengodan/news/15-04-14/
 
決定文要旨
 
さてこれからイスタンブール町中での講演会が始まるのでどれだけ書けるかわかりませんが、非常に重要なポイントなので、主に決定文要旨に基づき、この短い時間でできる限りの解説を試みてみたいと思います。
 
まず1から3で論じられているのは地震についてです。
1では基準地震動700ガル以上について述べられています。基準地震動とは設計にあたってプラントが耐えられなければならない地震の揺れの最高値です。今回の新基準ではそれが700ガルであるとされているのですが、再稼働禁止決定では、700ガル以上の地震が来ないという根拠などどこにもないというまっとうな科学的知見が打ち出されています。
 
決定はこう述べています。
 「全国で20箇所にもみたない原発のうち、4つの原発に5回にわたり想定した地震動を超える地震が平成17年以降10年足らずの間に到来している」
・・要するに地震の想定など、従来の方法ではまったくあたってないではないかと指摘しているのです。
 
また活断層の状況から地震動の強さを推定する方式の提言者である入倉幸次郎教授が新聞のインタビューに以下のように答えていることも引用しています。
 「基準地震動は計算で出た一番大きな揺れの値のように思われることがあるが、そうではない。」「私は科学的な式を使って計算方法を提案してきたが、平均からずれた地震はいくらでもあり、観測そのものが間違っていることもある」
・・入倉教授が述べていることは現代科学では私たちはまだ来るべき地震の最大値を把握することはできないのだという事実です。
これらから決定は「来るべき最大の地震である700ガルに耐えられるようにした」という関電の主張を退けているわけです。
 
2つ目にその700ガルまで耐えられるという主張のおかしさも指摘しています。というのはもともと高浜原発は370ガルを基準地震動として設計されたのでした。ところが今回、「実は余裕をもって作ったのでもっと基準地震動を引き上げても大丈夫だ。550ガルまでは大丈夫なことが分かった」と言ってここまでは何の対応もなしに数値をあげてしまいました。
このため耐震補強など何もせずにただ文言上だけで「370ガルまでは耐えられると言ってきたが実は550ガルまで耐えられることがわかった」と言っているにすぎません。ここが本当に酷いのですが、この点も裁判所はきちんと批判しています。ここまではいわば関電のひどさです。
 
その上で550ガルから700ガルへの基準地震動のさらなる引き上げにおける原子力規制庁の考え方への明確な批判が行われています。
というのが規制庁はこの150ガル分の引き上げにおいて新たな対策を施すことを要請した訳ですが、それがなんと地震で重大事故(過酷事故)が起きない対策なのではなく、「起きた時」の対策になっているのです。
端的に外部電源が喪失し、冷却ができなくなり、原子炉圧力容器がメルトダウンを起こしたときの対策です。
決定要旨には触れられていませんが、このとき新規性基準は圧力容器を納めている格納容器の上からスプリンクラーのように水を撒き、格納容器下部にためてそこにメルトダウンした燃料が落ちるようにする、それでそれ以上の事故の進展を防ぐといっているのです。メルトダウンという原発設計者が絶対にあってはならないと想定してきた事故をいわばあっさりとありうることにしてしまい、その時の対策を行ったと言っているわけです。
 
これはこの「明日に向けて」でも後藤政志さんの発言を紹介しながら何度も解説してきた新規制基準のまったくあやまったポイントです。原発は、いや全てのプラントは、非常時にどうなるのかを考えて安全装置を考えるのであって、それが突破されてしまうことは設計上の破綻なのです。つまりコントロールのできない事態、想定のできない事態がその先に続くのです。そうなることを許容するのは、ブレーキが壊れうることを前提にした車を売り出すのと同じことです。しかも原発は車等とは比較になりようもないほどの危険性を秘めているにもかかわらずです。
 
この点のあやまりを再稼働禁止決定はきちんと述べていて、とても胸のすく思いがしました。
大事な点はこれは高浜原発に限らず他のすべての加圧水型原発にも通じる問題だと言うことです。いや考え方は沸騰水型原発にも適用されているのですべての原発に通じる問題だと言えます。
福島で重大事故=過酷事故が起こったことを反省して、二度と過酷事故が起こさない原発を作るというのではなく、「過酷事故が起きないと考えて対策を立てなかったのが間違っていた。これからは過酷事故が起きうるとかんがえて対策を重ねることにした」という新規制基準のいわば居直りにも似た提言を、裁判所はそれこそ一刀両断しています。この点が実に素晴しいです。
 
さらに再稼働禁止決定では4において燃料プールの危険性がきちんと批判されています。
実はここは新規制基準がすり抜けようとしているところなのです。というのは原子力規制庁は重大事故=過酷事故の発生の可能性について「これまで核燃料は5重の防壁に守られていて放射能漏れは起きないと考えられてきたが福島原発事故の現実からそれが突破されてしまう可能性がありうることがわかった」という言い方をすることで、実は燃料プールにはペラペラの建屋以外、なんの防壁もないことを意図的に避けて、新規性基準を作ってきたのです。だから燃料プール対策はまったく触れられていません。
裁判所はこの点をもきちんと批判しています。
 
それらからするならば、1、基準地震動を大幅に引き上げて耐震工事をする、2、外部電源と主給水の耐震性を大きく引き上げてSクラスにする、3、使用済み核燃料を堅固な施設で囲い込む、4、燃料プールの耐震性を大きく引き上げてSクラスにする、これらから免震棟も即刻作らなければならないのであって、それがなされないのであれば運転は到底認められないとしています。これらが5、6で書かれています。
 
以上から、今回の再稼働禁止決定は高浜原発にとどまらず新規性基準そのものへの非常にまっとうな批判になっていることを私たちはきちんとつかみ広げていく必要があります。
今日のイスタンブールの講演ではここまで細かくは伝えませんが、ともあれみなさん、この点を踏まえて、原子力規制庁への批判そのものを強めましょう。
 
そう考えたら、実は東京のFoE JAPANがさっそく行動を提起していることを知りました。
いつもながら動きが速くて凄いですね。東京での行動になりますがご紹介しておきます。
行ける方はぜひご参加ください!
 
明日(4/15)12時~@原子力規制委員会前(六本木一丁目)
【原子力規制委前アピール】高浜原発運転差し止め仮処分決定を受けて
~ストップ!すべての原発の再稼動、 規制基準は撤回を!
http://www.foejapan.org/energy/evt/150415.html
 
さて僕も講演会に向かいます。
今回の決定を迎えることができた私たち日本民衆の力に誇りと自信を抱き、世界の核のない時代を作ろうという声と結合して前に進みましょう。
講演を頑張ってきます!
 
 
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