守田です(20210927 12:00)
● 要注意!台風16号が発達中
台風16号が太平洋上で発達しています。27日午前9時現在、日本のはるか南の鳥島近海にあり、しばしの停滞からゆっくりとした北上に移っていますが、「大きさ・強さ」は「非情に強い」レベル。
中心気圧935Pa、最大風速50m/s 最大瞬間風速70m/s。このあと明日、明後日とさらに発達し、28,29日には中心気圧910hPa、最大風速55m/s 最大瞬間風速80m/s で最大級の「猛烈な」レベルとなる見込みです。
その後、勢力そのものはやや落ちると考えられますが、それでも「非常に強い」レベルを保ったまま、10月1日(金)頃に関東に最接近する見込みです。
日本気象協会 tenki.jp 27日午前9時発表
問題は進路です。今のところ関東の東海上を通過していく可能性が高いと予測されていますが、進路の予報円の西にあたるのは伊豆半島から相模湾付近で、場合によっては関東に上陸し、茨城を通過して太平洋にいたる可能性もあります。
この予報円の西寄りの進路は、2019年10月に甚大な被害をもたらした台風19号と似通っている。考えておかねばならないのは、その場合、あの時と同様の甚大な河川決壊が起こる可能性もあることです。
なお予報円内を通る確率は70%。もっと西側を通過する可能性もあります。そうはならずに関東から離れた洋上を通過することを祈るばかりですが、いまは最も厳しいコースを辿ることもありうることを見すえて、厳重に警戒することを呼びかけます。
2019年台風19号のたどった進路 気象庁
● 2019年台風19号被害を振り返る
そもそも2019年の台風19号は、この国の水害対策、河川対策のグランドプランを完全に打ち壊してしまう被害をもたらしました。
なんと71河川140カ所で堤防決壊が起こったのです。堤防は壊れずとも、越水などの氾濫は301か所で起こりました。あちこちが深刻な水害に見舞われたのですが、進路から大きく西に離れた千曲川でも深刻な決壊が起こりました。
より詳しくは国が管理する一級河川で12カ所、そのほかで128か所の決壊が起きたのですが、これほど多数の決壊が起きたのは初めてのこと。はやこれまでの対策では命と生活を守れないことが突きつけられました。
どういうことかと言うと、河川管理には「計画降雨」というものがあります。河川ごとに基準が違いますが、大きな河川では100年に1回程度発生する降水量を見積もり、それでも決壊しないだけの堤防が作られてきました。
このもとで2000年から10年までの、河川決壊の平均数は年3本でした。ところが2019年の台風19号がもたらした大雨は、各地で「計画降雨」を上回る水量を発生させ、堤防がもたなくなり、決壊が相次いだのです。
日本では長らく、堤防によって洪水を食い止めることを、河川防災対策の基軸にしてきました。近年の気候変動に対応して改め、遊水池整備などもされつつあります。でもまだ決壊すると打つ手がない。甚大な被害が多発しています。
日本気象協会 安齋理沙氏作成
● あのとき、実は首都圏は壊滅寸前だった
これらをもたらしているのは気候変動による「記録的豪雨」の多発ですが、この傾向はただちにとめらるわけではないので、今後も「記録的豪雨」に度々見舞われる可能性が高いし、より深刻になる可能性があります。
この点を踏まえて、今一度、台風19号被害を良く見てみましょう。実は関東を流れる大河、利根川の上流で多数の決壊が起こっていたことが分かります。そして実はそうであるがゆえに、利根川が大決壊を免れたことも見えてきます。
これはとても恐ろしい事態です。当然にも決壊地点には修復と強化が施されている。そうなれば次の洪水時に他の地点が決壊する可能性がありますが、反対に決壊しなかったら全ての水が利根川に押し寄せ、大決壊を起こす可能性があります。
台風19号による河川の被害状況 国交省
同じ図の利根川付近を拡大
ぜひ知っていただきたいのは、利根川が関東平野の高い所を流れていることです。東京は江戸川区などゼロメートル地帯を多数抱えていますが、利根川の水面はなんとそれより20メートルも高いのです。
だから利根川で大きな決壊が起きると、東京方面に大水流が押し寄せやすい。そうなれば命を落とす方が多数出るとともに、首都圏機能もたちまちマヒして大変な混乱が起きます。
2019年も実はその危機に直面していたのです。しかしこの2年間、少なくとも国家的には、まともな対処がなされてきませんでした。だから今回の大型台風の接近でも、大きな恐怖に見舞われてしまっています。
● 河川決壊に備えを。災害対策の抜本的強化を訴えよう。
実はこうした日本の諸都市の構造的危機は、スイスの保険会社「スイス・リー」などによって繰り返し警告されてきました。
「スイス・リー」は全世界の616都市の自然災害への危険度の比較レポートを2013年に発表。東京・横浜圏をワースト1、大阪・神戸圏をワースト4、名古屋をワースト6と発表し「ワースト10の都市には移住すべきでない」と勧告しています。
これに気候変動での豪雨が加わり、危機はより強いものとなっています。災害対策の抜本的な強化が必要なのです。しかし日本政府はあまりに無策。野党の警戒心もけして高いとは言えません。この現状を変えないといけない。
今回、台風が関東から遠く離れた洋上を通過することを願うばかりですが、そうでない最もシビアな場合に備え、河川決壊が多発する可能性も考えて、それぞれで対策を立てていただきたいです。
やはり最も有効なのは早めの避難です。ぜひハザードマップをよくご覧になり、少なくとも水没が予想される地点におられる方は、台風16号の関東上陸が避けられなくなった時点で避難して下さい。
災害対策の基本はとにかく災害の場にいないこと。「とっとと避難する」ことです。とくに河川に近い地域におられる方は、河川決壊によって水流が押し寄せてくるのは瞬時であることを考えて、危険地帯を離れて下さい。
台風16号に対して最大限の警戒を深めて危機をしのぎましょう。そしてこれを機に、災害対策の抜本的な強化を進めるべく、大きく声をあげていきましょう。
河川氾濫、堤防決壊から命を守ろう
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