明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1882)玄海原発3号機は再稼働時にすぐに故障。加圧水型原発は配管系に致命的欠陥がある!

2020年09月16日 23時30分00秒 | 明日に向けて(1701~1900)

守田です(20200916 23:30)

玄海原発の危険性の続報です。

「何があるか分からないと言っていたが現実になってしまい残念だ」と九電社長は笑いながら語った!

ここのところ玄海原発の危険性について連続して論じてきました。
1、巨大台風の襲来が続いていること、2、稼働以降、壱岐市で白血病死亡率が6~7倍になっていること、3、危険なリラッキングを進めていること(4号機の燃料プールラックは最初から縮小サイズ)です。
今回、さらに論じたいのは、2018年3月23日に7年3か月ぶりに再稼働を強行した3号機が、わずか一週間後の30日に蒸気漏れ故障事故を起こして停まってしまったこと。ここにすべて点検しきれずに再稼働がなされたことが表れているからです。


再稼働直後の故障事故について報じるrkb毎日放送

何が恐ろしいのかと言うと、いまも見過ごされている危険個所がありうること。とくに加圧水型原発は蒸気発生器とそれにつながる配管系で事故を繰り返してきているので、再度の事故が懸念されるのです。
実際に関西電力美浜原発では、配管破断による重大事故が2回も起こりました。一度目はメルトダウン寸前、二度目は数名の作業員が亡くなる大事故でした。
二度目の事故は、配管が多すぎて十分な点検が行き届かないことによっても起こされたのでしたが、実は電力会社もこの点を十分に認識しています。

それを雄弁に物語るのが、この事故が起きたときに、九州電力瓜生社長(当時)が次のように言い放ったことです。
「何があるか分からないと言っていたが現実になってしまい残念だ」。しかも笑いながらでした。
動画があったのでアップします。ぜひご覧下さい。

玄海3号機蒸気漏れ事故:九電社長笑いながら「残念だ」
RKBニュース 2018年4月2日
https://www.youtube.com/watch?v=0irEt-3IHjE


笑いながら「何があるか分からないと言っていた」と語った瓜生九電社長(当時) rkb毎日放送より


玄海原発3号機の故障事故は二次系冷却水の配管付近で起こった

この時、蒸気漏れが発生したのは、二次系冷却水の配管の中にある「脱気器空気抜き管」という機器でした。
九州電力が行ったプレスリリースのうち、蒸気漏れを起こした箇所を図示した「系統図」をご紹介しておきます。

玄海原子力発電所3号機概略系統図
http://www.kyuden.co.jp/var/rev0/0125/2053/bti4y7z3.pdf

以降、この図を参考に説明を続けますが、故障事故が、二次系(青色)の配管系統で起きたことが明らかですが、これはこの原子炉の構造的欠陥がもたらすものです。
というのは加圧水型原発は、一次系冷却水(桃色)と二次系(青色)が接する「蒸気発生器」に致命的な欠陥を抱えているのです。これに付随して二次系、三次系の配管でも繰り返しトラブルを起こしています。

なぜかというと、この原子炉では、一次系冷却水(桃色)を循環させる配管の中に、加圧器が設置され、150気圧にまで加圧されているのです。
沸点を高くしてよりたくさんの熱を運ぶためです。一次冷却水は300度でもまだ沸騰しない。このため150気圧300度の熱水が一次系の中を循環しています。
これを「蒸気発生器」に送り込み、細い配管を介して接して熱を二次系(薄い青)に移行させ、蒸気を発生させてタービンを回すのですが、高圧の熱水を回すことが大きな負担を生み、深刻な事故につながってきたのです。


蒸気発生器の抱える致命的欠陥

「蒸気発生器」の中には一次系の細い配管がたくさん配置され、二次系の冷却水と接しているのですが、実は抜本的に矛盾した役割が与えられています。
一つには150気圧300度の熱水をしっかりと閉じ込めること。もう一つには300度の熱を効率よく二次系に伝えること。前者のためには配管を厚くした方が良いけれども、後者のためには薄くした方がいい。
このため配管を絶対に壊れないようにすることができず、150度300気圧に耐えられなくなった配管にしばしばピンホールが発生、どんどん増えて配管が劣化していくのです。

これに対する対処は、定期点検のときにピンホールが生じた配管に栓をするという信じがたいもの。
これだけでも蒸気発生器が技術的に未確立なことがわかるのですが、恐ろしいのはピンホールではすまずに配管が破断してしまうこと。実際にこうした過酷事故が美浜原発2号機で発生しました。1991年のことでした。
配管の一部が破断して55トンの熱水が二次系統に流出。原子炉が冷却水を失い始めて緊急停止しました。この時、この国の原発ではじめて「緊急炉心冷却装置」が作動しました。


現在の美浜原発 毎日新聞より

しかも一次冷却水は150気圧ですから、ものすごい勢いで冷却水が無くなっていき、メルトダウンに向かいました。寸前で止まったものの、危機一髪でした。
この炉を設計した三菱重工は、実は少し前から「蒸気発生器」が未確立な部品であることを明らかにし、劣化した蒸気発生器の交換を始めようとしていました
しかしもともと交換など想定していないがゆえに、蒸気発生器は堅牢に作られた原子炉格納容器の中に収められています。このため格納容器を切断して大きな穴をあけての交換したのでした。

そもそも当初の設計が破たんしたのだから、この段階で、加圧水型原発はすべて廃炉にすべきでした。
しかし「蒸気発生器」という致命的欠陥を抱えたまま運転を続けたために、二次系、三次系の配管の故障事故にもつながってきたのです。
玄海、伊方、高浜、大飯はすべてこれと同じタイプの原発です。どう考えてもすぐに停めるべきです!

続く

#玄海原発 #加圧水型 #蒸気発生器 #故障事故 #原発再稼働反対

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