明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1118)あまりに愚かで危険極まりない川内原発再稼働を止めさせよう!

2015年08月03日 18時30分00秒 | 明日に向けて(1101~1200)

守田です。(20150803 18:30)

東芝不正会計問題の分析の途中ですが、川内原発1号機の再稼働の動きが迫ってきましたので、反対行動への取り組みなどを先にご紹介します。
読売新聞8月1日付の報道によると、九州電力は7月31日に、「早ければ8月10日に再稼働させる」と原子力規制委員会に正式に報告したとのこと。
一方でNHKは同じく8月1日の報道で「九州電力は、日程を検討した結果、今月11日以降に原子炉を起動し、再稼働させる方針であることが分かりました」と報じています。
これらから再稼働は10日かそれ以降になされようとしていると思われます。以下、ニュースソースを示しておきます。

 川内原発「8月10日再稼働」、規制委に報告
 読売新聞 2015年08月01日
 http://www.yomiuri.co.jp/kyushu/news/20150801-OYS1T50010.html

 川内原発1号機 再稼働は11日以降に
 NHK NWESWEB  8月1日 5時03分
 http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150801/k10010174331000.html

読売新聞によれば「再稼働に向けて8月4日から6日間程度、原子炉の温度や圧力を上げる作業を行う」とも報道されています。
ここでトラブルがなければ10日以降に制御棒を抜いて起動させ、15時間程度で臨界に到達。軌道から3日後に発電を始めるとのことですが、長く稼動していなかった原発なので、この6日間に深刻なトラブルが起こらないのかも警戒しておく必要があります。

再稼働の動きに対して朝日新聞は3日付で周辺の避難計画ができていない現実を指摘し、再稼働への批判を展開しています。
全国の30キロ圏内の自治体の半分が避難計画が未整備であり、医療機関の多くが「そもそも避難などできない、再稼働は論外だ」と怒りを述べていることも紹介しています。
参考になるのでこれもご紹介しておきます。

 原発避難計画、半数が未整備 周辺の医療機関と社福施設
 朝日新聞 2015年8月3日11時00分
 http://www.asahi.com/articles/ASH825QV5H82UTIL00Z.html 

「明日に向けて」でも再三再四論じてきたように、再稼働は「重大事故」が起こることを前提に行われます。
かつて日本政府と電力会社は日本では絶対にチェルノブイリのような深刻な事故は起こらない、だから稼働を認めてくれと論じてきたのでした。
その約束が完全に崩壊したにも関わらず、「絶対に重大事故は起こさない」対策に向かうのではなく、「重大事故が起きない」と仮定していたことが間違っていた、今後は重大事故対策もして稼動すると全面的に開き直って再稼動に向かっています。
本当に「あまりに愚劣で危険きわまりない」政策です。それこそ「国防」の観点などまったく欠いた自ら絶滅の道を歩むような選択です。

しかも重要なポイントは「重大事故」とはもともと「過酷事故=シビアアクシデント」を指していることです。設計上想定された安全装置がすべて突破され、設計士お手上げ状態に突入する事故であり、事故の推移も想定できず何が起こるか分からないのです。
何が起こるか分からないのだから、合理的な対策など建てようがない。ただこれまで起こった経験から考えられることを付け加えたにすぎません。しかし福島原発事故の実際とてそれまでの経験になかったことを考えても、対応できるわけがない。
いやそもそもその福島原発事故そのものが、内部を調べられないために、未だにどのように展開したのか、それこそ核燃料がどのように溶けてどんな状態になっているのかさえつかめていないのです。
現に起こった事故が解析できていないのに、なんで対策が建てたてられるのでしょうか。その意味で新規制基準は福島原発事故の教訓を踏まえたものともとても言えません。

さらにそんな状態で再稼働しようとしながら、避難計画の進捗を全く無視している。その点でもあまりに無責任で愚かな試みです。
なんとしても食い止めたいです。

今回は再稼働を止めるための現地、川内原発前大行動をはじめ、さまざまな反対行動への呼びかけをご紹介しておきます。
僕自身は、8日に長野県大鹿村で講演し、そのまま群馬県にうつって11日から13日に連続講演させていただくので現地にはいけませんが、みなさま、それぞれで可能な行動にご参加下さい。
なお毎週の電力会社前行動などは網羅していません。またとても全国のすべての行動を網羅できませんので、どうか情報が足りない場合はお近くの行動をネットなどで探されてください。

掲載するのは現地行動と現地でのロックフェスティバル。
東京での院内集会、対政府交渉、原子力規制委への抗議行動など。
名古屋市での再稼働反対デモ。
静岡市での再稼働反対ダイインなどです。

*****
川内原発再稼働阻止!ゲート前大行動

川内原発再稼働の日程が、いよいよ確定してきました。
8月10日起動と九電は発言しています。
鹿児島に暮らす人々の人権を蹂躙するのみならず、西日本、日本全体を崩壊せしめる重大な犯罪行為を、私たちは、断じて許すことはできません。
私たちは、全国の再稼働に反対する人々に、川内原発ゲート前大行動への結集を強く呼び掛けます。
(ストップ再稼働! 3.11鹿児島集会実行委員会) 

【起動日前集会】8月9日(日)13:00―17:00 久見崎海岸(川内原発そば)
【起動日集会】 8月10日(月)7:00― 川内原発ゲート前
■連続行動 
8/7(金)8:00―10:00、
8/8(土)13:00―15:00、いずれも原発ゲート前
* 起動日延期の場合は、8/10(月)の起動日集会は延期。8/9(日)の起動日前集会は実施。
* 原発に隣接する久見崎海岸にテントを持参の上、自由にお泊まりください。

■川内ウェル亀ロックフェスinぐみざきビーチ
https://www.facebook.com/events/864757046913183/permalink/866971710025050/
8/8(土)12:00~8/9(日)12:00  

★要請文「川内原発再稼働阻止!ゲート前大行動へ、結集を強く呼び掛ける」

九州電力川内原発は、日本中の原発が全て停止している中で再稼働一番手に指名され、着々とその準備が進められている。そして遂に、核分裂を開始する起動日が来る8月10日と明らかになった。
私たちは心から糾弾し、川内原発ゲート前大行動への結集を強く呼び掛ける。

2011年3月11日、福島第一原発事故を私たちは経験した。福島の住民に対する非道はいまなお続いている。そんな中での川内原発再稼働は、新たな核災害の第一歩にほかならない。
再稼働は鹿児島の大地、森、川、そして海を破壊し、鹿児島に暮らす人々の人権を蹂躙するのみならず、西日本、いや日本全体を崩壊せしめる重大な犯罪行為であり、断じて許すことはできない。

川内原発の安全性の論拠は完全に破綻している。予知できない破局的噴火、置き去りにされた地震問題はもとより、構造的、工学的欠陥も多々指摘されている。要援護者をはじめとする避難計画は完全に放棄されている。
川内原発に保管されたままの使用済み核燃料888トンをどうするのか、先は全く見えない。

さらに許しがたいことに、九州電力は「説明と同意」という最低限の義務さえ放棄したままだ。国民の意思と世界の脱原発の流れに反して原子力に固執する安倍総理、九州電力をはじめとする「ニッポン原子力ムラ」の無法が、浮き彫りになった。
私たちを育んだこの鹿児島の大地は、聖なる大地である。私たちは、聖なる大地への蛮行を黙って見過ごすことはない。九州電力が川内原発を起動するその日、ゲート前に結集し、魂の闘いを繰り広げようではないか。
私たちは、全国の再稼働に反対する人々に、ともにゲート前で最大の抗議と抵抗を示し、再稼働断念に追い込むことを呼び掛ける。(ストップ再稼働! 3.11鹿児島集会実行委員会) 


SENDAIウェル亀ロックフェスティバル IN GUMIZAKI BEACH
8月8日 - 8月9日 8月8日 12:00~8月9日 12:00
久見崎海岸
https://www.facebook.com/events/864757046913183/
http://welkamesendai.wix.com/kamesen

~SENDAIウェル亀ロックフェスティバル IN GUMIZAKI BEACH~ !!亀ロック!!
鹿児島川内原子力発電所の真横に位置する久見崎ビーチ。
人が来なくなり、荒れた砂浜。
遊泳禁止。
県民に忘れられた海岸。
与謝野晶子が愛した海岸
~久見崎の沙に摘みたる薬草を載せてわが船蓬莱離る~晶子

大昔から、今もウミガメの産卵地。
そしてこれからも命を繋ぐため美しい久見崎を回帰するためにみんなでできる事を。。
薩摩川内市のグミザキビーチにてウミガメの保護をテーマとした音楽フェスティバルを開催いたします。
キャンプインして次の日は海岸のクリーングリーン作戦!!
ぜひご参加ください*

とき:2015年8月8日(土) - 8月9日(日)
場所:薩摩川内市久見崎海岸(小雨決行)
協賛券:1000 yen(1部は海亀の保護に使われます。)
高校生以下入無料

*****

2015年8月1日 みなさま(重複失礼します/転送・転載歓迎です)
FoE Japanの満田です。

30年超の原発に必要とされている高経年化技術評価。川内原発第一号機は31年超なのに、審査未了です。
市民の批判に対して、規制委は、再稼働ありきの形だけのスピード審査を8月5日に確定させようとしています!
手続き上の問題だけでなく、主給水系配管の腐食減肉を想定した評価で、許容値ギリギリの危険個所も見つかっています。
8/4に緊急院内集荷いと政府交渉、そして8/5には、規制委員会前で抗議アピールを行います。どなたでも参加できます。
私たちの「ノー!」を規制委員会につきつけましょう!

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ストップ!川内原発
再稼働ありきの高経年化審査を問う
<緊急院内集会と政府交渉>
http://www.foejapan.org/energy/evt/150804.html
2015 年 8月4日(火)13:30~17:00
※13時からロビーにて通行証を配布します
13:30~15:00 院内集会
15:00~16:30 政府交渉
16:30~17:00 まとめ

場所:衆議院第一議員会館第6会議室(地下1階)
主催:川内原発30キロ圏住民ネットワーク/反原発・かごしまネット/玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会/グリーン・アクション/美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会/原子力規制を監視する市民の会/国際環境 NGO FoE Japan
問い合わせ先: 090-8116-7155(阪上)

【原子力規制委員会前抗議行動】 
川内原発高経年化のずさん審査・再稼働を許さない!
日時:8月5日(水) 9:30~10:00 11:45~12:30
場所:原子力規制委員会前(最寄り駅:六本木一丁目)
主催:原子力規制を監視する市民の会
協力:国際環境NGO FoE Japan(エフ・オー・イー・ジャパン)
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※こちらもよろしく!
8/8までパブコメにかけられている「子ども・被災者支援法」の基本方針改定案の見直しについて、先般の政府交渉も踏まえ、パブコメのポイントをまとめました。
自主的避難者の避難の合理性を否定する、ひどい内容で、今後のADRの行方にも関係するかもしれません。
「避難者切捨てを許さない」という私たちの声を、復興庁にぶつけましょう!
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8/8まで 「避難者切捨てはゆるさない」みんなの声をパブコメに!
「子ども・被災者支援法」で復興庁が、パブリック・コメント募集
~ポイントまとめました~
http://www.foejapan.org/energy/action/150801.html
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満田夏花(みつた・かんな)
ツイッター:@kannamitsuta
FoE Japan
〒173-0037 東京都板橋区小茂根1-21-9
Tel:03-6909-5983 Fax:03-6909-5986

*****

川内原発再稼働を許さない! 九州電力東京支社抗議行動
日時  2015年8月5日(水)17時半~18時半
場所 九州電力 東京支社 有楽町電気ビルヂングまえ
交通 JR有楽町駅 徒歩1分 (東京都千代田区有楽町1丁目7?1)
※プラカードや旗を持参してください
呼びかけ・問合せ 再稼働阻止全国ネットワーク
TEL 070-6650-5549 メール info@saikadososhinet.sakura.ne.jp
http://saikadososhinet.sakura.ne.jp/ss/archives/9396

*****

8.9 NO NUKES DEMO
原発ゼロを永遠に!NAGOYA ACTION
川内原発再稼働反対!安倍政権は即刻退陣!

【日時】 2015年8月9日(日曜) ※雨天決行
【集会開始】 11:00
【デモ出発】 11:30
【集合場所】 エンゼル広場
[交通アクセス] 地下鉄名城線「矢場町」下車(松坂屋北館東)
【主催】 原発ゼロを永遠に!NAGOYA ACTION 実行委員会

<呼びかけ文>
安倍政権は、原発回帰政策の第一歩となる川内原発1号機の再稼働をいよいよ強行しようとしています。
九州電力は、既に核燃料の装荷を終了し、8月10日にも起動のスイッチを押すと見られています。
火山噴火への対応も、重大事故対策も、住民合意や避難計画も、老朽化審査も全く不十分なまま、脱原発を求める世論も無視して原発再稼働へ突き進むその先には、次の核の惨禍しかありません。
8月9日は、長崎に原爆が投下されて70年目の日。3度の悲劇を経験した私たちには、「原爆」も「原発」ももうたくさんです。
ぜひこの日、「川内原発の再稼働は許さない!スイッチを押させない!」という強い意志を示すために、皆で大きく声をあげましょう
【デモコース】エンゼル広場スタート~久屋大通~広小路通~大津通~若宮大通~久屋大通、流れ解散
http://blog.livedoor.jp/genpatuiranganena/

*****

川内原発再稼働に抗議!ダイ・イン
2015年8月10日 17:30 - 18:30 
静岡 青葉シンボルロード
〒420-0031 静岡県 静岡市葵区呉服町2丁目
https://www.facebook.com/events/845330565515960/

 

 

 

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明日に向けて(1117)東芝不正会計問題の背景にあるのは原子力産業の瓦解だ!-1

2015年08月02日 23時30分00秒 | 明日に向けて(1101~1200)

守田です。(20150802 23:30)

本日8月2日、東京電力は福島第一原発3号機の燃料プールの上に落ちていた20トンの巨大がれき(燃料交換用クレーンの残骸)の撤去作業を行いました。
危険作業で敷地内の他の作業をすべて中止する措置がとられる中での作業でしたが、午前11時55分に吊り上げに着手、午後1時18分に吊降ろし作業が終了と発表されました。
詳しくは以下の東電の発表をご覧下さい。

 福島第一原子力発電所 3号機使用済燃料プール内からの燃料交換機撤去について
 2015年8月2日 東京電力株式会社
 http://www.tepco.co.jp/cc/press/2015/1256670_6818.html

ともあれとりあえずは新たな事故のないままにがれき撤去ができて良かったです。現場で危険作業に従事している方に感謝を述べたいです。
しかしこれからもこういう綱渡りがえんえんと続くのだと思います。覚悟を固めて、ウォッチを続けたいと思います。

さて昨日の発信においてこの福島3号機が純然たる東芝製であること、この他2、5、6号機の製作に関わるなど、東芝が福島原発に大きく関与してきたことに触れました。
そうであるがゆえに事故後にアメリカで受注し建設中であった原発建設が止まってしまい、東芝は大きな損益リスクを抱えました。
いやそもそもそれ以前から東芝は原発事業に深くコミットして投資を大幅に増やしたものの産業全体の展望が暗くなる中で経営が傾いていました。
その中で構造的な会計の不正が行われていたわけですが、僕はここには日本のみならず世界の原子力産業の瓦解こそが大きく表れていると思います。

今宵はこれらについてみておきたいと思いますが、僕は経済学は少しはかじっているものの会社の経営などには明るくなく専門用語にも不慣れです。
とくに会社の経営問題になると基礎的知識が不足していてその点で正確さを欠くことになるかもしれません。間違っている場合にはどうかご指摘をいただきたい旨、先にお断りしておきます。

東芝の不正問題、7月20日に行われた第三委員会の報告によると不正が行われたのは2008年度から2014年度第3四半期、額は計1518億円に上ります。自主チェック分を合わせて利益のカサ上げは累計1562億円に上ります。
この責任をとって田中久雄社長、元社長の佐々木則夫副会長、西田厚聰(あつとし)相談役の歴代3社長が辞任しました。さらに取締役16人中8人が辞任。「異例の事態」と報告されています。
そもそも会社の利益のかさ上げによる営業成績の好調さの演出は、市場の投資者に対する詐欺そのものであり、大きな経済犯罪です。きちんとした処罰を行わなければ日本企業全体の信用の失墜にもつながりかねない事態です。
しかし安倍政権の姿勢を見ていても、マスコミの報道姿勢を見ていても、そこまで徹底してこの問題と向かい合う方向性は見えません。

背景を辿っていくと見えてくるのは原子力産業が坂道を転げ落ちるように瓦解していることです。その瓦解する産業が安倍政権の裾をつかんで共に坂を転げ落ちつつあるようにすら見えます。
歴史を捉え返してみましょう。そもそも日本の原子力産業が、国内における原発の建設の枠内にあったところから大きく原発輸出などの海外展開に踏み切って言ったのは2000年代に入ってからのことです。
大きな影響を与えたのはアメリカ・ブッシュジュニア政権のもとでの「原子力ルネッサンス」の動きでした。スリーマイル島原発事故以降、原子力産業が停滞していたアメリカが2001年に「国家エネルギー政策」を発表。再度、原発推進を掲げたのです。
米エネルギー省(DOE)は2002年には「原子力2010計画」を発表。原発の新規建設を促進し始めました。

これに日本の側から飛びついたのが、小泉純一郎首相でした。
当時、日本は高速増殖炉もんじゅの事故やJCO事故によって、原子力政策が暗礁に乗り上げており、離脱の可能性も生まれていた時期であったとも言えました。
しかし小泉政権はブッシュ政権の後ろをピッタリとフォローしつつ、原子力政策の強化に舵を切っていきました。その重要な柱が2005年に原子力委員会から提出され、政府方針として閣議決定された「原子力政策大綱」でした。
小泉政権はこれを2006年の「骨太方針」に明記し、これに基づき、2006年に綜合資源エネルギー調査会原子力部会によって「原子力立国計画」が確定されました。

そこで打ち出されたものこそ、既存原発の60年間運転、2030年以後も原発依存を30~40%程度以上に維持、プルサーマル・再処理の推進、もんじゅの運転再開と高速増殖炉サイクル路線の推進、核廃棄物処分場対策の推進でした。
さらに海外進出を念頭においた「次世代原子炉」開発、ウラン資源の確保、原子力行政の再編と地元対策の強化などが打ち出されました。それまで行ってこなかった原発輸出もここで大きく位置づけられたのでした。
以下、原子力政策大綱と原子力立国計画を示しておきます。

 原子力政策大綱
 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/tyoki/taikou/kettei/siryo1.pdf

 原子力立国計画
 http://www.enecho.meti.go.jp/topics/images/060901-keikaku.pdf

これに企業の側からもっと大きく呼応したのが他ならぬ東芝であり、そのもとで行われた最も大きな経済行為が2006年2月の米原発大手ウェスチングハウス買収の発表でした。
もともと同社は経営悪化から会社を分社化して売り出し、原子力部門を英国核燃料会社(BNFL)と米エンジニアリング大手モリソン・クヌードセンの合弁会社にそれぞれ売却していました。しかしBNFLも抱えきれなくなり2005年7月に売りに出されたのでした。
東芝はこれに応じようとしたのですが、もともとウェスチングハウス社は加圧水型原発の特許を持つメーカーであったため、加圧水型を製作してきた三菱もアレバと組んで買収に参画しました。日立もまた同じように名乗りを上げました。
これに対して東芝は、当時2000億円規模、高値でも3000億円と言われた同社になんと倍に近い5000億円強の価格をつけ、三菱、日立をおさえて買収に成功しました。

そもそもそれまで東芝は、GEと組んで沸騰水型原発の製造に関わってきましたが、ここで加圧水型のノウハウも手にすることで、原子力産業全体に大きくコミットメントしようとしたのだと思われます。
この買収は2005年6月に就任した西田社長のもとで行われましたが、実際の仕切りを行ったのは原子力部門を登りつめて、西田氏に次いで後に社長となった佐々木則夫専務(当時)だったと言われています。
これに続いて東芝は、2009年2月25日に「サウス・テキサス・プロジェクト」の受注を発表しました。テキサス州に140万ワットの沸騰水型原発2基を作る計画であり、スリーマイル島事故以降、初めて作られる原発となる予定でした。
東芝にとっても初めての海外受注原子力プラントでした。以下、当時、東芝が発したプレスリリースをご紹介しておきます。

 米国テキサス州の原子力発電プラント受注について
 TOSHIBA 2009年02月25日
 https://www.toshiba.co.jp/about/press/2009_02/pr_j2502.htm

こうした強気の会社運営のもとで東芝は2008年3月期に売上高過去最高を記録し、どこまでも伸び上っていくかのような好調な姿勢を示しました。
ところがすでにこの頃から、ウェスチングハウス社をあまりの高値で強引に買い取った影響が出始めていたのでしょう。実はこの2008年から不正会計が始まっていました。
さらに同年9月にはリーマンショックが発生。2009年3月期には、不正会計のもとでも営業損益2500億円超の赤字が記録されました。
この時期に社長に佐々木則夫氏が就任し、同社はますます原子力部門への傾斜を強め、展望は「サウス・テキサス・プロジェクト」に託されていきましたが、その必死の計画が2011年3月の福島原発事故の影響によって完全にとん挫してしまったのでした。以降、東芝はどんどん追い詰められていきました・・・。

続く

 

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明日に向けて(1116)【要注意】8月2日福島3号機の20トンのがれき撤去が厳重警戒の中で行われます!

2015年08月01日 23時30分00秒 | 明日に向けて(1101~1200)

守田です。(20150801 23:30)

7月24日から27日にかけて広島県尾道市、岡山県瀬戸内市、広島県福山市、岡山県和気町で連続講演してきました。
素晴らしい出会いにたくさん恵まれ、新たな情報も得てくることができましたが、いささか疲れてしまい、その後、静養していて「明日に向けて」の更新ができませんでした。申し訳ありません。
8月に入ったので、心機一転、発信を再開していきたいと思いますのでよろしくお願いします。

さて今宵は【要注意】と題して、明日(8月2日)に福島第一原発の現場で行われる3号機のがれき撤去の情報を配信します。
ポイントになることは核燃料のプールの上にある20トンの装置の3か所にフックをかけての撤去が行われようとしているのですが、失敗した場合に、核燃料の上に落下する可能性があり、危険性が高いということです。
このため東電は、「敷地内の作業員の安全を考慮して」「撤去作業中はほかの作業をすべて中断する」と発表しています。
ちなみに一つの作業の遂行のために他のすべての作業を中止するのは事故直後の混乱期を除いては初めてのことだそうです。それだけ危険性が高い作業であることを注視する必要ありです。

この件に関しては、おしどりまこさん、けんさんが最も詳しく丁寧な報道を行っていますので、以下に紹介します。
この記事によれば、東電自身は万が一、20トンの装置を燃料棒の上に落下させてしまった場合、「敷地境界の被ばく線量は10μSV」と発表しているそうですが、本当にそれだけで済むかどうかまったくわかりません。

 3号機SFPの燃料交換機の引き上げは不発弾処理と同じ!?
 2015-07-27 OSHIDORI Mako&Ken Portal / おしどりポータルサイト
 http://oshidori-makoken.com/?p=1264

 【続報】8月2日「万が一のことを考え」福島第一原発敷地内の作業は全て中断予定
 2015-07-29 OSHIDORI Mako&Ken Portal / おしどりポータルサイト
 http://oshidori-makoken.com/?p=1320

この3号機の燃料プールの問題はいろいろと大きな問題を孕んでいます。
何よりも3号機でおきた爆発が、どうみても水素爆発とは思われないことです。多くの方が、燃料プールで核爆発が起こったのではないかと推測しています。 
この点を論じるためにネットから1号機と3号機の爆発を比較した映像を拾いましたのでご紹介します。報道番組の一部を切り取ったものです。

 福島原発1、3号機爆発映像
 https://www.youtube.com/watch?v=VLJspb_mo-s

1号機の爆発は確かに水素爆発だろうと思われます。東電は原子炉内で発生した水素が建屋の上部に溜まり爆発したとしていますが、その場合、確かに水素と酸素が化合するので水蒸気が発生し、断熱膨張して急速に冷えて湯気にかわり白く見えます。
また爆発の影響は全体にいわば横に向けボワッと広がっています。これらから「水素爆発」という東電の発表に嘘はないだろうという評価がなされています。
しかし3号機は見るからにまったく違う爆発をしています。水素爆発では起こりえないとされている火花が起こった後、上方向にドーンと吹きあげ、たくさんの塊が飛ばされています。煙も黒ずんでいてキノコ雲状にもくもくと発達していきました。
これらから燃料プールの中で小規模な臨界爆発が起こったのではないかと推測されていますが少なくとも水素爆発でなかったことだけは確かです。

にもかかわらずこの爆発は未だに水素爆発だとされ続けています。ここに大きな問題があります。
重要なことはこの爆発が燃料プール内で起こった核爆発であったとして、それが明らかになると、全国にある燃料プールの危険性が際立つこと、可能な限り早く燃料を降ろすべきであることが全面化することです。
これまで述べてきたように、そもそも日本の原発の燃料プールの多くが「リラッキング」で核燃料を詰めてしまっています。その際たるケースが福島第一原発なのでした。そこで核爆発が起こったことが分かればすべての原発はもうとても容認されません。
東電や原子力村はこのことを十分に認識しつつ、3号機の爆発の核心に触れることがない形でがれき撤去を進めようとしているように思えます。

それがすぐに何らかの危険性を示しているとまでは言えないのですが、ともあれ今は、20トンのがれきが無事に撤去され、大事に至らないことを祈りつつ、注視しておく必要があります。
もう一点。福島3号機は東芝製です。東芝は他に2号機、5号機、6号機にも関わっています。正確には純然たる東芝製が3号機と5号機。2号機、6号機は東芝とGEとの連合による製作です。
このことが東芝の経営上の困難の大きな根拠となり、会計不正問題を加速させたことは間違いないですが、さらにここで核爆発があったことが明らかになれば東芝の原発はもうどこでも決定的に売れなくなるでしょう。
そのことは経営悪化にあえぐ東芝を一挙に瓦解させるほどの位置を持っているのではないかと思われます。日本からの原発輸出も極めて困難になるでしょう。

だから3号機の爆発の実相が必死になって隠蔽されているのではないかと僕には思えます。また真実を隠蔽しながらの廃炉作業が何らかの無理を生じさせることにつながってはいるのではないかとも懸念されます。
ともあれこれらのことも視野に置きつつ、がれき撤去作業-燃料棒撤去作業のウォッチを続けていきたいと思います。

資料として残すためにもNHKの記事を示しておきます。

*****

福島第一原発 3号機プールの巨大がれき撤去へ
NHK NEWSWEB 7月30日 4時02分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150730/k10010171531000.html
 
東京電力福島第一原子力発電所3号機では爆発で吹き飛んで使用済み燃料プールに落下した重さ20トンの巨大な装置の撤去が急がれていて、東京電力は、これまで準備を進めた結果、来月2日に撤去作業を行う方針を固めました。
しかし、装置が落下すると核燃料が損傷するおそれもあり、慎重に作業を進めることにしています。

福島第一原発3号機の原子炉建屋の最上階にある使用済み燃料プールには今も566体の核燃料が残されたままとなっていますが、爆発によって吹き飛んだ大量のがれきがプールに落下し、核燃料を取り出す大きな支障となっています。
このため東京電力はおととしからがれきの撤去を進めていて、この中でも長さ14メートル、重さ20トンと最も大きい「燃料交換機」と呼ばれる装置について、来月2日に撤去作業を行う方針を固めました。
現場は放射線量が極めて高く人が直接作業できないため、遠隔操作のクレーン2台を使って燃料交換機をつり上げて運び出す計画で、撤去が終われば核燃料の取り出しに向けた大きな一歩となります。
一方で万が一、撤去作業中に燃料交換機が落下すれば核燃料が損傷するおそれがあります。実際、去年8月には重さ400キロある装置を引き上げようとして誤って水中に落としていて、核燃料の損傷はありませんでしたが、撤去作業が4か月中断しています。
このため東京電力は今回の作業に先立ってがれきの状況を詳細に調べて手順を確認するとともに、燃料交換機の形に合わせた専用の工具を開発したり、核燃料の上にクッションを置くなどして準備を進めてきました。
さらに、3号機の燃料プールは外部を覆うものがないため、万が一の際の敷地内の作業員の安全を考慮してもともと廃炉作業が少ない日曜日を選ぶとともに、撤去作業中はほかの作業をすべて中断するなど、細心の注意を払って作業を進める方針です。

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