明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1130)【訂正記事】沸騰水型原発と加圧水型原発の違い、及び加圧水型原発の構造的弱点について

2015年08月25日 02時00分00秒 | 明日に向けて(1101~1200)

守田です。(20150825 02:00)

この間、川内原発再稼働問題について連続的に記事を書いていますが、加圧水型原発の構造的弱点を解説した記事の中で、細かい点ながら幾つくか間違いをおかしてしまいました。
問題の記事は8月22日に配信した「明日に向けて(1127)再稼働した川内原発でさっそくトラブル発生!ただちに運転を中止すべきだ!」です。
今回も京都精華大学の細川弘明さんが丁寧に指摘してくださいましたので、間違った内容を記載してしまったことをお詫びし、訂正記事を書かせていただきます。
なお間違いをそのままネット上に上げておくのはよくないので、この記事を配信後、(1127)の記事内容も訂正します。(1127)には訂正を施したことのみを記載します。同記事を転送して下さった方はお手数で恐縮ですがこの(1130)もご転送ください。

問題点の説明のために前提として再度、加圧水型原発と沸騰水型原発の違いを説明します。
これら二つの原発はともに軽水炉と呼ばれるもので、水を核分裂で生じる熱で沸騰させてタービンを回して発電しています。
この際、沸騰水型原発は核分裂が行われている原子炉の圧力容器内で水を沸騰させ、配管で蒸気をタービン建屋に送ってタービンを回し、そののちに海水と配管で接する復水器に送って冷やして水に戻してから再び炉内に入れています。
このため沸騰水型原発ではタービン建屋が激しく汚染されてしまいます。

さて僕の記述のあやまりはまずはこの先にこう書いたことです。
「また復水器にトラブルがあり、穴などがあくと高濃度の放射能を含む一次冷却水がすぐに海水と接してしまうため、放射能がすぐに海に出て行ってしまうことになります。」

この点に関して細川さんから以下のようにご指摘を受けました。(なお細川さんの指摘が分かりやすいようにするために細川さんの文章の引用の冒頭に〇をつけます)
「〇復水器細管の外側は蒸気で、かつ、海水側のほうが圧力が高いので、「放射能がすぐ海に出て行ってしまう」という事態はおこりにくい筈です。もちろん、事故の様態によってはそういうこともありうるのかもしれませんが。
(通常運転時で海に放射性物質が流出するのは、海水中(復水器細管中)の微小な金属片や腐食物などが、冷却系からチューブの壁をこえて透過してくる中性子線によって放射化することによるもの。)
 沸騰水型の大きな問題は、タービン建屋の作業員の労働被曝が桁違いに大きくなってしまう、ということだと思います。」

僕の間違えは、復水器に通っている一次冷却水は蒸気の状態で、かつ海水の方が圧力が高いために、海水側には出にくいということを理解していなかったため、沸騰水型で復水器でトラブルがあるとすぐに放射能漏れになると思ってしまっていた点です。
また通常運転における放射性物質の流出が、復水器をとおる海水中の物質が、冷却系からの中性子の照射によって放射化する(放射能になってしまう)ために起こる点も理解できていませんでした。
換言すればこの構造のもとでは、配管に穴があくなどのトラブルがなくとも、通常運転で放射能が海中に放出されいてることが分かります。重要な点です。

またこれに続いて僕は次のように書きました。
「これに対して加圧水型原発は、炉心をまわる水は沸騰させず、二次冷却水を蒸気にしてタービンをまわすためこの工程ではタービンを直接汚染することはありません。」

これに対して細川さんから以下のコメントをいただきました。
「〇厳密にいうと、上記の放射化は蒸気発生器内でもおこるので、タービンもわずかながら放射能汚染されます。」
・・・なるほどです。

さらに重要なのは次の点です。僕は加圧水型原発に関してこう書きました。
「しかし何といっても構造が複雑になり、たくさんの細管がかけめぐることになります。とくに一次冷却水は沸騰させないために高圧をかけているため、沸騰水型原発と比べてより高いストレスが配管にかかることになります。
構造上最大の弱点とされているのがわずか直径2センチの多数の細管を160気圧の温水が駆け巡る蒸気発生器で、実際に1991年2月9日に美浜原発2号機で細管の破断が起こり、大量の放射能水が二次系を汚染し、その一部が環境をも汚染してしまいました。」

この僕の記述そのものに間違いがあるわけではないのですが、より大事な点として細川さんは以下の点を指摘されました。
「〇細管破断事故は、二次系の汚染(+圧力逃し弁の作動による環境汚染)もさることながら、炉心の冷却材喪失(LOCA)につながる故に恐れられています。とりわけ美浜2の場合、それまで「起こりえない」とされていたギロチン破断(全周破断)でした。」

これもなるほどです。二次系や環境の汚染も問題なのですが、より深刻なのは蒸気発生器での細管破断では一次冷却水漏れが生じているわけですから、炉心の冷却材喪失につながり、メルトダウンなど過酷事故につながりかねないことだということです。
僕自身、(1127)の記事の中で、加圧水型原発は、沸騰水型原発に対してはるかに高い圧力で一次冷却水を回しているがために、より過酷事故になりやすいことを指摘しましたが、細管破断はまさにそれに直結しかねない危険性を孕んでいるわけです。
細川さんはここで「美浜2の場合、それまで「起こりえない」とされていたギロチン破断(全周破断)でした」との指摘も加えています。
これはそれまで細管でのトラブルがあっても「ピンホールができるぐらい」とされて、完全に破断してしまうことはないとされていたことが実際の事故によって覆されたこと、より冷却材喪失の可能性が大きいことが明らかになったことを意味しています。

このことで明らかになった蒸気発生器の構造的問題について僕は次のような解説を加えました。
「このため日本中の加圧水型原発を点検せざるをえなくなりましたが構造上ピンホールが多数発生してしまうことが分かり、点検時に穴のあいた配管には栓をして閉ざしてしまい、それでも間に合わない場合、蒸気発生器そのものを交換せざるをえませんでした。
ここから蒸気発生器は加圧水型原発の構造的弱点として把握されるようになりました。」

細川さんはこれにも以下のような付け足しを行っています。
「〇というよりも、蒸気発生器の寿命がすなわちPWRの寿命とされていたのに、それが予想よりずっと早く発生したため、設計にない延命手術をすることになった、というのが最大の問題です。つまり、廃炉にすべきところ、無理に使い続けているということ」
要するに加圧水型原発(PWP) は、設計段階では蒸気発生器を取り換えながら使うことなど想定していなかったのに、設計上の想定を越えて「蒸気発生器の交換」というあらたな大工事を行って延命していきているということです。
この点でベントの後付けと同じような、設計段階での想定の破産の事後的な取り繕いが行われてきているということです。ベントの後付けが間違っているように、交換を行わなければならない蒸気発生器など本来あってはならず、設計をしなおすべきなのです。

さて問題はさらに続きます。このように蒸気発生器の問題が明らかになったために、加圧水型原発ではその後にさすがに一時冷却系統や蒸気発生器の点検を綿密に行うようになりました。
しかしこれに対して見過ごされてきた二次系統で大事故が起こりました。美浜2号機での二次冷却系の破断事故です。高圧、高熱の水蒸気が噴き出して5人の作業員が亡くなった大惨事でした。
この事故に対しても細川さんは次のように指摘してくださいました。
「〇美浜3でおきたような二次系の大破断は、とりもなおさず蒸気発生器の熱交換機能の喪失に直結しますので、この場合も、メルトダウンにつながるシナリオは存在した筈です。そちらに進行せずに済んだのは、幸運。」

・・・この事故の時も、メルトダウンに至る可能性はあったはずであり、冷却系の事故は常にメルトダウンの引き金になりうることが踏まえられなければならないということです。
それらからすると現在の復水器におけるトラブルも、より深刻化した場合に二次冷却系の事故に繋がり、さらに一次冷却水の喪失=メルトダウンにつながる可能性もありうるということです。

総じて私たちはこのように、冷却系の事故がメルトダウンにつながる危険性を孕んでいること、しかも加圧水型原発では一次冷却水が高圧であるがゆえに、配管破断でより抜けやすいために危険度がより高いことを見ておく必要があります。
この点を踏まえて、21日に明らかとなった復水器でのトラブルを踏まえて、川内原発をただちに停止すべきことを訴えていきましょう!

コメント (1)
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