明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1852)「黒い雨」訴訟勝利は、被ばく被害の意図的な矮小化をこそえぐりだしている!被爆者認定、原爆症認定の見直しが必要だ!

2020年08月02日 23時30分00秒 | 明日に向けて(1701~1900)

守田です(20200802 23:30)

被ばく被害は意図的に矮小化されてきた

前回、「黒い雨」訴訟の画期的な意義を書きました。被曝の実態はものすごく過小に見積もられていたのです。
この点を確認するために、再度、地図をで確認していきましょう。中国新聞に載った「『黒い雨』訴訟関連地図 爆心地と推定降雨域」を参照したいと思います。
https://www.chugoku-np.co.jp/local/news/article.php?comment_id=666575&comment_sub_id=0&category_id=1167


中国新聞より

これを観れば一目瞭然ですが、非常に広範囲な地域が黒い雨による被曝地域から除外されてきています。
重要なのはこのことが、放射線被曝による傷害は、半径2.5キロ以内でしか起こらなかったしてきた、アメリカ・日本両政府の見解のあやまりも突き出していることです。
その点で米日両政府による、被ばく被害の意図的な矮小化こそが明らかにされたのです。

というのは、「被爆者」というと「原爆の放射線による傷害を受けて援護されている人」と捉えている方も多いのではと思うのですが、必ずしも放射線被曝の被害をすべて認められているわけではありません。
実は被爆者認定を受けた方の多くが、放射線を浴びたために発症した病(原爆症)についての認定を、なかなか得られていないのです。
これに対して放射性物質の混じった黒い雨にうたれた人々は、皮膚からも口からも放射性物質が体に入って内部被曝しました。今回、それが2.5キロ圏内どころか、爆心地から何十キロもの規模で起こっていたことが明らかにされたのです。


被爆者認定、原爆症認定の見直しが必要

このことが意味するのは、これまで被爆者の調査で分かってきたとされてきたとされる原爆被害に関するデータを、一から見直さなければならないこと。被爆者認定、さらに原爆症認定を見直すべきだということです。
ものすごく広範囲にわたる内部被曝の影響が無視され、カウントされずに作られたのがこれまでのデータなのです。それだけでも放射線被曝の影響がすごく軽く扱われてきたことは明白です。
例えば文科省の発行した『放射線副読本』には、放射線と人体の関係については、原爆で「放射線の影響を受けた人々への調査」が進められることで分かってきていると書いてありますが、こうした説明の大前提が崩れさったのです。

放射線防護の基準そのものが大きく見直さなければならないのであり、だから私たち全員に影響が及ぶ問題なのです。
福島原発事故後、この矮小化されたデータに基づいていた防護のための基準すらが「緩和」され、危険地帯への「帰還」が強制されだしていますが、その前提も崩壊したことを力強く指摘しなくてはなりません。
もちろん問題は日本だけにとどまるものではありません。ウラン鉱山のまわり、人類初の核実験が行われたトリニティサイトのまわり、あるいは世界各地の核実験場、そして核廃棄物処分場、そのすべての防護基準を見直すべきです。

もちろんスリーマイル島、チェルノブイリ、福島など、原発事故の影響の評価も見直すべきで、その点でこの画期的な勝利は、「パンドラの箱」を大きく開けたとも言えます。
この画期的な成果を、被曝から命を守ることに大きくつなげるのが私たちに課された使命です。
この素晴らしい判決を引き出してくださったみなさんの努力に、心からの尊敬と感謝を送りつつ、さらにみんなで前に進みましょう!


みなさんに心からの尊敬と感謝を送ります! ―勝訴後の報告集会 時事通信より

#黒い雨 #被爆者 #広島原爆 #原爆症 #内部被曝

*****

「明日に向けて」連載1800回越えに際し、バージョンアップに向けたカンパを訴えています。カンパの振込先をご案内します。
振込先 ゆうちょ銀行 なまえ モリタトシヤ 記号14490 番号22666151
他の金融機関からのお振り込みの場合は
店名 四四八(ヨンヨンハチ)店番 448 預金種目 普通預金 口座番号 2266615

Paypalでも自由に金額設定をしてカンパしていただけます。この記事に共感していただけた方もぜひお願いします。
https://www.paypal.me/toshikyoto/500

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

明日に向けて(1851)「黒い雨」訴訟は画期的!原爆被害はもっと広範に及んでいた

2020年08月01日 13時00分00秒 | 明日に向けて(1701~1900)

守田です(20200801 13:00)

戦後75年を経て新たな「被爆者認定」が

7月29日に広島地裁で画期的な判決が出ました。
原爆投下後に降った放射性物質を大量に含んだ「黒い」雨を浴びながら、国によって「被爆者」と認められず、なんらの援護措置も受けらなかった方たちが勝ち、被爆者健康手帳の交付が命じられたのです。
歴史的な判決の一つであり、公共性が高いので、アーカイブのためにも朝日新聞の記事全文を貼り付けておきます。

「黒い雨」訴訟、原告側が勝訴 全員に手帳の交付命じる
朝日新聞 比嘉展玖 2020年7月29日 17時19分
https://digital.asahi.com/articles/ASN7Y4QMJN7WPITB021.html


原告勝利を報じるNHK

広島の原爆投下後に降った「黒い雨」によって健康被害を受けたにもかかわらず、広島市や広島県に被爆者健康手帳の申請を拒否されたのは違法だとして、手帳の交付を求めた訴訟の判決が29日、広島地裁であった。
高島義行裁判長は原告の訴えを認め、原告84人全員に手帳の交付を命じた。黒い雨をめぐる司法判断は初めて。

国は激しく降ったとされる大雨地域に限り、援護の対象としてきた。それ以外の地域の人に手帳の交付を認めた今回の司法判断は、戦後75年の節目に、国の援護行政のあり方を厳しく問うものといえる。
原告(遺族9人を含む)はいずれも原爆投下時、援護の対象とはならない「小雨地域」や降雨地域の外にいたとされる人たち。
被爆者援護法で「被爆者」と認められれば、手帳が交付され、医療費の自己負担分が無料となり各種手当も受けられる。

国は大雨地域の人を「被爆者」とは直接には認めず、通達によって、その後の健康診断でがんなどの特定疾病がみつかれば、手帳を交付するという「切り替え」と呼ばれる政策で救済してきた。
判決は、こうした通達を根拠とする国の援護行政の枠組みに対し「法律による行政の原理の下では、許されるはずはない」と厳しく指摘。国側が、暫定的な措置として「裁量の範囲」とした反論を退けた。

黒い雨が降った範囲について、判決は、国が大雨・小雨地域の根拠とした1945年の気象台の調査に対し「黒い雨が降ったであろう推論の根拠」という評価をし、他方、国の範囲の何倍も広かったとする原告の主張した専門家の意見を「関係資と整合性もあり有力な資料」と位置づけ、黒い雨の実際の降雨範囲は国の大雨・小雨地域よりも広いと断定した。

そのうえで、原告らが援護法で「被爆者」とされる類型の一つ「放射能の影響を受けるような事情の下にあった者」(3号被爆者)といえるかどうかを個別に検討。原告一人一人に対し、農作業中や屋外にいた際に黒い雨を浴びたなどとした上で、がんなどの援護対象となる特定疾病を発症していることから、84人の原告全員を援護法上の「被爆者」と認め、手帳の交付を命じた。(比嘉展玖)


判決のポイント―被ばく被害はもっと広範囲

今回の判決のポイントは、国が、「激しく降ったとされる大雨地域に限り、援護の対象としてきた」ことを広島地裁が覆した点にあります。
これらを理解するための予備知識となるものが、NHKの「時論公論」で示されました。参考になるのでURLをご紹介しておきます。

「『黒い雨』訴訟原告勝訴 「被爆」の意味は」(時論公論)
NHK 2020年07月29日 (水) 清永 聡  解説委員
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/433548.html

ここでも解説されていますが「黒い雨」が降った地域を調べたのは、当時の広島管区気象台の職員らわずか6人でした。
「放射能の専門家ではない上、食料事情も悪く、日帰りの範囲でしか調査できませんでした」とされています。聴き取りも100数十件のみ。爆心地から離れた地域ほど手が及ばなかったそうです。
当事者は精一杯だったでしょうが、それでもまったく不十分だった調査をもとに、国は「小雨」とされた地域、実際にはよく調べられなかった地域を、「援護地域」に含めなかったのです。


NHK 時論公論での解説より

このため、長年、実際には「黒い雨」をたくさん浴びた人々が無視され、「被爆者」から除外されていましたが、広島市が2008年に3万6千人を相手にアンケート調査を行いました。
この結果、黒い雨が降った地域は、今、認定されている地域の6倍に広がる可能性があることが分かりました。2010年に広島市と広島県が、国に支援の拡充を求めましたが、国は拒否しました。
今回の判決はこうした点を「法律による行政の原理の下では、許されるはずはない」と厳しく指定し、原告全員に被爆者手帳を交付することを命じました。

これらの点、このNHKの番組で詳しく解説されているので参考になります。
ただし大事な一点が抜けている。こうした矮小化が核戦略推進に走ってきたアメリカ政府と、それに全面的に追従してきた日本政府の意図的政策として行われたことです
そのことでアメリカは、ウラン採掘、精錬、核兵器製造、核実験、核廃棄物の杜撰な処理を行い、自国民を含む世界の人々を被ばくさせ続けてきた。今回の判決の画期的意義はその流れに掉さした面もあることです。

次回はこの点について詳しく解説します。

続く

*****

「明日に向けて」連載1800回越えに際し、バージョンアップに向けたカンパを訴えています。カンパの振込先をご案内します。
振込先 ゆうちょ銀行 なまえ モリタトシヤ 記号14490 番号22666151
他の金融機関からのお振り込みの場合は
店名 四四八(ヨンヨンハチ)店番 448 預金種目 普通預金 口座番号 2266615

Paypalでも自由に金額設定をしてカンパしていただけます。この記事に共感していただけた方もぜひお願いします。
https://www.paypal.me/toshikyoto/500

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする