明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1851)「黒い雨」訴訟は画期的!原爆被害はもっと広範に及んでいた

2020年08月01日 13時00分00秒 | 明日に向けて(1701~1900)

守田です(20200801 13:00)

戦後75年を経て新たな「被爆者認定」が

7月29日に広島地裁で画期的な判決が出ました。
原爆投下後に降った放射性物質を大量に含んだ「黒い」雨を浴びながら、国によって「被爆者」と認められず、なんらの援護措置も受けらなかった方たちが勝ち、被爆者健康手帳の交付が命じられたのです。
歴史的な判決の一つであり、公共性が高いので、アーカイブのためにも朝日新聞の記事全文を貼り付けておきます。

「黒い雨」訴訟、原告側が勝訴 全員に手帳の交付命じる
朝日新聞 比嘉展玖 2020年7月29日 17時19分
https://digital.asahi.com/articles/ASN7Y4QMJN7WPITB021.html


原告勝利を報じるNHK

広島の原爆投下後に降った「黒い雨」によって健康被害を受けたにもかかわらず、広島市や広島県に被爆者健康手帳の申請を拒否されたのは違法だとして、手帳の交付を求めた訴訟の判決が29日、広島地裁であった。
高島義行裁判長は原告の訴えを認め、原告84人全員に手帳の交付を命じた。黒い雨をめぐる司法判断は初めて。

国は激しく降ったとされる大雨地域に限り、援護の対象としてきた。それ以外の地域の人に手帳の交付を認めた今回の司法判断は、戦後75年の節目に、国の援護行政のあり方を厳しく問うものといえる。
原告(遺族9人を含む)はいずれも原爆投下時、援護の対象とはならない「小雨地域」や降雨地域の外にいたとされる人たち。
被爆者援護法で「被爆者」と認められれば、手帳が交付され、医療費の自己負担分が無料となり各種手当も受けられる。

国は大雨地域の人を「被爆者」とは直接には認めず、通達によって、その後の健康診断でがんなどの特定疾病がみつかれば、手帳を交付するという「切り替え」と呼ばれる政策で救済してきた。
判決は、こうした通達を根拠とする国の援護行政の枠組みに対し「法律による行政の原理の下では、許されるはずはない」と厳しく指摘。国側が、暫定的な措置として「裁量の範囲」とした反論を退けた。

黒い雨が降った範囲について、判決は、国が大雨・小雨地域の根拠とした1945年の気象台の調査に対し「黒い雨が降ったであろう推論の根拠」という評価をし、他方、国の範囲の何倍も広かったとする原告の主張した専門家の意見を「関係資と整合性もあり有力な資料」と位置づけ、黒い雨の実際の降雨範囲は国の大雨・小雨地域よりも広いと断定した。

そのうえで、原告らが援護法で「被爆者」とされる類型の一つ「放射能の影響を受けるような事情の下にあった者」(3号被爆者)といえるかどうかを個別に検討。原告一人一人に対し、農作業中や屋外にいた際に黒い雨を浴びたなどとした上で、がんなどの援護対象となる特定疾病を発症していることから、84人の原告全員を援護法上の「被爆者」と認め、手帳の交付を命じた。(比嘉展玖)


判決のポイント―被ばく被害はもっと広範囲

今回の判決のポイントは、国が、「激しく降ったとされる大雨地域に限り、援護の対象としてきた」ことを広島地裁が覆した点にあります。
これらを理解するための予備知識となるものが、NHKの「時論公論」で示されました。参考になるのでURLをご紹介しておきます。

「『黒い雨』訴訟原告勝訴 「被爆」の意味は」(時論公論)
NHK 2020年07月29日 (水) 清永 聡  解説委員
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/433548.html

ここでも解説されていますが「黒い雨」が降った地域を調べたのは、当時の広島管区気象台の職員らわずか6人でした。
「放射能の専門家ではない上、食料事情も悪く、日帰りの範囲でしか調査できませんでした」とされています。聴き取りも100数十件のみ。爆心地から離れた地域ほど手が及ばなかったそうです。
当事者は精一杯だったでしょうが、それでもまったく不十分だった調査をもとに、国は「小雨」とされた地域、実際にはよく調べられなかった地域を、「援護地域」に含めなかったのです。


NHK 時論公論での解説より

このため、長年、実際には「黒い雨」をたくさん浴びた人々が無視され、「被爆者」から除外されていましたが、広島市が2008年に3万6千人を相手にアンケート調査を行いました。
この結果、黒い雨が降った地域は、今、認定されている地域の6倍に広がる可能性があることが分かりました。2010年に広島市と広島県が、国に支援の拡充を求めましたが、国は拒否しました。
今回の判決はこうした点を「法律による行政の原理の下では、許されるはずはない」と厳しく指定し、原告全員に被爆者手帳を交付することを命じました。

これらの点、このNHKの番組で詳しく解説されているので参考になります。
ただし大事な一点が抜けている。こうした矮小化が核戦略推進に走ってきたアメリカ政府と、それに全面的に追従してきた日本政府の意図的政策として行われたことです
そのことでアメリカは、ウラン採掘、精錬、核兵器製造、核実験、核廃棄物の杜撰な処理を行い、自国民を含む世界の人々を被ばくさせ続けてきた。今回の判決の画期的意義はその流れに掉さした面もあることです。

次回はこの点について詳しく解説します。

続く

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