昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

鼠小僧次郎吉 ~さると猿回し~ 十三

2010-08-09 21:38:23 | 小説
小柄な次郎吉は、
実年齢よりも若く見えた。

屋敷内において、
回船問屋の娘であることを常に意識している腰元は、
実の所疲れていた。
気の許せる相手を捜していたのである。

腰元の方が年下であったが、
次郎吉の所作や言葉使いに、
弟を感じていた。

臨時に入ってきた次郎吉は、
そんな腰元にとって格好の相手であった。
暇を見つけては次郎吉と談笑していて、
見咎められることも多々あった。

些細なことで叱りつけられることに憤慨をしている時、
次郎吉に慰められたことがきっかけであった。
その後、やれ、
かんざしだ、
くしだと、贈り物をされたことで、
次郎吉に好意を抱き始めた。

二人の心がうち解けるにつれ、
色々の愚痴をこぼし始めた。

実家に文を出しても、
二年の辛抱だと取り合ってくれない。
それに比べ、
次郎吉は腰元の見方だ。
次郎吉の憤慨ぶりが、
腰元には嬉しい。

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