(五)
「じゃ、じゃこれから、お母さんって呼んでもいい?」
「もちろんですよ、小夜子さん。こちらからお願いしたいぐらいです。
勝利なんか、ほんとに無口で。それに帰りも遅いですし、淋しくてね」
傍から見れば、仲睦まじい嫁姑に見えた二人だった。
互いの心がしっかりと結びついて、あれ程に剣呑な表情を見せていた小夜子が、柔和な表情を見せるようになった。
「竹田さんに付き添っていただいてから、ほんと大人しくなったわね」
「そうなの、びっくりよ。助かるわ、ほんとに」
「竹田さんの息子さんってさ、ちょっと良い男じゃない? それに優しそうだしさ」
「旦那さんの会社に勤めてるんでしょ? 将来の幹部社員だって」
「そうなの? それじゃあたし、アタックしよっかな?」
「ムリ、ムリ。あんた如きじゃ、釣り合いがとれないわよ。それにもう居るんじゃないの、恋人は」
と、看護婦の間でかまびすしい。
近くに来ましたので…と、竹田が顔が見せた。
今朝突然に、武蔵に「小夜子の具合を見てきてくれ」と言われた。
この二日ほど接待が続いた武蔵で、小夜子に顔を見せていない。
暗に武蔵の忙しさを告げてこいということだ。
ほっといたのではなく、日中は仕事に追われ、といって夜中に酔っ払いが顔を出すわけにもいかぬということだ。
その辺りの説明をしてこいということなのだ。
皆がうらやましがる中、しかめた顔を見せつつ病院へと向かった。
車に乗り込んだ竹田が、小躍りして喜ぶ姿が、配達から戻った者に見つかっていた。
帰社した竹田が、皆に小突かれたのは言うまでもない。
「じゃ、じゃこれから、お母さんって呼んでもいい?」
「もちろんですよ、小夜子さん。こちらからお願いしたいぐらいです。
勝利なんか、ほんとに無口で。それに帰りも遅いですし、淋しくてね」
傍から見れば、仲睦まじい嫁姑に見えた二人だった。
互いの心がしっかりと結びついて、あれ程に剣呑な表情を見せていた小夜子が、柔和な表情を見せるようになった。
「竹田さんに付き添っていただいてから、ほんと大人しくなったわね」
「そうなの、びっくりよ。助かるわ、ほんとに」
「竹田さんの息子さんってさ、ちょっと良い男じゃない? それに優しそうだしさ」
「旦那さんの会社に勤めてるんでしょ? 将来の幹部社員だって」
「そうなの? それじゃあたし、アタックしよっかな?」
「ムリ、ムリ。あんた如きじゃ、釣り合いがとれないわよ。それにもう居るんじゃないの、恋人は」
と、看護婦の間でかまびすしい。
近くに来ましたので…と、竹田が顔が見せた。
今朝突然に、武蔵に「小夜子の具合を見てきてくれ」と言われた。
この二日ほど接待が続いた武蔵で、小夜子に顔を見せていない。
暗に武蔵の忙しさを告げてこいということだ。
ほっといたのではなく、日中は仕事に追われ、といって夜中に酔っ払いが顔を出すわけにもいかぬということだ。
その辺りの説明をしてこいということなのだ。
皆がうらやましがる中、しかめた顔を見せつつ病院へと向かった。
車に乗り込んだ竹田が、小躍りして喜ぶ姿が、配達から戻った者に見つかっていた。
帰社した竹田が、皆に小突かれたのは言うまでもない。
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