昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第一部~(十四)麗子からの手紙・四

2015-07-07 08:46:11 | 小説
僅か三ヶ月でしたけれど、楽しく過ごしました。
皆さん良い方ばかりで、色々と良くして頂きました。
井上課長さんは、特に気を遣ってくださいました。

でも、大変な仕事でした。
初めの頃はミスの連続で、ご迷惑のかけ通しでした。
意気消沈していました私を、励ましてくださいましたのよ、課長さん。

何とかという、バーに連れていってもらいました。
うふふ…お聞きしましたわよ、色々と。
おモテになったようで。

でも、麗子は如何に世間知らずだったことか。
父の庇護の元で、何とノホホンと過ごしていたことか。
そうなの、彼も又然りです。
世間で言う、お坊ちゃまなのです。
その事を告げてみても、庶民とは、違う! と、強弁する彼でした。

それ迄の麗子は、唯ひたすらに彼中心でしたの。
貴方には信じられないでしょうが、本当ですの。
ごめんなさいね。その反動で、貴方には我が儘のし放題でしたわね。
バランスを取っていたのでしょうね。

でも、貴方とお別れしてからは、彼との間にすきま風が吹き始めました。
共通の話題がなくなりましたの。
彼の話題が、何かしら虚ろなものに思え始めました。

といって、彼のことが嫌いになった訳ではありません。
学究肌の彼にとって、実社会の問題など別世界のことですし。
大学院生の彼は、研究に没頭しています。

ですから、麗子のアルバイトに猛反対でした。
染まって欲しくない! と、強く叱られもしました。
でも、後悔はしていません。

貴方には、包み隠さずお話ししますね。
麗子は、大人になりました。
結婚までは、と考えていましたのですけれど。
お互いが、気持ちのズレに不安を感じてしまったのです。
家族には、秘密にしていることなのです。
でも、一度きりですのよ。


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