昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

心象風景 第二弾:ある時の彼 (ラスト)

2010-05-16 00:21:09 | 小説
先ずもって、どうしてもお話しておきたい。
決して誤解をしてもらいたくない、ということである。
筆者は、ある朝の偶然ともいうべき事件に遭遇した男を、
瞬可的に捉えてそれを報告しているのである。


(アンチテーゼと称せるのか?)

彼も又、
吸い付けられるように電車を降りてしまった。
(しかし彼の目的地ではないはずだ。)

電車の出発する軋み音を背後に、
彼は歩いた。
初めは気付かぬその女性も
彼の行動に不審を抱き始めた。

今は、朝である。
助けを呼べば、
誰かが助けてくれるであろう。

筆者も、
すぐにである。
(実は、
気になって降りてしまった。)

しかし女性にも、
断言はできないが、
その心内に
そんなスリルを待つ心があるのかもしれない。

女性の足が速くなる。
と同時に、
彼も又早足になる。

別にどうこうしようというのではない。
唯、
女性の傍らに居たいだけなのだ。
その横顔を、
恍惚として見とれていたいのだ。

えっ、
何故わかる?と問われますか。
しつこい人だ、
話の流れですって。

やがて女性は、
交番の中に飛び込んだ。
彼も又
魅入られたように入った。
(馬鹿な!)

そして全てが終わった。
彼は唯ボー然として、
は会社に向かっている。

一体、
彼に何が起きたのか。
真夏の珍事か・・・。

それとも、
本能に目覚めたのか。
抑圧された実社会に対する、
アンチテーゼだったのか・・・。

最後に是非とも断言しておきたい。
この男は、
断じて筆者ではないことを。

*この作品が、
「恨みます」の導入エピソードになりました。

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