昭和の恋物語り

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長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第一部~ (五) こましゃくれた子供

2014-11-01 11:21:59 | 小説
中学・高校時代の彼は、一心不乱に勉学に勤しんだ。
茂作の叱咤から逃れる為であり、母親の期待に応える為だった。
必然的に級友達とは距離を置くことになった。
相変わらず女子生徒間の憧れの的ではあったが、男子生徒にも増して距離を置いた。
数え切れないほどの恋文が彼の元に届けられていたが、その全てが茂作によって廃棄されていた。

「女なんぞは、勉学の妨げだ!」
「今のタケくんは、勉強することが一番よ」
茂作のそんな言葉に対し、小夜子もこの点については茂作と意見が一致していた。

そんな彼が、唯一接した女性が居た。
本家筋にあたる茂作の兄の娘である早苗だった。
とはいっても、彼より六歳年下であった。
常時会っているわけではなく、茂作が本家に出向いた折りのことだけだった。
子守役として、早苗の遊び相手を命じられていた。

しかし彼にとっては、苦痛以外の何物でもなかった。
早苗とのままごと遊びに興じるのは苦痛だった。
しかし茂作の命に背くわけにもいかず、渋々付き合っていた。
早苗は本家にとって唯一人の女の子のせいか、こましゃくれた子供だった。

物怖じせずに物事に体当たりする気質でもあった。
どちらかといえば、小夜子に似た性格でもあった。
そして又早苗の両親の溺愛から、我慢を強いられることのない生活を送っていた。
欲しがる物全てが買い与えられ、納戸の一つが早苗の持ち物で埋まっていた位だった。


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