(八)
恥ずかしがる勝子を窓辺に引っ張り、二人揃って空に向かって「チュッ!」と、手を振った。
これには母親も呆れ返り「すみません、まだ子どもでして」と、医師に頭を下げた。
「いやいや。案外効果があるかもしれませんよ。この美女二人の、キスですからねえ」
思いもかけぬ医師の言葉に、母親も驚いた。
傍らの看護婦も、思わずクスリと笑いを洩らした。
「いや、こりゃどうも。僕には似合わぬ言葉でしたね。いや、失敬失敬」
頭を掻く医師に、小夜子が声をかける。
「先生。先生にも、投げキッスを上げる。ほんとに、ありがとう。
勝子さん。あなたは、先生のほっぺにキスしてあげて」
「え、えぇぇ。そ、そんなこと…」
頬を赤らめる勝子を、小夜子が医師の傍に押しやった。
「ほら、チュッてしてあげて。先生は恩人なんだから」
「でも…」と、さすがに躊躇する勝子だ。
「い、いいですよ、そんなこと。その気持ちだけで、十分だ」
医師もまた、後ずさりをする。
「御手洗さん、冗談が過ぎますよ」
「だめ! 感謝の気持ちをキチンと伝えなきゃ。
勝子さん、新しい女になりたいんでしょ? 幸せな人生を送りたいんでしょ?
だったら自分の気持ちを素直に表現しなくちゃ」
顔を真っ赤にした、勝子と医師がいた。そして小夜子と看護婦が祝福の拍手をしている。
「お似合いの二人よね、そう思うでしょ」
小夜子の言葉に、ますます顔を赤くする勝子だ。
恥ずかしがる勝子を窓辺に引っ張り、二人揃って空に向かって「チュッ!」と、手を振った。
これには母親も呆れ返り「すみません、まだ子どもでして」と、医師に頭を下げた。
「いやいや。案外効果があるかもしれませんよ。この美女二人の、キスですからねえ」
思いもかけぬ医師の言葉に、母親も驚いた。
傍らの看護婦も、思わずクスリと笑いを洩らした。
「いや、こりゃどうも。僕には似合わぬ言葉でしたね。いや、失敬失敬」
頭を掻く医師に、小夜子が声をかける。
「先生。先生にも、投げキッスを上げる。ほんとに、ありがとう。
勝子さん。あなたは、先生のほっぺにキスしてあげて」
「え、えぇぇ。そ、そんなこと…」
頬を赤らめる勝子を、小夜子が医師の傍に押しやった。
「ほら、チュッてしてあげて。先生は恩人なんだから」
「でも…」と、さすがに躊躇する勝子だ。
「い、いいですよ、そんなこと。その気持ちだけで、十分だ」
医師もまた、後ずさりをする。
「御手洗さん、冗談が過ぎますよ」
「だめ! 感謝の気持ちをキチンと伝えなきゃ。
勝子さん、新しい女になりたいんでしょ? 幸せな人生を送りたいんでしょ?
だったら自分の気持ちを素直に表現しなくちゃ」
顔を真っ赤にした、勝子と医師がいた。そして小夜子と看護婦が祝福の拍手をしている。
「お似合いの二人よね、そう思うでしょ」
小夜子の言葉に、ますます顔を赤くする勝子だ。
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