(九)
十時の開店と同時に、どっと流れ込む人ごみの中に、二人が居た。
「凄いのね、小夜子さん。いつもこんな感じなの?」
軽い息切れを感じつつも、高まる高揚感が勝る勝子だった。
小夜子にとっても、初めての経験だ。
普段はお昼を済ませてからであり、森田の出迎えがあった。
しかし今日は、勝子の希望で開店と同時にした。
「うわあ、素敵! おとぎの国に来たみたい。ねえねえ、小夜子さん。どこ、どこから見て回るの?」
目を爛々と輝かせて、店内を見回す勝子。まるで少女のようなはしゃぎ方だ。
「そうねえ、お洋服からにしましょうか。
勝子さんにぴったりのお洋服を、まず探しましょう。
それからバッグでしょ、お靴でしょ。それに、お帽子もね」
「そんなにたくさん? 勝利に悪いわ、そんな贅沢をして。
勝利はあたしの病院代があるから、自分のものは何も買ってないし」
顔を曇らせる勝子だが、小夜子はまるで意に介さない。
「いいのよ、竹田は。男はね、女性を幸せにする義務があるのよ。
そして女性から、その幸せのおすそ分けをしてもらうの。
女性が嬉しいと、男も嬉しいものなのよ。
でも今日は、私からのプレゼント、贈り物よ」
「だめよ、そんなこと。小夜子さんにはほんとに良くしてもらったんだから。
これ以上甘えることはできないわ」
「だめだめ、そんなことを言っては。
遠慮なんて言葉は、女性には無用の言葉なの」
十時の開店と同時に、どっと流れ込む人ごみの中に、二人が居た。
「凄いのね、小夜子さん。いつもこんな感じなの?」
軽い息切れを感じつつも、高まる高揚感が勝る勝子だった。
小夜子にとっても、初めての経験だ。
普段はお昼を済ませてからであり、森田の出迎えがあった。
しかし今日は、勝子の希望で開店と同時にした。
「うわあ、素敵! おとぎの国に来たみたい。ねえねえ、小夜子さん。どこ、どこから見て回るの?」
目を爛々と輝かせて、店内を見回す勝子。まるで少女のようなはしゃぎ方だ。
「そうねえ、お洋服からにしましょうか。
勝子さんにぴったりのお洋服を、まず探しましょう。
それからバッグでしょ、お靴でしょ。それに、お帽子もね」
「そんなにたくさん? 勝利に悪いわ、そんな贅沢をして。
勝利はあたしの病院代があるから、自分のものは何も買ってないし」
顔を曇らせる勝子だが、小夜子はまるで意に介さない。
「いいのよ、竹田は。男はね、女性を幸せにする義務があるのよ。
そして女性から、その幸せのおすそ分けをしてもらうの。
女性が嬉しいと、男も嬉しいものなのよ。
でも今日は、私からのプレゼント、贈り物よ」
「だめよ、そんなこと。小夜子さんにはほんとに良くしてもらったんだから。
これ以上甘えることはできないわ」
「だめだめ、そんなことを言っては。
遠慮なんて言葉は、女性には無用の言葉なの」
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