昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

大長編恋愛小説 【ふたまわり】(二)の2

2011-02-22 19:05:41 | 小説
「忘れたのか、
五平。
資金集めだと個人客に売った時のことを。
ちまちまやっても、
大した稼ぎにゃならねぇよ。
明日も、
どーん!と荷が入るんだぞ。」
「ですがねえ・・・
ほんとに、
来ますかねえ。」
「おい、お前ら。
昼飯を喰ったらな、
この板を持って、
辻々に立て。
何も言わなくていい。
聞かれたら、
“本日開店です”って、
小声で言え。
小声だぞ、
いいな。
その方がな、
効果あるんだ。
内緒話しに見えるようにな。」
持たされた板切れには、
矢印が書いてあるだけだった。
怪訝そうな表情ながらも、
社長命令だからと、
頷いた。

陽が落ちて、
裸電球に灯りが点いた。
「おい!
品物を並べろ、
箱のままでいいから。
もっと、
もっとだよ。
そろそろ客が来るぞ。
度肝を抜いてやれえ!」
「えぇえ?
今からですかい?
また仕舞い込むことになるん・・・
えっ?
来たよ、来たよ。
ほんとに、
来たよ。」

それぞれ三人に先導されて、
どっと人が押し寄せてきた。
ちらほらと買いに来ていた仲買人たちの、
抱えきれないほどの荷を見ていた者たちが、
小首を傾げていた。


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