昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~(七十九) 勝子が駄々をこねた

2014-02-02 11:52:38 | 小説

(五)

突如竹田の母の手を握り
「お母さん、ありがとう。これですっきりしました。
モヤモヤが少しあったけれど、もうすっかり取れました。
もうこれで、正三さんを思い出すこともないでしょう」
と、晴れ晴れとした表情を見せた。

「ええ、ええ」
と、満足げに頷く竹田の母だ。

小夜子の穏やかな顔に、とりあえず安堵する竹田だった。
かやの外に置いてけぼりの観があった勝子だが、輝くばかりの小夜子を眩しく感じた。

「決めた。あたし、小夜子さんを見習うわ。
小夜子さんのように、強く生きるわ。
小夜子さんのように、新しい女で生きるわ。
一度きりの人生ですもの、後悔したくないわ」

その日の夕方、勝子が駄々をこねた。
勿論今までにもありはしたが、今日は一段と激しい。

「もう元気になっているんだから、このまま退院してもいいじゃないの。
病院暮らしは、もういや! だってこんなに体調が良いのよ。
気分爽快よ、ほんとに。ねっ、小夜子さん。
あなたもそう思うでしょ? あたし、元気よね?」




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