昭和の恋物語り

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長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第一部~ (五) 母親の溺愛

2014-10-29 08:38:31 | 小説
小学校時代の彼は、都会っ子として女子児童の憧れの的であり人気者だった。
常に彼の周りに、女子児童が集まっていた。
彼が、別段面白い話をするわけではない。
言うよりは、無口な彼に対し女子児童があれこれと世話を焼いていた。

彼にしてみれば疎ましさを感じる方が多かった。
しかしそのことで男子児童の反感を買い、
「もやしっ子!”と揶揄されていた」」
貧弱な体つきの彼は体育の時間が苦手で、ドッヂボールの折りには常に標的になっていた。
その攻撃のしつこさに対し、女子児童からブーイングが起こるのもしばしばだった。
「ちょっと、あんたたち、いいかげんにしなさいよ!」
「そうよ、みたらいくんばかりに投げることないでしょ!」

下校時に、男子児童に囲まれたこともあった。
数人の男子児童にこづかれたり、言葉の苛めにもあった。
泣きながら帰宅することも多々あり、その折りには茂作に“何弱者めが!”と、叱咤されていた。
時に、鉄拳が飛んでくることもあったが、その度に母親が庇ってくれた。

「この子は、心根が優しいんです。喧嘩ができない優しい子なんです。そんなに叱らないで!」
彼はその度に、母親の陰に隠れて泣きじゃくっていた。
茂作にしてみれば可愛い孫であるが故に、他の児童達に苛められ続ける彼が情けなかったのだ。
何とか強い子供に育て上げたいと思っているのだが、叱る以外に術を知らなかった。
母親の溺愛ぶりが歯痒かったのだ。


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