(一)
「あら?素敵な小物入れね。
あなたには、ちょっと似合わないわ。
あたし位の年齢にならなくちゃ。」
武蔵がトイレに立った折に、初めて席に着いた典江が小夜子に詰め寄った。
武蔵からのプレゼントだろうと、あわよくば取り上げてしまおうと考えた典江だ。
「こらこら、人の物を欲しがるな!
お前さんの悪い癖だぞ。 」
すかさず、梅子が嗜める。
首をすくめて、その小物入れを小夜子に戻した。
「これだけは、だめなんです。
あたしの宝物なんです、アーシアに貰ったものなので。」
頬ずりせぬばかりに、胸の前でしっかりと抱きしめた。
「あら?この絵柄……えっ!ま、まさか……
これ、アナスターシアから貰ったの?
どうやって貰ったの?
何々、何て書いてあるのよ! 」
特異なロゴを目ざとく見つけた典江が、声を荒げた。
「“小夜子へ、アーシアより” ですけど。 」
「どういう関係…ちょっと待って。
あなた、さよこって言ったわね?
ひょっとして、ファッションショーに出なかった? 」
「マッケンジーさんのですか?」
典江のあまりの剣幕に気圧された小夜子は、小声で聞き返した。
「あぁ、そうなんだぁ。
そうよ、あなたよ。
あたしのこと、覚えてないかなぁ。
うん、うん。見覚えがあるなぁ、とは思ったけど。
そっか、あなただったんだ。」
二
ひとり悦に入る典江に、おしゃべりに興じていた他の女給たちが口を揃えた。
「なになに、どういうことなの?」
「この小夜子ちゃんが、あたしの敬愛するアナスターシアのお友達ってことですょ。」
小夜子をしっかりと抱き寄せて、得意げに典江が言う。
「あぁ!雑誌に載ってた、新進若手モデルって、この子?」
「うーん、なんとか小夜子・・そう、竹田、竹田小夜子だ。
ね、雑誌にね、載ってたよね。。 」
小夜子の両手を大きく上下させながら、典江が興奮している。
「そうなんです。
掲載しない筈だったのに、載せられちゃって。
おかげで学校にバレちゃいました。
退学騒動になっちゃって。
で、わたしは退学でも良かったんですけど、停学処分に決まって。 」
「良かったじゃないの。
退学というのは、だめよ。
あたしは、退学なのよね。
でさ、父親のコネを使って就職を狙ったけど、だめ。
あたしの素行不良がたたって、父が諦めました。 」
「何だ、そりゃ。情けねぇ親だな。
ごり押しすりゃいいのにな。
俺だったらやるぞ。可愛い典江の為だぁ。」
後ろから武蔵が、顔を覗かせた。
「イヤだもう、社長ったらぁ。
どさくに紛れて、どこ触ってるの。
珠江ちゃんが睨んでるぅ!」
「あら?素敵な小物入れね。
あなたには、ちょっと似合わないわ。
あたし位の年齢にならなくちゃ。」
武蔵がトイレに立った折に、初めて席に着いた典江が小夜子に詰め寄った。
武蔵からのプレゼントだろうと、あわよくば取り上げてしまおうと考えた典江だ。
「こらこら、人の物を欲しがるな!
お前さんの悪い癖だぞ。 」
すかさず、梅子が嗜める。
首をすくめて、その小物入れを小夜子に戻した。
「これだけは、だめなんです。
あたしの宝物なんです、アーシアに貰ったものなので。」
頬ずりせぬばかりに、胸の前でしっかりと抱きしめた。
「あら?この絵柄……えっ!ま、まさか……
これ、アナスターシアから貰ったの?
どうやって貰ったの?
何々、何て書いてあるのよ! 」
特異なロゴを目ざとく見つけた典江が、声を荒げた。
「“小夜子へ、アーシアより” ですけど。 」
「どういう関係…ちょっと待って。
あなた、さよこって言ったわね?
ひょっとして、ファッションショーに出なかった? 」
「マッケンジーさんのですか?」
典江のあまりの剣幕に気圧された小夜子は、小声で聞き返した。
「あぁ、そうなんだぁ。
そうよ、あなたよ。
あたしのこと、覚えてないかなぁ。
うん、うん。見覚えがあるなぁ、とは思ったけど。
そっか、あなただったんだ。」
二
ひとり悦に入る典江に、おしゃべりに興じていた他の女給たちが口を揃えた。
「なになに、どういうことなの?」
「この小夜子ちゃんが、あたしの敬愛するアナスターシアのお友達ってことですょ。」
小夜子をしっかりと抱き寄せて、得意げに典江が言う。
「あぁ!雑誌に載ってた、新進若手モデルって、この子?」
「うーん、なんとか小夜子・・そう、竹田、竹田小夜子だ。
ね、雑誌にね、載ってたよね。。 」
小夜子の両手を大きく上下させながら、典江が興奮している。
「そうなんです。
掲載しない筈だったのに、載せられちゃって。
おかげで学校にバレちゃいました。
退学騒動になっちゃって。
で、わたしは退学でも良かったんですけど、停学処分に決まって。 」
「良かったじゃないの。
退学というのは、だめよ。
あたしは、退学なのよね。
でさ、父親のコネを使って就職を狙ったけど、だめ。
あたしの素行不良がたたって、父が諦めました。 」
「何だ、そりゃ。情けねぇ親だな。
ごり押しすりゃいいのにな。
俺だったらやるぞ。可愛い典江の為だぁ。」
後ろから武蔵が、顔を覗かせた。
「イヤだもう、社長ったらぁ。
どさくに紛れて、どこ触ってるの。
珠江ちゃんが睨んでるぅ!」
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