昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~ふたまわり・第二部~(十五)の二

2011-09-03 22:08:46 | 小説
「アーシアはね、一人ぼっちなの。
お家がないの。待っててくれる家族が居ないの。
寂しいの、哀しいの。
でね、あたしが妹になったの。
お父さんにね、もう一人娘ができたのよ。
どう、嬉しい?」
「そうか、そうか。妹になったのか。
うん、うん、良いことをしてあげた。」
他愛もない女同士のその場限りの約束事だろうと、軽く考えた茂作翁。
人生最悪とも言える事態が、このことによってもたらされることになるとは、
予想だにできなかった。
「アーシアはね、ロシア人なの。
肌がとっても白くて、透き通るような肌よ。
髪は金色で、、」
「なんだと!ロシア人?ロシア人はいかん!
あいつらは信用できん。
今度の戦争にしても、ロシアの裏切りで負けたんじゃから。
満州でひどい目にあってる。
捕虜で捕まった人たちが、いっぱい居るんじゃ。
まだ帰還されておらん人も、たくさんおいでになるし。」
突然、怒り出した。
ロシア人に対する敵意を剥き出しにして、茂作翁が怒りだした。


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