(六)
それからわずか五日後のこと、小夜子との約束を果たさぬままに、勝子がこの世を去った。
無念な思いを抱いたままの死であった筈だが、あの日のたった一日だけの外出が、
無味乾燥な勝子のそれまでの一生に華を咲かせた。
衰弱していく己の体を、愛おしく感じた勝子だった。
「ありがとう、小夜子さん。嬉しかったわ、ほんとに。
あの日一日のことは、あたしにとって最良の一日だったわ。
ほんとよ、小夜子さん。死期が早まったのでしょう、お医者さまは反対されていたものね。
でも、あたし、後悔していないから。
うぅん、逆ね。あの日がなかったら、それこそ死んでも死にきれない思いだったと思うわ。
哀しまないで、小夜子さん。感謝してます、本当に」
弱々しい声ではあるが、ひと言ひと言を大切に話す勝子だった。
己の思いを、キチンと伝えたいという願いの声だった。
それからわずか五日後のこと、小夜子との約束を果たさぬままに、勝子がこの世を去った。
無念な思いを抱いたままの死であった筈だが、あの日のたった一日だけの外出が、
無味乾燥な勝子のそれまでの一生に華を咲かせた。
衰弱していく己の体を、愛おしく感じた勝子だった。
「ありがとう、小夜子さん。嬉しかったわ、ほんとに。
あの日一日のことは、あたしにとって最良の一日だったわ。
ほんとよ、小夜子さん。死期が早まったのでしょう、お医者さまは反対されていたものね。
でも、あたし、後悔していないから。
うぅん、逆ね。あの日がなかったら、それこそ死んでも死にきれない思いだったと思うわ。
哀しまないで、小夜子さん。感謝してます、本当に」
弱々しい声ではあるが、ひと言ひと言を大切に話す勝子だった。
己の思いを、キチンと伝えたいという願いの声だった。
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