昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~ふたまわり・第二部~(十四)の八

2011-08-30 21:43:55 | 小説
「お待たせ、お父さん。はい、これ。
ウィスキーとか言うお酒だって。オールドパーって言うの。
一本じゃなくて、二本もだよ。」
「おぅ、おぅ。二本もかい。そりゃあ、有り難いのぉ。
お祝いの時にでも貰おうかのぉ。」
「どうして?今飲めばいいのに。」
「いや、いいんじゃ。」
「どうして?」
「いや、ちょっとな。」
「ひょっとして、あたしの為に・・・」
「う、うん。まぁのぉ、酒断ちを。」
「ありがとう、お父さん。
でももう帰って来たんだから、いいんでしょ?」
「いや、だめじゃ。お前が嫁ぐまでは、と願掛けをしたんじゃから。」
涙ぐむ小夜子に、茂作は驚いた。
昨日までの小夜子ならば、こんなことで涙を見せる筈がない。
“当然よ。”と嘯くのが、常だ。
“どうしたことだ、一体。
帰ってからの小夜子はいつもの小夜子ではない。
正三に対する言動など、信じられんことだ。
正三からがして、目をパチクリさせておったわ。
まさか、キズものに・・・、いや小夜子はそんなヤワな娘ではない。
だからと言うて、弱気など有り得ん。”


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