昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

愛・地獄変 [父娘の哀情物語り] (三十九)

2010-12-21 23:11:57 | 小説
或夜のことでございます。
私と妻は、
一つの布団におりました。
が、
急に妻が起きあがるのでございます。
あっ申し訳ありません、
夢でございます。
ご承知おきください。
未だ、
別の部屋での就寝でございます。
私の腕の中からすり抜け、
誰か男の元に、
走っていくのでございます。
一糸まとわぬ姿で、
その男にすがりつきます。
私は妻を追いかけると共に、
その男を見ました。
とっ!
何ということでしょう、
あの青年だったのでございます。
娘の婚約者でございます。
私自身めが、
そうなることを望んでいたが為のことかもしれません。
その時、
私がどんな思いで妻を連れ戻したことでしょう。
とても、
これだけはお話し致すわけにはまいりません。
唯その後、
年甲斐もなく激しく燃え、
嬌声を発しながら、
力のあらん限りをつくし、
荒々しく抱きしめておりました。

ふと気が付きますと妻の身体に、
鳥肌が立っております。
心なしか痙攣を起こしているようにも見えます。
私は、
思わず手の力を緩め、
顔を上げました。
と、
何ということでしょう、
これは。
あぁ、
お願いでございます。
私めを、
このカミソリで殺してください。
もうこれ以上の苦痛には耐えられません。
そう、
そうなのでございます。
妻、
だったはずが、
娘だったのでございます。
私は、
犬畜生にも劣る人間、
いや、
鬼畜でございます。

ふふん。
しかし、
あなた方とて
そのような気持ちを
抱かれたことはある筈です。
よもや、
無いとは言われますまい。
まして、
血の繋がりの無い娘でございます。
私の立場でしたら、
あなた方だって、
きっと、
きっと。
ふふふ・・。
申し訳ございません、
取り乱してしまいました。
お話を続けましょう。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿