(三)
“生まれ故郷に足を……”と思ってみなかったわけではない。
五平の意がそこにあると分かってもいたが、
“苦しかった頃の想い出だけが残る地に行ったところで……”と考えた。
小夜子のはしゃぎように、武蔵は満足していた。
「若い娘のすることじゃない!」
と、武蔵と同じく浜に腰を下ろしている老人が咎める。
家人もまた、頷いている。
しかし武蔵は、目を細めて見ている。
“男の甲斐性は、浮気じゃない。
女房を幸せにすることが、本当の甲斐性だ。”と、武蔵は思った。
本気で、そう思った。
ただ、“その上での浮気は、男の本懐だ。その為に男は働くんだから。”とも、考えた。
「新婚旅行は、九州だ。
海は、どうだ? 海はいいぞ!
ずっと沖を見ても、まるで陸地が見えん。
水が青いんだ。
でな、ずっと先を見ると、キラキラ光ってる。
まるで、銀の食器を並べているようだ。」
“生まれ故郷に足を……”と思ってみなかったわけではない。
五平の意がそこにあると分かってもいたが、
“苦しかった頃の想い出だけが残る地に行ったところで……”と考えた。
小夜子のはしゃぎように、武蔵は満足していた。
「若い娘のすることじゃない!」
と、武蔵と同じく浜に腰を下ろしている老人が咎める。
家人もまた、頷いている。
しかし武蔵は、目を細めて見ている。
“男の甲斐性は、浮気じゃない。
女房を幸せにすることが、本当の甲斐性だ。”と、武蔵は思った。
本気で、そう思った。
ただ、“その上での浮気は、男の本懐だ。その為に男は働くんだから。”とも、考えた。
「新婚旅行は、九州だ。
海は、どうだ? 海はいいぞ!
ずっと沖を見ても、まるで陸地が見えん。
水が青いんだ。
でな、ずっと先を見ると、キラキラ光ってる。
まるで、銀の食器を並べているようだ。」
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます