(六)
“冗談じゃない、そんなことは許されん。
母親なら、こんな無茶は言わないだろうさ”
心内で舌打ちしながら、とに角話を切り上げにかかった。
「ありがとう、先生。一生、恩に着ます。
お母さんから話をして頂きます。
お母さんだって、きっと私と同じ気持ちだと思います」
嬉々として立ち去る小夜子、母親を説得するべく病室に向かった。
病に罹った患者にとって、医師は神のような存在だ。
医師の言葉は絶対であり、疑義を挟むことなどありえない。
有りうるべからざることだった。
病を治してくれと懇願する家族は居ても、
一日でも長い存命を願う家族は居ても、
安らかな最期をと願う家族は居ても、
死期を早めることになってもやむを得ぬ、
生きた証しを持たせたいと願う家族など居ない時代だった。
“冗談じゃない、そんなことは許されん。
母親なら、こんな無茶は言わないだろうさ”
心内で舌打ちしながら、とに角話を切り上げにかかった。
「ありがとう、先生。一生、恩に着ます。
お母さんから話をして頂きます。
お母さんだって、きっと私と同じ気持ちだと思います」
嬉々として立ち去る小夜子、母親を説得するべく病室に向かった。
病に罹った患者にとって、医師は神のような存在だ。
医師の言葉は絶対であり、疑義を挟むことなどありえない。
有りうるべからざることだった。
病を治してくれと懇願する家族は居ても、
一日でも長い存命を願う家族は居ても、
安らかな最期をと願う家族は居ても、
死期を早めることになってもやむを得ぬ、
生きた証しを持たせたいと願う家族など居ない時代だった。
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