昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

昭和の恋の物語り (十)

2012-12-24 11:54:54 | 小説



(十)

「ホント、車が多いわね。
半分くらいに減ったら、事故も減るでしょうに。」

突然あの彼女が俺に囁くように言ってきた。
俺は、背筋に水が流れるようにヒヤリとした。

「そ、そうですね。」

何と言うことだ、実に情けない。
裏腹のことを答えてしまった。

自分に腹が立った。
しかも、卑屈にもうろたえてだ。

昨日までは何も意識していなかった彼女の存在が、今はドギマギさせる。
伝票にサインをもらうと、それ以上の言葉を交わすでもなく、そそくさと店を出た。


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