昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

ごめんね…… (十)

2018-02-20 08:00:14 | 小説
「あの赤ら顔の男の言うことなんて、みんな嘘っぱちだ。
蛇しか食べさせてないんだ、きっと。
だって、考えてもみろよ。
もしも僕らと同じごはんを食べるようになったらだぜ、蛇なんか食べなくなるだろ? 
そうしたら、見世物にならないじゃないか! 
誰が好き好んで蛇なんか食べるんだよ」

 目を輝かせて語る友人だった。
「助け出さなきゃ、世界中から笑われちゃうぜ。
いや、笑われるだけならまだましだ。
馬鹿にされて、軽蔑されてしまう。
野蛮な国だって、思われちゃうんだぜ」

 熱っぽく語る友人に異論を挟む余地はなく、次第に私も又その行為に酔い始めた。
「とにかく、時間がない。
祭りは今日までで、明日には次の土地に行ってしまう。
助け出すには、今晩しかないんだ」
「そうだよ、急がなくちゃ。でも、どうしよう…」

 帰りの道々、計画を練った。
といっても、友人の発する言葉に対し、「うん、うん」と同調するだけの私だったけれども。
「見つかるわけにはいかないんだ。
街灯のある道は、だめだ。裏道を行くしかないぞ」
「でも、暗くないかい?」
「だから良いんじゃないか」
「そうか、そうだよね…」


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