昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~ふたまわり・第二部~(二十一)の三と四

2011-10-28 21:53:52 | 小説


部屋に落ち着いた武蔵の元に、五平が息せき切ってやってきた。
「社長、申し訳ありませんでした。
皆には、きつく叱っておきますので。」
「うん?・・あぁ、汽車のことか。
なに、構わんさ。
それだけ楽しみにしていた、ということじゃないか。
叱ることは、ないさ。
宴会が盛り上がらなくなるぞ。
そんなことより、大丈夫だろうな。
ドンちゃん騒ぎを、させてやれよ。」
「はい、それはもう。
前金を、たっぷりと渡してありますから。
仲居への心付も、奮発しておきましたし。」
「そうか、それでいい。
で?芸者は、何人呼んだんだ。」
「はい。『熱海中の芸者全員を呼べ』と、言ってあります。」
「うん、それでいい。
それからな、若い者たちは外に繰り出すだろうから、番頭にその旨言っておけ。
おかしな事に巻き込まれないよう、目を配ってやれよ。
何だったら、五平も行くか?一緒に。」
「いやいや、社長。
それじゃ、若い者が可哀相です。
社長と、とことん飲み明かしますよ。」



「みんな、ご苦労だった。
良く頑張ってくれた。
特に入院中の頑張りは、加藤専務から報告があった。
苦しい中、良く残ってくれた。良く耐えてくれた。
そのお陰で、会社は残れたぞ。
本来なら、もっとお前たちに還元してやりたいんだが、
この景気がいつまでも続くわけがない。
以前の俺なら、どーんと弾むところだが、入院中に色々考えた。
やはり、会社自体に少しは利益を残しておかないとな。
もう二度と、あんな思いはたくさんだ。
今回の慰安旅行の発案は、加藤専務だ。
正直、俺は渋ったんだがな。
しかし今は、みんなの笑顔を見ていると、大正解だったな。
とに角今夜は、思いっきり飲んで食べて、そして騒げ。
但し男どもは、程々にしておけ。
どうせ、外に繰り出すだろう。
番頭に言ってあるから、楽しんで来い。
女性陣は、たらふく食べろ。
新鮮な魚介類を、たっぷりと用意させてあるからな。
以上だ。みんな、ホントにご苦労さんだった。」


最新の画像もっと見る

コメントを投稿