五
「ふぅん。お父さんって、どこに行っても、上客なんだね。
他のお客さんと、扱いが違うみたい。」
「まぁな。俺は紳士だからな。
敵に対しては容赦しないが、味方にはとことん応援する。」
「それって、お父さん。あたしに、言ってるの?
恩知らずって、思ってるんでしょ?
あたしだって、いろいろ考えてるから。
お父さんには、キチンとお世話になった分、お返しをするつもりだから。」
ポッと頬を染める小夜子だが、武蔵には酔いが回ったせいと映った。
“小夜子の奴、どこまで本気なんだ?
夢物語りに聞こえはするが、ひょっとしてひょっとするか?
どうなんだ、武蔵。
手ごめにしてでも、ものにするか。
それとも最後まで、小夜子の言う足長おじさんでいるか?”
目を閉じて考え込む武蔵を、小夜子はスプーンを止めて見やった。
“ごめんね、お父さん。お父さんのこと、好きよ。
でもそれは、感謝の意味なの。
でも……。アーシアに会っていなかったら、
お嫁さんになったかも?
うぅん、だめだめ! やっぱり、正三さん。
正三さんなの。
先にお父さんに会ってたら、また違ってたかもね。”
六
「なに、考えてるの?」
黙りこくる武蔵に、一抹の不安を覚える小夜子だ。
“あたしを、あげる。
今までのお礼に、あたしの処女をあげる。
いいでしょ? それで。”
喉まで出かかる言葉を、ぐっと甘いアイスクリームと共に飲み込んだ。
「あ? あぁ、すまんすまん。
ちょっと、な。」
と、小夜子を残して席を立った。
「どこ行くの?」
慌てて、小夜子も立ち上がろうとする。
「違う、違う。
小夜子を置いて、どこにもいかんよ。
小夜子、知ってるか?
アメリカさん、こう言うんだ。」
大きく手を広げて
「Nature call me! ってな。」
「自然が私を呼んでる? なに、それ。」
頭を傾げながら、問い掛ける。
「おっ、訳せるじゃないか。しかし惜しい。
もう一ひねりできれば、完璧なんだがな。」
「一ひねりって?」
「あぁ、いかんいかん。洩れそうだ。」
「洩れそうって、いゃあねえ。
早く行って来て!
えっ? ご不浄に行くってことなの?」
「ふぅん。お父さんって、どこに行っても、上客なんだね。
他のお客さんと、扱いが違うみたい。」
「まぁな。俺は紳士だからな。
敵に対しては容赦しないが、味方にはとことん応援する。」
「それって、お父さん。あたしに、言ってるの?
恩知らずって、思ってるんでしょ?
あたしだって、いろいろ考えてるから。
お父さんには、キチンとお世話になった分、お返しをするつもりだから。」
ポッと頬を染める小夜子だが、武蔵には酔いが回ったせいと映った。
“小夜子の奴、どこまで本気なんだ?
夢物語りに聞こえはするが、ひょっとしてひょっとするか?
どうなんだ、武蔵。
手ごめにしてでも、ものにするか。
それとも最後まで、小夜子の言う足長おじさんでいるか?”
目を閉じて考え込む武蔵を、小夜子はスプーンを止めて見やった。
“ごめんね、お父さん。お父さんのこと、好きよ。
でもそれは、感謝の意味なの。
でも……。アーシアに会っていなかったら、
お嫁さんになったかも?
うぅん、だめだめ! やっぱり、正三さん。
正三さんなの。
先にお父さんに会ってたら、また違ってたかもね。”
六
「なに、考えてるの?」
黙りこくる武蔵に、一抹の不安を覚える小夜子だ。
“あたしを、あげる。
今までのお礼に、あたしの処女をあげる。
いいでしょ? それで。”
喉まで出かかる言葉を、ぐっと甘いアイスクリームと共に飲み込んだ。
「あ? あぁ、すまんすまん。
ちょっと、な。」
と、小夜子を残して席を立った。
「どこ行くの?」
慌てて、小夜子も立ち上がろうとする。
「違う、違う。
小夜子を置いて、どこにもいかんよ。
小夜子、知ってるか?
アメリカさん、こう言うんだ。」
大きく手を広げて
「Nature call me! ってな。」
「自然が私を呼んでる? なに、それ。」
頭を傾げながら、問い掛ける。
「おっ、訳せるじゃないか。しかし惜しい。
もう一ひねりできれば、完璧なんだがな。」
「一ひねりって?」
「あぁ、いかんいかん。洩れそうだ。」
「洩れそうって、いゃあねえ。
早く行って来て!
えっ? ご不浄に行くってことなの?」
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