(四)
そして今夜も、二人の村人が訪ねてきた。
「このご時世では、学のない者はろくな職に就けんし。
やっぱり田舎でくすぶらせてちゃ、なんとも……」
「学校のせんせに、ええ学校に推薦してやると言われとるんじゃが。
なんせ爺と婆を抱えちょっては、その……」
「分かった、分かった。学資たら言うことじゃの?
そん代わりに、分かっとると思うが、兄の繁蔵を、の」
「もちろんじゃて、当たり前じゃて。
今の村長は、口ばっかりじゃ。
『県の方で按配ようしてくれるから、もう少し待ってくれ。』
の一点張りで。どうにも事が進まん」
「二人、進学の意思あり」
ただこれだけの文面で、手紙を送った。
本家の電話を使えと、大婆さまは言う。
しかし武蔵に媚びへつらうような趣を感じる茂作は、それを頑として拒否した。
茂作が頼み込んでいるわけではない。
取り次いでいるだけなのだが、どうしても卑屈な思いが湧いてしまう。
それを気取られぬようにと、短文での手紙にしていた。
そして今夜も、二人の村人が訪ねてきた。
「このご時世では、学のない者はろくな職に就けんし。
やっぱり田舎でくすぶらせてちゃ、なんとも……」
「学校のせんせに、ええ学校に推薦してやると言われとるんじゃが。
なんせ爺と婆を抱えちょっては、その……」
「分かった、分かった。学資たら言うことじゃの?
そん代わりに、分かっとると思うが、兄の繁蔵を、の」
「もちろんじゃて、当たり前じゃて。
今の村長は、口ばっかりじゃ。
『県の方で按配ようしてくれるから、もう少し待ってくれ。』
の一点張りで。どうにも事が進まん」
「二人、進学の意思あり」
ただこれだけの文面で、手紙を送った。
本家の電話を使えと、大婆さまは言う。
しかし武蔵に媚びへつらうような趣を感じる茂作は、それを頑として拒否した。
茂作が頼み込んでいるわけではない。
取り次いでいるだけなのだが、どうしても卑屈な思いが湧いてしまう。
それを気取られぬようにと、短文での手紙にしていた。
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