二十年前のことだ。
孝男と道子の結婚生活も七年を数えた。
子宝に恵まれぬ二人をよそに、高校三年の定男が、同級の女子生徒を孕(はら)ませてしまった。
真剣な思いの二人、卒業と同時に結婚すると宣言した。
親同士の話し合いを持ったが、すぐに結論が出るようなことではない。
女子生徒の親の怒りは激しく、ただ定男を詰るだけだった。
道孝にしても、ただただ頭を下げるしかない。
二度目の話し合いの折りに「申し上げにくいことですが」 と前置きをして、中絶という禁句を口にした。
女子生徒の親は、男の親だからと激怒をし、無責任です! と詰りはするものの、二人を結婚させることにはためらいを持った。
そして結論が出ぬままに、ひと月が過ぎた。
冷静さを取り戻した双方の間で「中絶やむなし」の結論になったとき、二人が家を出た。
「あんたんとこの息子が娘を連れ出しよった。どう責任を取ってくれるんだ!」
女子生徒の親が怒鳴り込んできた。
オロオロとするシゲ子を、「あんたの教育が悪い!」と責め立てた。
「若い二人の過ちだ。片方だけを責められても困る」
と、孝道が今度ばかりは反論した。
警察で誘拐だと騒ぎ立てたものの、家出捜索として受理することになった。
孝男と道子の結婚生活も七年を数えた。
子宝に恵まれぬ二人をよそに、高校三年の定男が、同級の女子生徒を孕(はら)ませてしまった。
真剣な思いの二人、卒業と同時に結婚すると宣言した。
親同士の話し合いを持ったが、すぐに結論が出るようなことではない。
女子生徒の親の怒りは激しく、ただ定男を詰るだけだった。
道孝にしても、ただただ頭を下げるしかない。
二度目の話し合いの折りに「申し上げにくいことですが」 と前置きをして、中絶という禁句を口にした。
女子生徒の親は、男の親だからと激怒をし、無責任です! と詰りはするものの、二人を結婚させることにはためらいを持った。
そして結論が出ぬままに、ひと月が過ぎた。
冷静さを取り戻した双方の間で「中絶やむなし」の結論になったとき、二人が家を出た。
「あんたんとこの息子が娘を連れ出しよった。どう責任を取ってくれるんだ!」
女子生徒の親が怒鳴り込んできた。
オロオロとするシゲ子を、「あんたの教育が悪い!」と責め立てた。
「若い二人の過ちだ。片方だけを責められても困る」
と、孝道が今度ばかりは反論した。
警察で誘拐だと騒ぎ立てたものの、家出捜索として受理することになった。
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