(四)
私にとっての祭りの一番は、何と言っても見世物小屋だ。
全国の祭りを求めて渡り歩いているそれが、私にはとても懐かしいものになっている。
しかし最近では、よほどのことがなければ見かけることがない。
もう過去の遺物となってしまったのだろうか。
と、私の耳に突然、あの懐かしい呼び声が聞こえてきた。
「さあさあ、お代は見てのお帰りで結構だよ~。
さあ、急いだ急いだ~。
心臓の悪い方は止めとくれよ~。
化けて出られちゃあ、あたし、嫌だからねえ~。
でもねえ、きれいなお姉さんの幽霊ならぁ、大歓迎だよ~。」
慌てて辺りを見回してみるが、それらしい小屋はない。
「なあ、妙子。
今、呼び込みの声が聞こえなかったか?
今さ、聞こえてきたんだよ。」
しかし彼女は首を振り、怪訝そうな表情を私に向けている。
と、お目当てのりんご飴を売る夜店を見つけて、脱兎の如くに駆け出した。
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