強い陽射しの下、由香里はウキウキとした気分で早足で歩いた。ともすれば、彼を置き去りにしてしまう程だった。
「先生ぃ、早くう。遅れちゃうよー」
「大丈夫だよ。まだ、時間はあるよ。二十五分のバスなんだから」
彼は腕時計で確認してから、由香里に答えた。
「ええっえ、タクシーで行こうよー」と、由香里は頬を膨らませた。
〝間に合わないよ、約束の時間に〟と、心の中で叫んだ。
彼には内緒で、クラスメートとの待ち合わせをしていたのだ。
「彼氏よ」と、麻由美に紹介する予定を組んでいた。
以前に、自慢気に話す麻由美に対し、
「今度、わたしの彼氏を紹介するわ」
と、思わず宣言してしまった。
麻由美への対抗心から出た言葉だったのだ。
勿論、その時の由香里には、彼氏はおろか心ときめかせる異性は居なかった。
それどころか、デートの経験もなかった。
だからこそ、家庭教師の話が持ち上がった時には、小躍りしたい思いになったのだ。
そして念願叶って、彼とのデートにこぎつけた。
「いつなの? ホントに、居るのかな」
と、疑いの眼差しを見せる麻由美を、これ以上待たせる訳にはいかなかった。
「タクシーなんて、贅沢だ。バスで、いいじゃないか」
窘めるような彼の言に対して、
「嫌よ、先生い。紫外線は、お肌の敵なのよ」
と、口を尖らせた。
十時の約束まで、十五分の余裕しかない。
タクシーならば、十分程で着くはずだ。
しかし、バスとなると間に合わない。
麻由美は、強引にタクシーに乗り込んだ。
「高校生のくせに、まったく贅沢だぞ」
「いいの、いいの」
由香里は、彼の小言などまるで無視した。
「ねえ、先生。今日だけは、名前で呼んでいいでしょ。タケシさんって」
「えっ? あゝ、そうだな。先生って呼ばれるのは、正直くすぐったいもんな。
いや、お兄ちゃんの方が良いかなあ」
彼にしてみれば、妹のような感覚を覚える由香里だった。
そんな由香里に、名前を呼ばれることに抵抗感を感じた。
「うーん、分かった。じゃ、そうするわ。その代わり、由香里の作ったデートコースにさせてね」
少し不満ではあったが、〝親しみが感じられるかな〟と、思い直した。
「先生ぃ、早くう。遅れちゃうよー」
「大丈夫だよ。まだ、時間はあるよ。二十五分のバスなんだから」
彼は腕時計で確認してから、由香里に答えた。
「ええっえ、タクシーで行こうよー」と、由香里は頬を膨らませた。
〝間に合わないよ、約束の時間に〟と、心の中で叫んだ。
彼には内緒で、クラスメートとの待ち合わせをしていたのだ。
「彼氏よ」と、麻由美に紹介する予定を組んでいた。
以前に、自慢気に話す麻由美に対し、
「今度、わたしの彼氏を紹介するわ」
と、思わず宣言してしまった。
麻由美への対抗心から出た言葉だったのだ。
勿論、その時の由香里には、彼氏はおろか心ときめかせる異性は居なかった。
それどころか、デートの経験もなかった。
だからこそ、家庭教師の話が持ち上がった時には、小躍りしたい思いになったのだ。
そして念願叶って、彼とのデートにこぎつけた。
「いつなの? ホントに、居るのかな」
と、疑いの眼差しを見せる麻由美を、これ以上待たせる訳にはいかなかった。
「タクシーなんて、贅沢だ。バスで、いいじゃないか」
窘めるような彼の言に対して、
「嫌よ、先生い。紫外線は、お肌の敵なのよ」
と、口を尖らせた。
十時の約束まで、十五分の余裕しかない。
タクシーならば、十分程で着くはずだ。
しかし、バスとなると間に合わない。
麻由美は、強引にタクシーに乗り込んだ。
「高校生のくせに、まったく贅沢だぞ」
「いいの、いいの」
由香里は、彼の小言などまるで無視した。
「ねえ、先生。今日だけは、名前で呼んでいいでしょ。タケシさんって」
「えっ? あゝ、そうだな。先生って呼ばれるのは、正直くすぐったいもんな。
いや、お兄ちゃんの方が良いかなあ」
彼にしてみれば、妹のような感覚を覚える由香里だった。
そんな由香里に、名前を呼ばれることに抵抗感を感じた。
「うーん、分かった。じゃ、そうするわ。その代わり、由香里の作ったデートコースにさせてね」
少し不満ではあったが、〝親しみが感じられるかな〟と、思い直した。
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