その日は朝からぐずついた空模様で、夕方にはとうとう雨が降ってきた。
バス停に降り立った時には、土砂降りの状態になっていた。
走って帰ろうかと思いはしたが、あまりの激しい雨に躊躇した。
やむなく彼は、バス停前のブティックで、少しの間雨宿りをすることにした。
通りのあちこちで、彼と同様に雨宿りしている者も多数いた。
皆一様に、空を見上げてはため息をついていた。
何気なく店の中を覗いた彼に、軽く会釈する女性客がいた。
時折バスの中で見かける女性だった。
一度、入り口近くに立っていたその女性を庇ったことがあった。
込み合った車内で、急ブレーキがかかった折りのことだった。
咄嗟に彼はドアに両手を付けて、踏み段から滑り落ちそうになった女性を、彼の背中で踏みとどまらせたのだ。
「その節は、ありがとうございました。危うく、足を挫くところでした」
と、微笑みながら女性が声をかけてきた。
「いえ、、、」
はにかんで短く答える彼に、傘を広げた女性は
「お送りしますわ。どちらですの、ご自宅は」
と、傘の中に入るように勧めた。
「でも…」
口ごもる彼に、女性はなおも勧めた。
「止みませんわよ、雨。どうぞ、お気兼ねなく」
「すみません。それじゃ、お言葉に甘えて」
彼は背中を丸めながら、花柄の傘の中に入り込んだ。
女性物の小振りの傘では、彼の体を全て入れるのが躊躇われた。
女性は薄手のブラウスであり、彼は半袖のポロシャツだった。
彼の二の腕は、既に雨に打たれて濡れている。
そのまま入り込んでしまうと、女性の腕に触れてしまう。
素肌に密着するような状態に、なってしまうのだ。
彼は、体半分を傘の外に置くことにした。
そんな彼の気遣いに気が付いた女性は、
「あらぁ、肩が濡れてますわよ。もっとお寄りになって下さい。
それでは、傘にお入れした意味がありませんわ。どうぞ、もっとお入り下さいね」
と、彼に寄った。
「もう、濡れません?」
「えゝ、大丈夫です。ホントにすみません」
バス停に降り立った時には、土砂降りの状態になっていた。
走って帰ろうかと思いはしたが、あまりの激しい雨に躊躇した。
やむなく彼は、バス停前のブティックで、少しの間雨宿りをすることにした。
通りのあちこちで、彼と同様に雨宿りしている者も多数いた。
皆一様に、空を見上げてはため息をついていた。
何気なく店の中を覗いた彼に、軽く会釈する女性客がいた。
時折バスの中で見かける女性だった。
一度、入り口近くに立っていたその女性を庇ったことがあった。
込み合った車内で、急ブレーキがかかった折りのことだった。
咄嗟に彼はドアに両手を付けて、踏み段から滑り落ちそうになった女性を、彼の背中で踏みとどまらせたのだ。
「その節は、ありがとうございました。危うく、足を挫くところでした」
と、微笑みながら女性が声をかけてきた。
「いえ、、、」
はにかんで短く答える彼に、傘を広げた女性は
「お送りしますわ。どちらですの、ご自宅は」
と、傘の中に入るように勧めた。
「でも…」
口ごもる彼に、女性はなおも勧めた。
「止みませんわよ、雨。どうぞ、お気兼ねなく」
「すみません。それじゃ、お言葉に甘えて」
彼は背中を丸めながら、花柄の傘の中に入り込んだ。
女性物の小振りの傘では、彼の体を全て入れるのが躊躇われた。
女性は薄手のブラウスであり、彼は半袖のポロシャツだった。
彼の二の腕は、既に雨に打たれて濡れている。
そのまま入り込んでしまうと、女性の腕に触れてしまう。
素肌に密着するような状態に、なってしまうのだ。
彼は、体半分を傘の外に置くことにした。
そんな彼の気遣いに気が付いた女性は、
「あらぁ、肩が濡れてますわよ。もっとお寄りになって下さい。
それでは、傘にお入れした意味がありませんわ。どうぞ、もっとお入り下さいね」
と、彼に寄った。
「もう、濡れません?」
「えゝ、大丈夫です。ホントにすみません」
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