(三十七)
ありがとう、風さん。
この後、真理子ちゃんとの会話がスムーズに出来るようになった。
主に会社での出来事だったけれど、主任が嫌いだという点で一致したことが妙に嬉しかった。
価値観というと大げさだけど、共通のものがあるということが嬉しかった。
帰りの車中では、三人とも無口だった。
疲れていた。
しかし、その沈黙も苦痛ではなかった。
ラジオから流れるメロディーに合わせて、二人がハモっている。
心地よい疲れを感じつつ、俺は車のスピードを上げることなく走った。
N橋が見えてきた。
あの橋を渡ればお別れだ。
このまま時間が止まってくれれば、と思わずにはいられない。
ふと気付いた。
いつも車の出足の遅さに苛立ち隣の車と競争していた俺が、今は全くと言っていいほど気にならない。
ゆったりとした気分で走っている。
勿論別れの時間を少しでも遅くしたいという気持ちはある。
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