昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

昭和の恋の物語り (三十七)

2013-02-17 11:10:24 | 小説


(三十七)

ありがとう、風さん。
この後、真理子ちゃんとの会話がスムーズに出来るようになった。

主に会社での出来事だったけれど、主任が嫌いだという点で一致したことが妙に嬉しかった。
価値観というと大げさだけど、共通のものがあるということが嬉しかった。

帰りの車中では、三人とも無口だった。
疲れていた。

しかし、その沈黙も苦痛ではなかった。
ラジオから流れるメロディーに合わせて、二人がハモっている。

心地よい疲れを感じつつ、俺は車のスピードを上げることなく走った。
N橋が見えてきた。

あの橋を渡ればお別れだ。
このまま時間が止まってくれれば、と思わずにはいられない。

ふと気付いた。
いつも車の出足の遅さに苛立ち隣の車と競争していた俺が、今は全くと言っていいほど気にならない。

ゆったりとした気分で走っている。
勿論別れの時間を少しでも遅くしたいという気持ちはある。


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